ある組織で意見の不一致があると、日本のマスメディアは、大げさに書きたがることが多い。あるいは、スキャンダル材料として利用する。しかし、意見の不一致は、人間社会にとって普通のことであり、議論の段階での不一致は全く問題にはならないことが「多様性」を尊重する上での条件だ。政策作成(なぜやるのか?どうやるのか?)に賛成か反対かを議論し、提案に対して反対意見を述べることはまったく差し支えない。何かを決める場合、首脳陣が密室で相談して、その結果を参加者に示すような方法、あるいは少数で決めたことについて、反対が出来ない環境は、情報の秘密性が高いときや、プライバシーに関わる場合などを除き、民主的でないことは当然であり、あまり勧められない。
賛成反対について議論が盛んになることと、政策の実行が少し遅くなることは、多少関連はあるが、政策が実行出来ないこととはあまり関係がない。たとえば、選挙で比例代表制を取る国は、2つ以上の政党での連立政権が大半であるが、成熟した国では大きな混乱はない。むしろ、少数意見が取り入れられる利点もある。反対意見に妥協することは、「自由の相互承認(ヘーゲル)」の原則から必要であるし、問題を熟議することは、民主主義にとって不可欠だ。「民主主義にとって討議がないことは、魚のいない海、木のない森、音楽のない交響曲である-ダイアナ・ヘス」と言われるように、議論が一致しない場合には、もっと、もっと、討議すべきである。
ただし、議論を尽くしても同意が得られない場合は、提案者が妥協するか、同意がなくても実行するかどちらかになる。多くの場合は、提案された意見がそのまま通るのでなく、他者の意見を取り入れ修正を経て実行される。国の政治においても、地方の政治でも、プライベートの集会でも同じことである。提案者は最初から多少の妥協は仕方ない(手続きは多少煩雑になるが)と考えるべきである。
独裁者が、自分の意見に反対するものを殺したり、追放することはそれなりに理由がある。独裁者は早急に物事を決めたがるので、そもそも議論を嫌う。議論をやりたくないなら、独裁者に来てもらえばよい。そうでなく、「民主的に」ことを決めようとすれば、議論をすることが不可欠となり、議論を行う過程で弁証論的に理解はより深まるのだ。多くの事柄で、じっくりと何回も議論を行えば、最初の提案でなくても、一定の結論を得られる場合が多い。日本の政治で議論をまともに出来ないのは、密室で決めるようなやりかたを好むか、その名残があるからだろう。
一般的に議論と口喧嘩を同じようなものと考えているフシがある。議論は、論理(理性)が主となり、口喧嘩は感情が支配する。議論で感情が登場するのは、議論に慣れていないか訓練していないからである。それは幼児や学童期の教育によることが多い。議論を教育の場で促すことは、正解が一つでなく、複数あることを前提としている。複数の正解が世界にあれば、自分の考えのみを主張できないことは明らかである。教育を受ける際に、正解が一つしかないという現状の教育も、議論を口喧嘩と混同する要素の一つである。
もっと広く考えると、日本が変化を嫌い、現状維持に陥るのは、議論を避けるからだとも言える。特に、政府の体質が、議論を避け、議論をわざと噛み合わせようとしないことも、国民が議論を避ける手本となっているかもしれない。「議論がかみ合わない」とのコメントを付け、双方に責任があるかのように述べて、そのことを政府の責任としないマスメディアも問題だ。特に最近、他の機関でも、政府に影響され、議論を避け平穏に会議を収めることが良いことであると考えられているふしがある。議論をすると一時的に険悪な関係になるかもしれないが、社会は自分と同じ考えではないことがよく分かる。また、自分の考えが他人に簡単に理解されないこともよく分かる。
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