潜入レポ!介護の現場から 第11話「認知症差別‐前編‐」

山田様と話をした翌日。辛い体験を思い出させてしまったので眠れなかったのでは?、と心配で訪室してみた。「昨日はありがとう。何だかすっきりしたわ。池田さんに分かってもらえたからかしら。」
心の傷は完全には癒えないのだろうが、少しずつ少しずつ・・・。

山田様と話をする中でずっと気になっていることがある。

何気ない言葉だったのだが、「ここの職員は優しい人が多いけれど、私のことを何もできない子供と思っているのよ」


これについて山田様に再度伺うと、「そう言えば、最近はあまり感じないわ。何故かしらね」

山田様のことを何も分からない人というレッテルを、スタッフたちは貼っていたのだが、最近ではコールも殆ど無くなり、見方が変わったのではないだろうか。

とすると、認知症で何も分からない人のレッテルを貼っている方に対して、まるで子供のような関わり方をしているのではないか?!山田様が以前にいらっしゃった施設では「物」扱いをされ人としての尊厳を保たれてなかったと推測されるが、これは認知症の方を子供扱いすることと似ていないか?

人生の最後にこんな思いをしないといけないなんて。誰もが最後まで愛され、人として認められ、生きてきた人生を尊重されて、誰かの役に立ちたいはずだ。認知症であろうが身体に障がいがあろうが、高齢であろうが同じはず。
弱者?否、弱者と思われている人への差別だ。高齢者や障がい者は決して弱者ではない。自分の意思を持っているのだ。
テレビの番組で障がいを特別なもののように扱ったり、高齢者を子供扱いしたりしているのを見ると、ものすごい違和感があるのは、同じ人間として見ていないからではないか。

絶望ではなく希望を持って最後まで生きていたい。他人ごとではなく自分のこととして心からそう思う。自分の将来のためにも「生きがい」を持って住める施設が必要だ。自宅で最後まで居られたらいいのだが、施設に入らざるを得ないこともあるだろう。

まずは認知症の方への関わり方を調べてみよう。

そうだ!増野リーダーが認知症の勉強会をしているので参加してみよう。

 

この気持ちを増野リーダーに話してみた。

「本当ね。山田様はあなたが関わりを深く持って、時計や予定表を置くだけでコールがほとんど無くなったわ。私たちが勝手に、用も無いのにコールをする人と決めつけてしまっていたのかもしれないわね」

「コールをするのには意味があると思って、相手を知ることが重要ね」「何もできない子供として見たら、分かることも分からなくなるわ!」 


認知症の勉強会において、認知症を理解しているスタッフはあまりいない事も分かったそうだ。

早速、勉強会参加だ!




 「潜入レポ!介護の現場から」全体像

*介護施設にパート職員として潜入した池田出水。そこで見聞きしたことから現場の問題を表現していく。職員の様子・入居者や家族の様子・ケアの状況・往診医や時には受診付き添いなどでの病院の様子などレポートは多岐にわたる。

*登場人物
介護の現場体験者:池田出水
施設責任者(施設長):渡辺
パートの先輩:大村
常勤ヘルパー(リーダー):若林

常勤職員
往診医
203号入居者
202号入居者:山田・・以前は大型の施設に入居
202号入居者家族
虐待疑惑職員:吉田・・辞職してしまった
共感してくれる職員(もう一人のリーダー):増野

ペンネーム池田 出水
「これからの日本には介護サービス業界こそが必要!これぞ社会の根幹!」と考え、それを支えるべくこの業界に飛び込む。
昨今の介護サービスの現状を憂う大和撫子。
「これからの日本には介護サービス業界こそが必要!これぞ社会の根幹!」と考え、それを支えるべくこの業界に飛び込む。
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