私は、映画やテレビドラマの監督やプロデューサーという仕事をしています。ゼロからストーリーを立ち上げ、膨らませ、エンターテインメントにし、作品をさまざまな人に届けることを生業にしています。
そして今、私が描きたいのは『葬儀』。その葬儀にまつわるお話をしたいと思っています。単なる『冠婚葬祭』という言葉に過ぎなかった葬儀というものを、深く考えざるを得なかった時のことをお話したいと思います。
―葬儀をしてくれるな、と言って亡くなった友人
―突然亡くなった先輩を送った、社葬
―初めて夢を語り、そのまま亡くなってしまった、親友
その三人の死が続いたのは3年半前のことでした。もちろん彼らは実際に言葉では何も残してはくれませんでしたし、彼らの人生の最期に私自身、何もできず呆然と宙を見るしかできませんでした。なんとか、彼らからの想いを、心をくみ取りたいと思ったとしても、それすらできる余裕も私にはありませんでした。どうして人は死んでしまうのか、どうして神様は彼らを連れて行ってしまったのか、納得など到底できない、そんな幼稚な思いしか持てないほどに混乱したことを昨日のことのように思い出します。
『葬儀』、それは古来から日本だけでなく世界中で行われてきた儀式に違いありません。様々な国で、様々な文化で、慣習で、形を変えながら行われ続けていることは周知の事実です。
しかし、私が彼らの葬儀に出席し、よりしっかりと感じたことは、葬儀は単なる儀式ではない、ということ。亡き人を思い、祈り、願い、そして、送る。本記事タイトルにもあるように、『死』を見つめることから『生きる』ということを考えるものなのだと。
「あんた、本当に暑苦しい!」
親友が口癖のように私に言っていたこの言葉は、存命の時には全くの軽口にしか聞こえなかったものですが、葬儀を通しご家族と会い、ご友人と会い、幼少期からの人となり、全く知ることがなかったこれまでの人生の道程を知り、故人が持っていた多面的な内面、密かに漏らしていた本音に直面したとき、私には、この言葉がエールに聞こえました。
「あんた、暑苦しいけど、間違ってない。頑張れ!頑張るんだ!」と。
葬儀は故人を想い、偲ぶ場である。そして同時に、残された人が新たなスタートを切る場でもあることを実感しました。
人は絶対に死にます。死なない人は、この世にいません。どんなに生きたいと願ったとしても、死は必ず誰にでも等しくやって来ます。言葉には決してならない人生の最期の故人の思いを、残された私たちは葬儀で必死に聞かなければならない。どんなに悲しく、苦しくて跪いていたとしても、残された人間は、全力で立ち上がり前に進まなければならない。私たちは、生きているのだから。
そして2020年、2021年――
世界中を襲っている未曽有のCOVID-19は、その人生最期の大切な時をも奪ってしまいました。儀式である葬儀としての時間と、その環境の欠落を全世界の人々にもたらしたのです。故人を送る、たったそれさえ儘ならなくなったこの状況に、世界中の誰もが『葬儀』の必要性を改めて強く感じたことでしょう。
さらには、その人生最期の時間に対する考え方、また優先順位、いったい何を大切に思うか、など人それぞれに価値観がはっきりと明確になっても来ました。故人の望む形、遺された人々が望む形を常識にとらわれず実現できる、それもまた選択の自由であり、それこそが、『豊かさ』でもあると私は思います。
来る人生の最期。
あなたは、
誰に、どんなふうに、送られたいですか?
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現在、監督・湯浅典子は、岡山、東京、茨城とを撮影地にし、岡山の葬儀を舞台にした映画プロジェクト/日本・スペイン国際共同制作 長編映画『Performing KAORU's Funeral』(直訳:カオルの葬式)の準備を進めております。そのクラウドファンディング・第二弾が『晴れ!フレ!岡山』/Ready Forにて、3月13日(土)にスタートし、現在すでに『ネクストゴール』に挑戦中です。
→【本公開のサイトはこちらです】
https://readyfor.jp/projects/PKFP2nd
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