コロナワクチン接種体験記-ボストンより

先日、筆者もついにコロナワクチンの第1回目の接種を行ってきました。
日本も接種開始の時期が近づいているようなので、マサチューセッツでのワクチンの分配状況や、私自身の体験も踏まえて、コロナワクチンについて少し書いてみたいと思います。

現在マサチューセッツの新規COVID-19患者数は2,414人/日(1月29日現在;7日間平均)と日本の国全体の平均3,858人/日と比較できるほどですが、傾向としては感染者数は下向きです。

そして、現在までのマサチューセッツでのワクチン接種率は5%程度と言われています。
ワクチンの供給体制としては現在Phase 2に突入しようとしています(2月1日より)。Phase 1では主に医療従事者にワクチンが行き渡りPhase 2では先ず75歳以上の高齢者、そしてその後65歳以上の高齢者や2つ以上の基礎疾患を持っている方、学校やスーパー、交通関連の仕事に携わっている方が対象となっていきます。最終的に全ての一般の方が対応となるPhase 3への移行は4月に行われる予定です。

マサチューセッツ州ホームページより
https://www.mass.gov/info-details/when-can-i-get-the-covid-19-vaccine

私は医療従事者であるためPhase 1でワクチンを接種しましたが、医療従事者のすべてにワクチンが行きわたっているかと聞かれると、必ずしもそうではありません。筆者の病院では1万8000人のスタッフのうち、現在1万人ほどがワクチンを接種している状況だそうです。

また、Phase 2への移行にあたって早速様々な問題が生じています。まず、予約を取るためのオンラインシステムが75歳以上の高齢者にとっては非常に煩雑であり、せめて電話予約も可能に出来ないかと協議が行われています。また、各市への分配の不均衡や接種実施の場所が高齢者によってはアクセスが悪いという問題なども上がっています。さらに、そもそもワクチンの供給が足りているのかという問題もあります。

現在ワクチンは州全体に毎週8万本程度供給されているそうですが、一人当たり2回接種が必要のため、州の全人口700万人にワクチンが行きわたるのにはまだまだ時間がかかりそうです。

さて、実際ワクチンを接種してみてどうだったか。一個人の経験として、私のワクチン接種体験について書かせていただきます。

私の場合1回目接種後、24時間後あたりに、倦怠感と38度の熱がでました。「しんどいな、早めに寝よう」と思い、解熱薬(アセトアミノフェン)を飲んで就寝したら、次の朝には熱は下がっており、普段通り出勤できました。接種部位(肩)の痛みですが、接種時は全く痛くなかったですが、その後24時間で打撲したような痛みになり、その後徐々に良くなりました。あくまでワクチンに対しての反応は個人差がありますので、一個人の経験としてとらえていただけたらと思います。

私はモデルナのワクチンであったため、二回目の接種は4週間後の予定です。(ファイザーの場合は3週間後)。

ワクチンを摂取した同僚や友人などに聞いても、ファイザーとモデルナのワクチンの論文で報告されているように、副反応としては接種部位の疼痛、倦怠感、悪寒、発熱や頭痛などを訴えている方もいましたが、いずれも短期間で、早く軽快するようでした。重篤なアナフィラキシーなどの副反応はCDCによると米国民に実施開始後の最初の189万人の接種者の中で21人ほどいたそうで、そのうち追跡調査がとれた20人は全員無事退院しているそうです。また、アナフィラキシー反応を起こすタイミングの中央値が接種後13分であるため、多くの施設が接種後15分程は様子を見るため施設内で待機することを勧められます。(参考文献1-3)

ワクチンに対しての期待は、少なくてもボストンでは高く、みな前向きに捉えて積極的に接種しているようです。mRNAワクチンという新しい種類のワクチンなので長期的な効果や副作用などがわからないと心配する同僚もいましたが、臨床試験の良好な結果や周囲の前向きな姿勢などに影響されてか、ほとんどの同僚が結局ワクチンを接種しています。

一個人の経験と、マサチューセッツ州というアメリカの一部の地域について書かせていただきましたが、ワクチン承認間近である日本での接種開始にあたり、少しでも参考になればと思います。

今もなお、社会全体に大きく影響を与えているCOVID-19ですが、収束を願うばかりです。

 

参考文献
1. Baden LR, El Sahly HM, Essink B, et al. Efficacy and Safety of the mRNA-1273 SARS-CoV-2 Vaccine. N Engl J Med. 2020.
2. Polack FP, Thomas SJ, Kitchin N, et al. Safety and Efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine. N Engl J Med. 2020;383(27):2603-2615.
3. Allergic Reactions Including Anaphylaxis After Receipt of the First Dose of Pfizer-BioNTech COVID-19 Vaccine — United States, December 14–23, 2020. Accessed.

 

ハーバード大学ベス・イスラエル・ディーコネス・メディカルセンター、高度消化管/最小侵襲外科フェロー中元 啓太郎
2011年岡山大学医学部医学科卒。
聖路加国際病院、横須賀米海軍病院での研修を経て渡米。
ニューヨーク・マウントサイナイ・ベス・イスラエル病院、ウエストバージニア・マーシャル大学病院での外科研修を修了し現職。
ロボット手術を含む最小侵襲外科、外科研修教育に主に興味あり。
2011年岡山大学医学部医学科卒。
聖路加国際病院、横須賀米海軍病院での研修を経て渡米。
ニューヨーク・マウントサイナイ・ベス・イスラエル病院、ウエストバージニア・マーシャル大学病院での外科研修を修了し現職。
ロボット手術を含む最小侵襲外科、外科研修教育に主に興味あり。
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