孤独は嫌われる。それは、日頃集団で行動することに慣れているからか、あるいは、人間本来の習性として集団行動を求めているからなのか? 孤独は、時として「引きこもり」と同じように見られ、「孤独死」はあってはならない大問題と言われる。孤独は嫌われ、孤独にならないために対処法が紹介される。
人間が協力しなければ生きていけない時代は確かに存在した。狩猟採集生活の場合、獲物は不定期であり、当時の30人程度の部族(バンド)は、お互いに獲物を共有しなければ生きてはいけなかった。少人数の部族社会(バンド)は、本来孤独とは無縁の世界である。このような世界での孤独は、村八分的に、部族からの追放を意味していたし、何らかの事情がないと、めったには行われなかった。部族から追放されると、「孤立」して、多くは「死」あるいはそれに近い状態になることを意味していた。
しかし、部族社会と同じような状態は、現代の学校生活に見られる。現代の学校は、クラスで行動するために、子供にとっては、30人前後のクラスが大半の生活を支配する場所であるし、クラスからの事実上追放は、部族社会でのそれと同様に、人を「孤立」に陥らせ、部族社会での追放と同じように、深刻な精神的障害を引き起こす意味を持つ。
近代において、孤独(孤立)が問題となるのは、コミュニティが崩壊していることによる。コミュニティは、最小単位の家族・親族・地域社会から成り立っているが、その崩壊の最も大きな原因は個人の経済的自立だ。経済的に苦しい場合は、多数の人が集まったコミュニティが必要となるが、経済的に充足するほど、コミュニティはその経済的役割を失う。結果的に人々は自由を求めてコミュニティを捨て去るが、その結果としての孤独(孤立)を引き受けることになる。図1は、2020年国勢調査の結果で、家族の縮小を示している。1世帯あたりの人員は、1950年には、平均5.0人であり、1960年でも4.0人だったが、現在では図1のように、2.21人である(反比例して世帯数は増加)。東京は、2人を切っている。
図1
2020年国勢調査
65才以上の高齢者がいる世帯でも、図2のように、29.6%は、一人暮らしである。
図2
2020年国勢調査
世帯の誰か1人が孤独を感じ、コミュニティを求めたとしても、他のメンバーが同意しなければ、世帯人数の減少は進む。
一方で、孤独は昔から存在した。経済的に豊かな人は、一人で生活することが出来たのだ。そして、孤独に徹し、思索を重ねる人たちも昔からいたのである。フロイドは言っている。「自ら進んで求めた孤独や他者からの分離は、 人間関係から生ずる苦悩に対してもっとも手近な防衛となるものである」と。また、ソローは、「私は大部分の時を孤独で過ごすのが健全なことであるということを知っている」と書いている。
しかし、社交に明け暮れる現代においては、犯罪者に対する刑罰としてよりほかに用いるすべを知らないほど、人は孤独を恐れているのである。キルケゴールは次のように述べている。「本当に現代では、独立した精神をもつということは罪を犯すことと同じなのだ、してみれば、このような孤独を愛する人々が、犯罪者の部類にいれられるのも、当然のことではないか。」
豊かになった現代人でも、他人と話すことによって喜びを見出すことができると信じ、孤独な生活は虚しく寂しいと感じている。あるいは、「あの人は孤独である」と他人に見られることが苦痛である。つまり、その人は、人に相手にさえしてもらえない種類の人間なのであると思われたくないのだ。
孤独を感じないための装置はいろいろ開発されている。何もしない男性に対してのアドバイスは、趣味をやろう、外出しよう、家庭菜園、子供が訪問することなどだ。しかし、孤独は病的なものでないときには、それに浸ること、あるいは、孤独を当然のことと見なす必要があるのではないか。その中からどの様に生きるかを自分で見つける事ができる。
そう言えば、死ぬ際には、どの様に多くの人に見守られても、一緒に付いてくる人はいない。心中のように一緒に付いてくる人がいたとしても、死ねば離れ離れになるのだ。
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