タイトルに掲げた2つの問題は、政治的信条を異にする両陣営から発せられているものだ。移民についての議論を棚上げするのは、専ら右寄りの陣営である。2016 年3 月に自民党に設けられた「労働力確保に関する特命委員会」が発表したペーパーの中身は次のようなものである。「『共生の時代』に向けた外国人労働者受入れの基本的考え方」と題した同文書は、人口減少下の日本では人手の確保がままならない介護、農業、旅館等において、必要に応じて外国人の受入れ条件を整えていくという政権の考えを打ち出している。同時に、「移民政策とは誤解されないように」という馴染みの文言がそこには記されている。その結果、移民に対して“短期間の外国人労働者”という名称が付けられ、それは移民ではないとの奇妙な説明が通用するのである。世界の一般的常識では、外国生まれで、その国に在住する人たちを移民と定義することが普通であるが、日本では、事実上の移民を受け入れ、労働力を補っている実態を見ないようにして、議論を行わないようにしているのだ。奇妙なねじれた状態が何年も続いているので、根本的な考え方を深めることは棚上げされている。
外国人労働者の数は毎年20万人程度増加している(コロナ以前の状態)。しかし、これらの外国人労働者の居住状態を「どうせすぐ帰るのだから」との理由で、改善しようとしない。移民は治安の問題や社会保障の問題で悪者になっているが、各種の研究では、移民に対して市民的統合を行うことによって、人口減少を補い、貢献できることが示されている。しかし、議論の棚上げを行うと、移民(外国人労働者)との関係を地域でどのように考えるべきか、移民(外国人労働者)にどのようにして市民的統合政策を行うのか、多文化主義に基づき、出身国の文化を尊重するべきかなど、将来の根本的問題について無関心となってしまう。
憲法についての議論を棚上げするのは、専ら左寄りの陣営である。本国会で、4月15日にはじめて憲法審査会が開催された。目的は、国民投票法の改正案の審議であり、この法案は2018年に国会に提出されている。それ以降すでに3年間が経過しているのだ。法案の要点は、テレビCMなどをどのように取り扱うかについての問題のようだが、国会で議論することによって、一般の関心が高くなれば、適切な位置に収まるだろう。また、憲法改正も、野党がその議論自体を封殺している態度は建設的とは言えず、議論を進めた結果として、国民投票によって間違った判断が下される可能性はあるが、それも、国民の民度が決めることであり、仕方がないのではないか。野党は、憲法について与党が理不尽な要求をしている場合は、その要求を指摘することによって支持の拡大を得ることになり、既存の支持層のみでは限界に達している現状を変える一つの契機になるだろう。
移民の問題は人口減少について、憲法の問題は中国とアメリカの対立に対しての向き合い方を考える上で、今後の日本を左右する大きな論点である。そして、現状からの変更を要求している。政治だけではなく、日本国民全体も当事者であることを理解する必要がある。その為には、ともかく議論が大切だ。その議論に国民全体が参加する必要があるし、政治家は議論に国民を参加させる義務がある。
国民の意思によって大きな政策の転換を行い結果的に失敗することもある。例えば、イギリスのEUからの脱退は、まだ確定はしないが、大きな失敗になる可能性は高い。しかし、それはイギリス国民自体が決定したことであり、仕方がないことだ。そして、将来変更することも不可能とは言えない。国民も過去の英雄と同じように、失敗から学ぶことが出来るのだ。
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