オミクロン株の流行を阻止するために、政府は2021年11月末から、日本人以外の外国人の日本入国を全面的に禁止した(この措置は2月末まで延長されるらしい)。この措置に対して、大部分の評論者はよくぞ決断したと称賛している。しかし、家族あるいは夫婦の誰かが日本国籍を持っておらず、主たる居住場所を日本にしている場合、家族の誰かが入国できない事態に陥る場合がある。この様な状態(ウイルスは国籍を選ばない)に対して、「それは仕方ない」と思っている人が多いようだ。もともと閉鎖的な日本人及び日本政府の体質から見ると、少数派である外国人を制限する政策は、一般に受け入れられ易かったのだろう。
この様な出来事は、一面で日本が解決すべき課題を示している。大多数の人の利益を優先して、ごく少数の人の損失は無視される、そのうえで(少数派を無視した上で)、大多数の人の間では、争いは好まれず、慣習や常識が蔓延する。大多数のほぼ満足している人の間では、新しい欲求は敬遠され、多くの人に合わせるように指導される。
少数派を排除し、多数派内部では争わない行動様式は、生活保護者を制限することや、発達障害児、あるいは精神障害者などの排除が、わりと普通に合意される素地を生む。何らかの障害者向け「施設」の建設に反対する地元運動を、ほとんど「倫理的」視点を持たず主張する人も多いし、「施設」建設に反対することに対する批判の声は上がらない。
少数者を排除しないことを「インテグレーション」あるいは、「インクルージョン」と呼ぶ。その日本語訳は、「統合」や「包摂」となるだろうが、なおマスメディアでは聞くことが少ないし、一般的な用語になっていない。
少数者ではないが、いわゆる正規社員と非正規社員との関係も同じようなものである。大手企業での正規社員の大部分は新卒者で構成され、多くは年功給で処遇される。これに対して、非正規社員は、労働組合に入らず(入れず)、一般的な昇給の対象とはみなされていない(労働組合は「ついでに」非正規社員の昇給も要求することもある)。多くの問題解決は、正規社員の間で行われるため、正規社員間の不平等感は諸外国に比べて少ない。少数とは言えない非正規社員は同じ労働を行っていても、正規社員との間には給与や、その他処遇の大きな差があり、その差を埋めようとする労働組合の動き、あるいは一般市民の動きは少ない。
教育現場でもこの傾向は顕著である。幼稚園・保育園の時から始まり、教育全般で少数者排除は一貫した方針ともなっている。一般的な多数の障害を持たない子供を中心とした教育が行われ、少数の何らかの障害を持つ子供に対する配慮はあまり見られない。配慮していると言っても、それは障害をもつ子供を、健常な子供とは切り離し、別立ての教育を行うことである。社会での障害者に対する「インクルージョン」や「インテグレーション」が必要であるとすれば、幼年期から意識的に「教育の一環として」行えば良いと思われるが、その配慮はなく、目の前の授業効率が優先されるようだ。
高齢者の間でも、多くの健康な高齢者向けの老化防止対策は話題になるが、障害を持つ高齢者向けの政策は、介護施設に隠蔽され、一括され、個別の問題とはならない。例えば、認知症対策でも、介護の苦労は問題になるが、認知症の人の権利を考え、認知症の人が被る市民生活での不利益はほとんど問題にもならないようだ。
この様に、日本では、大部分の多数を占める人達の間では、その差異に敏感で、差をつけることを好まない。その結果として格差は他の諸国に比べ少ない。少数者にもこの原則が適応されるといいのだが、そうはならず、少数者を犠牲にして、目を伏せ、多数者の平等を実現する考え方に傾斜しているように思われる。
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