永住を希望する外国人留学生の意見から日本社会を考える

留学生教育に携わり10年目を迎え、最近では、卒業生の一部の教え子たちから日本での永住を希望する声を聞くようになりました。学生時代に同胞と結婚し、日本で就労し子供が生まれたため日本で将来の長い暮らしを考えるようになったベトナム国籍の教え子や、夫婦で貿易会社を設立し長期的な貿易ビジネスと通じて中国と日本の架け橋を目指す中国国籍の教え子がいます。また、卒業生だけではなく大学で教えている留学生の中にも、将来的に永住を希望する生徒がいます。例えば、母国での失業率が高い状況を鑑みて、母国の若者に雇用をもたらすために日本で起業を志すネパール国籍の生徒や、ミャンマー国籍の生徒は母国の長く続く政治不安から将来が見えず、日本で就労しながら永住を目指したいと語っています。

このような教え子たちの声を聞く度に、私は、彼らが将来的に日本での永住について、どのような不安を抱えているかを尋ねています。

永住を考える際の不安(例)

(出所)筆者作成

表に示されるように、国籍・地域等関係なく不安を感じる共通項目は、(1)子供が成長する過程での多文化共生社会環境に関すること、(2)自身の将来の生活環境に関すること、(3)母国の両親の将来の介護環境に関すること等、の3点が挙げられます。その中でも特に、将来的に日本で永住するにあたっては、自身のことよりも子供や母国の両親に関する不安を抱えていることが多くあるようです。換言すれば、日本では、在留資格の創設等による就労環境の制度の強化や整備等の受入れに着眼した政策だけではなく、受入れ後に在留外国人の家族が日本で永住したいと思ってもらえるように、将来的に日本で暮らす上で抱えるであろう不安を取り除いていくことが大切です。

そのために、日本政府は、各地方出入国在留管理局・支局に設置されている外国人在留総合インフォメーションセンターや、地方公共団体の相談窓口と連携するワンストップ型相談センター等に寄せられる在留外国人の様々な相談から共通する課題を把握し、その課題を解決できるような制度の創設に活かしていく必要があります。そして課題が発生する企業や学校等の現場では、在留外国人の生活全般や労働について個別相談し易い環境を設けて、その個別相談に合わせて外部機関等も有効活用しながら解決を図ることが大切です。

留学生が在留資格「永住者」を取得するためには、様々な要件がありますが、継続して10年以上滞在し、その期間のうち5年間は就労資格(例えば、在留資格「技術・人文知識・国際業務」で就労する)で滞在している必要があります。具体的な例で言うと、来日後に日本語学校で2年間の日本語学習を行い、その後に大学で4年間の専門教育を受け、大学卒業後に「技術・人文知識・国際業務」の就労資格で日本企業に5年間働いた後に「永住者」の在留資格変更許可申請を行うことが可能です。留学生が来日してから「永住者」の在留資格変更許可申請を行うまでには、とても長い時間がかかります。

日本では、留学生以外にも様々な目的の在留資格を有する多くの在留外国人の家族が暮らしています。在留外国人の家族に日本で永住したいと思ってもらえるような国にしていくためには、日本政府が在留外国人の家族が抱えている現状の課題を多くヒアリングし、その課題を1つ1つ丁寧に向き合い解決していくように努めていく姿勢が大切です。

日本経済大学 准教授山下 誠矢
群馬大学社会情報学部卒業。横浜市立大学大学院国際マネジメント研究科博士前期課程修了。修士(経営学)。
企業でコンサルティング業務従事後、早稲田文理専門学校経営ビジネス系教員/教務主任等を経て、日本経済大学経営学部経営学科専任講師。
現在、日本経済大学経営学部経営学科教務部長補佐/准教授。留学生を対象として経営日本語を担当。専門分野は、①経営学分野(経営学全般、コンテンツビジネス)、②キャリア教育分野(キャリア開発支援)、③留学生教育分野(経営日本語,留学生教育支援)。
群馬大学社会情報学部卒業。横浜市立大学大学院国際マネジメント研究科博士前期課程修了。修士(経営学)。
企業でコンサルティング業務従事後、早稲田文理専門学校経営ビジネス系教員/教務主任等を経て、日本経済大学経営学部経営学科専任講師。
現在、日本経済大学経営学部経営学科教務部長補佐/准教授。留学生を対象として経営日本語を担当。専門分野は、①経営学分野(経営学全般、コンテンツビジネス)、②キャリア教育分野(キャリア開発支援)、③留学生教育分野(経営日本語,留学生教育支援)。
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