国連社会局によると、移民の定義は次のようなものだ。国際移民の正式な法的定義はないが、多くの専門家は、移住の理由や法的地位に関係なく、「定住国を変更」した人々を国際移民とみなすことに同意している。3カ月から12カ月間の移動を短期的または一時的移住、1年以上にわたる居住国の変更を長期的または恒久移住と呼んで区別するのが一般的だ。
現在日本での外国人労働者については、滞在期間が技能実習制度では3年~5年、特定技能制度では5年~10年なので、両方とも「移民」である。しかし、日本政府は、移民の受け入れは行わず、外国人労働者を受け入れているだけであるというスタンスを貫いている。曖昧政策は時として有効になる時もあるが、移民のような基本的でかつ、大きな問題に対して曖昧政策を行うべきではない。曖昧政策は、国民が移民に対して拒否的であるとの考えに基づいているが、そろそろ国民の意識も変えたほうが良いので、政府が曖昧政策を転換すべき時になるだろう。
過去10年間(2009年-2019年)の外国人数の増加は以下の様なものだ。10年間に81万人の増加で、1年あたり8万人程度の増加である。これでは、人口減少数(年間60万人-100万人)には到底追いつかない。少なくても年間50万人、10年間で500万人程度の移民が必要となる。
コロナが落ち着くと、以前にまして外国人人材が日本に必要となるし、流入が加速する。2019年からの「特定技能」制度では、今までの「技能実習」制度に代わり、実質的に期間限定でなく、移民と同様に、日本で「生活」する外国人人材を受け入れることになった。ところで、外国人人材の受け入れを考えるさいに、①今後の外国人人材の受け入れに関する議論と、②すでに日本で就労している人たちに関する議論、とに分ける必要がある。保守主義的勢力は、そもそも外国人人材の受け入れ自体に対して消極的であり、労働者不足は認めるにしても、短期間の滞在を原則として、早々に本国へ帰ってほしい、日本の文化を乱すような要因を排除したい、と思っている。つまり、外国人の生活に関するもろもろの権利(選挙権を含め)は排除すべきであると思っている。これに対して、社会民主主義的な勢力は、②すでに日本で就労している外国人については、その権利拡張、生活上の相談は積極的に受けるべきであると考えているが、①外国人の受け入れについては保守主義者と同じ様に消極的だ。
まとめて言えば、保守革新双方とも、外国人人材の日本への導入については、「消極的」であり、それに伴って発生する、多様性の問題、つまり多数の外国人と日本人とが混合して、新しい社会を作ることに対して及び腰なのである。勇気がないのだ。「多様性の尊重」というが、その核心は、小さな違いでなく、人種、民族、宗教などの異なる人たちがいかにして、共同して社会を作り上げるかなのである。日本のように、これらの土壌がない社会では、必然的に「多様性」が育まれないことになる。「多様性」を真剣に考えるなら、外国人と共生する社会を前提とすべきだろう。
外国人が10%の割合で存在する社会を想像してみると多様性の視点がよく分かる。生活習慣の異なる人が多くいる場合、それまでの慣習は、有効性を論証しなければならない。従って、「言語」でのコミュニケーションが必要となるのだ。現在の日本での外国人数は283万人程度、つまり人口の2%なのである。人口の2%程度は、集積の偏りがあるために、外国人との接触がまったくない地域もある。現代の日本でどの様な意味においても「多様性」があるとはとても言えない。外国人が10%といえば、1200万人だ。現在の5倍程度となる。それは、日本の慣習、常識を変える可能性を持っている。そして、現在の沈滞した日本社会を変化させる可能性も持っている。
ただし、現在の日本の慣習を変えたくないと思う人が多ければ、政府の政策は変わってくる。政府は国民の意向に非常に敏感になっている。政府がどのように政策を行うかは、保守・革新に関わらず、我々国民次第なのである。現状を守り、人口減少、改革をしないこと、議論をあいまいにすること、などの習慣を守り、世界からあまり相手にされない国でいいと思うかどうかの問題だ。
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