同胞によって支えられている外国人留学生のリファラル採用

2020年1月下旬以降、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴って、多くの国・地域で渡航制限が設けられ、日本においても検疫強化や査証の無効化等の入国制限の措置が取られてきました。その結果、2020年の訪日外客数は、2019年(3,188万人)に比べて87.1%減の412万人までに落ち込みました。大幅な訪日外客数の減少は、インバウンド需要によって支えられている宿泊業や小売業、飲食業、運輸業、教育学習支援業等を営む多くの企業の経営に深刻な打撃を与えています。

留学生教育に携わる者の立場からは、これらの業界の留学生の新卒採用活動への余波を実感します。現在、私は、大学で4年生の専門ゼミを担当し、日本人学生以外にも、中国、ベトナム、モンゴル、ネパール、ミャンマー、スリランカ、ウズベキスタンの7カ国の留学生を教えています。彼らの中には、語学力や異文化理解力、日本型経営の専門知識等を活かし、大学卒業後にインバウンド需要によって支えられている業界に就職することを希望している留学生もいます。例えば、ホテルで通訳・翻訳業務を行うフロント・ロビースタッフや百貨店で訪日外客対応を行うコンシェルジュ、飲食店で留学生のアルバイトスタッフ管理・指導を行う店舗管理スタッフ、訪日外客を観光地へ案内するガイドスタッフ等の多くの職が挙げられます。しかしながら、ゼミの留学生に日本での就職活動の様子を聞くと、新卒採用情報は昨年に比べて非常に少なくなっているとのことでした。これらの業界以外にも留学生の新卒採用枠を設ける日本企業はあるものの、数は少なく留学生同士の競争も激化しているようです。

このように厳しい状況ではありますが、留学生の中には、就職難を乗り越える解決策としてリファラル採用を目指す学生たちがいます。リファラル採用とは、社員に友人や知人を紹介してもらう採用手法のことです。このリファラル採用は、留学生がアルバイト探しを行う際によく見られる採用手法です。来日したばかりの留学生は、日本語学校で日本語教育の勉学に励みながら、放課後に生活費を賄うためにアルバイトを探します。しかしながら、まだ日本語があまり上手くないこともあり、アルバイト先を自力で見つけることが難しい場合がほとんどです。そのため彼らは、日本語学校や高等教育機関の先輩から同胞が働くアルバイト先を紹介してもらい、母語による同胞のサポートを受けながらアルバイトの仕事を覚えます。

実際、ゼミに所属するベトナム国籍の留学生は、母国の高校時代の旧友が日本で小さな貿易会社を営んでいることから、旧友の紹介によって大学卒業後の就職先が決まっています。また、中国国籍の留学生は、就職活動を継続しつつ、日本で不動産会社に就職している同胞からの紹介を頼りに、その会社への就職を目指しているとのことでした。

そのような中、別のベトナム国籍の留学生から、日本で飲食店に就職したいという希望を聞きました。私は、ベトナム国籍のゼミの卒業生が、アルバイトスタッフとして働いていた大手飲食店のリファラル採用経由で、正社員として雇用されたのを思い出しました。その教え子から留学生のリファラル採用のポイントをヒアリングしこの留学生の就職支援に役立てたいと考えています。

これまで専門学校及び大学での約10年の留学生教育経験の中で、一定数の教え子たちがリファラル採用によってアルバイトスタッフだけではなく正社員として採用されてきたケースを見てきました。言葉や文化が理解できる同胞支援によるリファラル採用は、受け入れ側の企業にとっても、ミスマッチや離職を防ぐことができ、また継続的な人材確保につながる手段として好意的に受け止められているようです。留学生、受け入れ企業の話を聞くにつれ、双方にとってメリットの多いこのリファラル採用は以前から日本でも見られた形式ではありますが、特に留学生にはより有効な手段だと改めて感じています。

これらの留学生のリファラル採用は、現在の一時的な口コミから新たな採用手法へと発展する可能性を秘めています。今後は、留学生のリファラル採用のケースから共通項となるような採用構造を明らかにし、受け入れ企業の開拓を行うなど、その可能性について模索しながら就職率の向上に努めたいと思います。

日本経済大学 准教授山下 誠矢
群馬大学社会情報学部卒業。横浜市立大学大学院国際マネジメント研究科博士前期課程修了。修士(経営学)。
企業でコンサルティング業務従事後、早稲田文理専門学校経営ビジネス系教員/教務主任等を経て、日本経済大学経営学部経営学科専任講師。
現在、日本経済大学経営学部経営学科教務部長補佐/准教授。留学生を対象として経営日本語を担当。専門分野は、①経営学分野(経営学全般、コンテンツビジネス)、②キャリア教育分野(キャリア開発支援)、③留学生教育分野(経営日本語,留学生教育支援)。
群馬大学社会情報学部卒業。横浜市立大学大学院国際マネジメント研究科博士前期課程修了。修士(経営学)。
企業でコンサルティング業務従事後、早稲田文理専門学校経営ビジネス系教員/教務主任等を経て、日本経済大学経営学部経営学科専任講師。
現在、日本経済大学経営学部経営学科教務部長補佐/准教授。留学生を対象として経営日本語を担当。専門分野は、①経営学分野(経営学全般、コンテンツビジネス)、②キャリア教育分野(キャリア開発支援)、③留学生教育分野(経営日本語,留学生教育支援)。
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