正規雇用、非正規雇用の区別は1980年代に登場した。しかし、これらは法律上の定義でもなく、学問的な定義でもない。マスコミが使い始め、現在では一般的になった言葉だ。そして、非常に差別的な言葉である。報道機関は、この様な差別的言葉を使うことがないように、何らの工夫をすべきである(しかし、さしあたり適当な言葉がない)。
正規雇用(正社員)とは一般的に、フルタイム勤務(1日8時間で週5日など)で、雇用期間に期限がない無期雇用の働き方のことを指すと言われている。一方で、非正規雇用とは正規雇用(正社員)以外の全ての雇用形態を示す。具体的に非正規雇用の形態は、パートアルバイト、派遣、嘱託、契約、臨時社員などがある。
日本の大手企業に多く見られる雇用慣行では、労働者をその勤務態様によって、次の三通りで区分けする習慣もある。
1. 企業に直接雇用される者であるか、そうでない間接雇用者か。
2. 契約期間が無期(期間の定めのない労働契約)であるか、有期(期間の定めのある労働契約)であるか。
3. 各企業の就業規則で定める所定労働時間の上限(フルタイム)まで労働する者か、上限に満たない(パートタイム)者であるか。
このうち、直接雇用・無期・フルタイムの3つをすべて満たす労働者を正規雇用労働者として、企業は中核的労働者に位置付ける。一つでも欠ける者は非正規雇用労働者(アルバイト、パートタイマー、契約社員(期間社員)、派遣社員等)として、正社員を中心とした企業秩序の周縁に位置付ける。非正規労働者は、契約期間や間接雇用(派遣社員)によって、企業にとって雇用の調整弁としての役割を持ち、同時に、同一労働同一賃金の原則を適応しないことによって、人件費用を安く抑える働きがある。この様な慣習は、企業にとって短期間では収益を引き上げるが、長い目で見ると、日本の労働生産性を下げる要素となる。図で示されるように、先進7カ国の中で日本は労働生産性において最下位だ。しかも次第に悪化している。マルクスは、宗教は民衆の「アヘン」であると言ったが、この様な非正規雇用の低賃金も日本にとって「アヘン」のようなものである。低賃金の非正規労働が許容されているために、日本の企業は生産性を上げる努力を行わないようになり、「日本の産業は低賃金で支えられている」という、あたかも発展途上国に似たような状態になっている。
すべての人を正規社員にする考えもあるが、それは見当違いだろう。中核社員には、時間外労働や転勤の義務も課せられることが多い。この様な義務を嫌う人に対しては、短時間労働、あるいは、期間限定社員との契約も必要である場合が多い。問題は、そこにあるのではない。「問題は賃金なのだよ・・・愚か者め」なのだ。つまり時間あたりの賃金が問題なのである。そこで、同一労働同一賃金の原則が登場する。
日本において非正規社員は、同じ様な仕事をしている正規社員に対し、時間あたり60%台の賃金しかもらっていない(欧州の平均は76%)。正規非正規の分類の一つである、フルタイムワーカーとパートタイムワーカーとの比較では、パートタイムワーカーはフルタイムワーカーに比べ、時間あたり60%以下の賃金しかもらっていない(欧州の平均は82%)。
内閣府 2014年調査
労働者が多様な働き方を選ぶことが出来ることを歓迎するように、企業も限定された時間に働く労働者を期待する。問題は、そこに低賃金という邪魔者が存在することだ。多様な働き方は、就業時間、労働期間の有無、働く場所の選択などに及ぶが、労使の話し合いで、より良い時間に働くことが出来るようにすべきだろう。そこで、同一労働同一賃金の原則が登場する。労働時間が8時間であろうと、3時間であろうと、スキルが同じで、作業内容が同じなら、同じ賃金を支払う必要があるのだ。その為には、まず、賃金を時間単位で決めることである(その為には労働の必要性も時間単位で決定する必要がある)。そして、深夜帯などの多くの人が働きたくない時間には、時間あたりの賃金を高く設定し、多くの人が働きたい時間帯、例えば、10時から16時までは、賃金は下がる。ただし、フルタイム社員であろうと、パートタイマーであろうと同じ賃金を支払うことが大切だ。
時間あたりの賃金の比較が一般化すれば、正規、非正規のような差別的な概念はなくなるだろう。そして、自分が働きたい時間に働くことができるようになり、ワーキングプアのような状態も解消するのだ。
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