新型コロナウイルスの感染拡大によって、在宅勤務が注目されているが、注意すべきは在宅就労がもっぱら中~高所得者寄りの特権であることだ。欧州での調査では、テレワーク可能な人は、所得上位20%には4分の3いるが、下位20%では3%に留まるという。在宅就労を可能にするには、それを支えるエッセンシャルワーカーの存在が不可欠だ。エッセンシャルワークとは、生存に必要な商品を作り、生活に不可欠なサービスを提供する職種である。エッセンシャルワーカーにとって在宅就労は無縁である。
現代社会は、日常生活に不足しているものだけを作り、サービスを提供しているわけではない。生存に必要な商品やサービスはある程度限られている。しかし、社会(企業)は、生存には必ずしも必要としない商品をあえて作り出している。商品を単に作るだけでなく、宣伝活動を行い、なぜこの商品が魅力的かを消費者に訴えるのだ。生活に必ずしも必要でない商品を作り出すことが、経済成長につながると言われている。これらの仕事の中には、在宅就労可能な業種が数多くある。しかし、コロナ禍によって多くの人が移動を制限され、在宅就労を行っている場合でも、それとはまったく反対に、生活に不可欠な分野においては以前と同じ様に、あるいはそれ以上に多くの人が在宅就労のできない仕事をしている。農業、製造業の現場、医療介護従事者、警察・消防関係者、公共団体関係者、スーパーマーケット勤務者、保育所職員、清掃員、配送員などである。これらエッセンシャルワーカーは労働者の30%~40%を占めている。
ルトガー・ブレグマン氏は、「隷属なき道」(原題 utopia for realists)の中で次のように述べている。「昔の封建領主も、現在のトレーダーやCEOも、同じように、社会に貢献する仕事をしている人から富をかすめ取っている。あるいは、単に富の移転で高収入を得ている。しかし、昔の領主は、かすめ取っていることを認識しているが、現在のCEOは自分で稼いだと思っている」と。在宅就労を支え、生活に不可欠な活動を行っている人たち(エッセンシャルワーカー)は、一般的に給与が低く、人手不足になっている。
エッセンシャルワークは、必須の仕事であるが、あまり賃金の高い仕事とはみなされない。例外的には、ニューヨーク市のゴミ清掃員のように、賃上げを要求して、日本円にして年間800万円の収入を得ている場合もある。この報酬は、一面では学歴や技術に対して割高と言えるし、その反対に、作業の必要性から考えると、妥当であるともいえる。ゴミ清掃員の給与が低く、人材が集まらないようになると、ストライキが発生した当時のように、市民生活に大きな影響を与えるからである。
エッセンシャルワーカーの仕事が社会にとって必要不可欠なものであれば、賃上げの要求は、意外に簡単に受け入れられる可能性もある。しかし、これらの人々はまとまって待遇改善の要求をすることは少ない。賃上げは、いずれ将来には実現するだろう。その過程はストライキの多発を伴うような、暴力的な過程を必要とするか、あるいは、誰もその仕事に就かないようになり、一部の企業での賃上げが行われ、加速度的に多くの企業に賃上げがもたらされるかもしれない。
賃上げに伴う上乗せ賃金は、企業あるいは組織の自己努力で吸収するか、あるいは価格に上乗せされる。公的サービスの場合は、同じく企業あるいは組織の自己努力が必要であるが、それでも不足するときには、公的価格が引き上げられるか、税、保険料の引き上げが行われる。人手不足の一般企業が行うべきことは、利益を上げている企業から順に、低い賃金のために人手不足になっている現場労働者の時間給与の引き上げである。結果的に価格が上がるか、低付加価値の企業の廃業が起こる。日本の時間給与は諸外国に比べても低レベルであり、正規社員と非正規社員との格差が大きいことも知られている。
日本企業は賃金の上昇を抑えるために、女性、高齢者を次々に労働市場に、いわゆる「非正規労働者」として送り込んだ。現在の人手不足は、その送り込む人材が限界に近くなった結果である。その上、外国人労働者の導入を促進しようとしているが、そうではなく、まず、時間給与を上げて、エッセンシャルワークへの人材の導入を促すべきである。それも、利益を上げている企業が率先して行えば、生産性の低い企業は淘汰されるのだ。
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