コロナ禍によって、不都合なことが日本では数多くあぶり出された。統計の不備、給付金の配布遅延、ワクチンの接種の混乱などにおいては、デジタル化の遅れが明らかになった。治療薬やワクチンの国産化が出来ないことによって、科学技術の遅れも明らかとなっている。そして政治についても説明責任が十分でなく、政策の決定が遅れるなど、問題が指摘されている。思えば、日本は1968年にはGDPが世界第二位となり、1979年にはジャパン・アズ・ナンバーワン(エズラ・ヴォーゲル著)と言われ、1980年代後半には、バブルに沸いた。1989年にはロックフェラーセンターを日本企業が買収し、当時の東京都の山手線内側の土地価格でアメリカ全土が買えるというほど、日本の土地価格は高騰した。この様な1970年代から1980年代に、日本は経済的に頂点を迎えたのだ。
現状は全く変わってしまった。その理由は山積みになるほど出てきている。しかし、経済低迷の原因ははっきりとしない。過去の成功体験は人々に自信を与えるが、一方で過信ももたらし、成功の要因は自身の能力によるものと思いがちである。若者は、素直に周囲を見て、参考にすべきことは取り入れるが、年を取ると妙な自信がつくせいで、過去の栄光にすがって、現実を素直に見ることを妨げられるのかもしれない。成功・失敗は個人の能力のみでなく、もっと大きな変化にも関係している。その一つの要素として「平均年齢」の推移を取り上げる。
この中で赤線は、日本の1950年から2020年までの平均年齢を示している。若い会社、団体は活気があり、年老いた会社、団体は活気が乏しいように、国単位でも平均年齢は国の活力を示す要素となっている可能性もある。1950年の日本の平均年齢はなんと22.6才、現在のアフリカ諸国やインドなどと同等で若さに溢れていた。日本が最盛期を迎えた1970年から1990年の平均年齢は28.7才から37.3才だ。普通の人が経験するように、「若者はチャレンジし、年をとると保守的になる」ことが、平均的日本人にも当てはまるなら、1990年は若年期の終わりであり、そろそろ中年に差し掛かる頃だろう。ちなみに2020年の日本人の平均年齢は48.4才、中年期に当たる。これから先の日本人の平均年齢は更に上昇する。下図で示されるように、2050年、つまり今から30年後には、51.3才になる(赤丸は現在の位置)。
上図ともに総務省統計局資料
さて、次の図は、WVS(World Values Survey Wave 6)による、国ごとのリスクに対する許容度を示したものである。
World Values Survey Wave 6 より筆者作成 ( )内は調査数
明らかに平均年齢とリスクをとる度合いとは連動しているようだ。50才に近い平均年齢になった日本では、リスクを避ける割合は、リスクを取る割合よりもずっと多い。つまり、危険なことはひたすら避ける気質である。新しい産業は芽吹かず、観光業、伝統産業あるいは健康志向の業界のみが幅を利かせるようになるのだろうか。
平均年齢を押し上げるのは、言うまでもなく少子化が原因だ。少子化は先進国共通の問題で、人類が今後直面する最も大きな課題である。つまり、生活水準が高まると少子化が不可避となる。
そこで、先進諸国の多くは、移民によって平均年齢の上昇を食い止めている。日本でも、最近では年間20万人以上の外国人労働者が増加しているが、いずれも「一時的」滞在を建前としている。つまり、平均年齢を引き下げることにはならない。日本に住み着く人が増加して初めて、新しい日本人が生まれるのだ。
日本政府は移民増加に舵を切り替えていかなければならない。日本人に対する出産、子育て支援は、人口減少対策でなく、社会保障政策に位置づけを変えなければならないのだ。
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