コロナ禍での、全国民に対する一律10万円特別定額給付金によって、日本の財政は12.8兆円の負債を抱えることとなった。これに伴い、今年度の新規国債発行額は32.5兆円の見込みから、90兆円に増加した。今や国と地方の負債は2019年度末で1,122兆円となっているが、今年度さらに100兆円足らず増加することになる。この膨大な負債が日本経済に及ぼす影響については、色々と議論されているが(持続可能かどうかについて)、一つ明らかなことは、長期の膨大な負債によって、表面上は政府予算が拡大しているにも関わらず、個々の項目については、緊縮型となっている点である。例えば、今回明らかになったコロナ禍での行政的対応の不備(感染者数の把握やPCR検査の遅れなど)は、長期に渡る行政費用削減の結果と言ってもよい。また、日本においての近年の科学技術の衰退でも、当該予算の縮小は大きな影響を与えている。それ以上に、社会保障については、予算の縮小傾向によって今後次のようなことが起こることがある程度予想される。自己負担の増大、保険適応範囲の縮小、そして、保険加入要件の拡大、高齢者の労働参加の促進、低所得者への支援が滞ること、などである。
今後の日本においての社会保障政策は、財政的状況を考えると、普遍主義的(一律に給付を行う、社会保険方式に似た給付方法)から、選別主義的方法(焦点を絞った給付)に移行するしかないだろう。その場合、マイナンバー制度を切り札とする必要がある。マイナンバーはすでに全国民に示されている。諸外国に於いても同様の制度は普及している。しかし、マイナンバーは、現在日本では限定的に使用されているのみであり、本来の目的が周知されているかどうか疑問だ。むしろ政府は、本来の目的を明かしたくないかのようである。マイナンバーの主たる目的は、国民の所得と資産を把握し、選別主義的な社会福祉的支出に役立てるところになることは当然だろう。今回のコロナ禍でも、当初の収入が減って厳しい状況に置かれた世帯に、一律30万円を支給する際に役立つ仕掛けだったのだ。マイナンバーが普及していないために、それが反対意見(多くは人気取りの政策)によって、一律の給付に変わったのだ。
マイナンバーの主たる目的である、国民の所得と資産の把握は、すべての金融取引や不動産取引の際にマイナンバーを用いることによって達成することが出来る。しかし、この際には、国家に自分の所得や資産の把握をされたくない人達による反対がある。この反対は、表面的には個人情報の漏洩や国家による誤った利用を根拠にしているが、本音は当然、所得や資産の把握をされた結果、税を負荷されることに対する反対であることは明瞭だ。昔からサラリーマンの所得は容易に把握できるが、自営業者の所得の把握は困難だった。現在のデジタル技術は、「すべて」の金の移動を当局が把握することを可能にする。デジタル技術の応用は、この分野にこそ必要なのである。その結果、国民全員の所得状況、資産状況を当局が把握し、選別主義的な社会保障政策を出来るようになるのだ。
結局の所、問題はマイナンバーの適応拡大(特に銀行取引に対する義務化)が現在のポピュリズム政権に可能かどうかは、政府が国民に信用されているかどうかに左右される。しかし、このマイナンバーによる所得・資産把握と、政府の信頼感向上とは、どちらかが先行しない限りは鶏と卵の関係になってしまう。ここで当然先行すべきは、まず政府が信頼感を取り戻すことだ。政府が先に行動すべきなのである。例えば、行政文書の開示を求めると、黒塗りの部分が大半を占め(重要な事項になるほど多くなる)、日頃から説明責任を果たすことを怠るのでは、マイナンバーの適応促進が困難になる。政府は情報開示を促進することをまず宣言して、実行すべきである。
政府は、「デジタル化」「行政改革」の方向を、情報開示の促進に合わせ(当初は批判が多いだろうが)、国民の信頼を確保し、マイナンバーの適応拡大を目指すべきである。政府の情報開示の姿勢が消極的なために、各省庁も消極的な体質が染み渡っている。いまこそこの慣習を改めるべきだろう。
国民の個人情報を政府が多く知ることは、その政府に対する国民の信頼がない場合には、好ましいことではない。しかし、現状では国民はないものねだりをしている。選択肢は、政府の関与を少なくして、ケアも少なくするか、あるいは政府の関与を現在のように行ってケアを手厚くするか、どちらかになるが、現在は政府の関与を少なくしてケアを求めている。その結果、ツケは将来に回されるのである。
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