世界は常に変化している。仏教で言う「諸行無常」の原則に従って、動いている。「諸行」は因縁によって生じた、この世の一切の事物、「無常」は、この世の万物は常に変化して、ほんのしばらくも留まるものはないことだ。「諸行無常」といえば、一般に世の中は儚いもので、すべてが消滅する悲しいことと考えがちである。しかし、本来の意味はそうではなく、すべてのものは変化して、一定の状態に留まっているのではないとの意味である。例えば、人間は「必ず」死に至るし、その他の生物も同様である。無生物の鉄であっても次第に錆びて劣化するし、堂々たる家も、年月を経ればボロ屋敷になる。岩石もそのうちには、くだけて砂となる。長いか短いかの問題である。
一方で、それに対して抗うように、万物は外部からエネルギーを得て変化する。単に消滅の一途を辿るのでなく、進化する場合も多い(ただし長い年月で見ると消滅することになる)。この場合も変化が伴う。つまり、すべてものが、一定の状態に留まらず、常に変化するにもかかわらず、人間は全てのものを変化しないとみなすか、変化しないように希望する。もし、人間が幸せを望むなら、万物の変化に伴って自分も変化するか、あるいは、世界は常に変化しているとの理を理解すべきだろう。可愛い子供がいる幸福な家庭も、子供が成長するとその家庭は解体する。解体を拒否して同じ状態を保とうとすれば、子供を囲い込み、悲惨なことになるだろう。会社も同様である。成功した事業は、そのうち低迷する宿命にある。会社を継続しようとすれば、常に新しい変化を受け入れなければならない。人間の安定志向と正反対だ。つまり、「諸行無常」は宿命なので、人間はそれを受け入れるしかないのだ。
しかし、一旦その理を受け入れると、変化に強い人間となる。突然の変化も、その可能性があると受け止めることが出来るのだ。人間にとっての究極の変化は愛する者の死、あるいは自分自身の死である。そこで、これらの死も「諸行無常」の一つとして受け入れる場合は、自分自身の死を受け入れることになり、その結果、「諸法無我」(全てのものは因縁によって生じたものであって実体性がない)との考えに至る。しかし、ここは簡単には進めない。なるほど、すべてのものは変化する、「諸行無常」の考えは理解できるが、そう考える自分自身が実は存在しないとなると話が違う。
自分自身が、つまり、考えている主体が消滅することは考えの外になる。実態としての世界の絶え間ない変化は、何かそれを測定し、観察することがあってこそ実証できる。その観察する実態が消滅することになれば、その変化はどうなるのだろう。そこには「論理性」が登場できない。現実の問題にとらわれている自分の存在と、それらを押し流すような世界の法則との間に、長い間正解を求めることが出来なくて、悩むことだろう。答えは見えないが、多分、この様な悩みの中におぼろげにあるかもしれない。
ブッダは、何不自由なく生活しているときに、突然、自分はやがて死んでいかなければならない、と知った。死にゆく存在である自分を見つめることが、すなわち、現実の実態を見つめることが、自分は何のために生まれて来たのか、本当の生きる目的を求める第一歩なのだということに気付いた。死の向こうには、天国や極楽があるのはなく、無が存在する。そして、地球上のすべての生き物は、死に至る運命にあり、無に至る。大きな宇宙の中で、生態系は常に変化し、一定のところに留まるものはないと知ったのである。
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