ノーマライゼーションの考え方が広がり、差別や偏見はいけないということは誰もが共通認識だろうと思います。しかし、残念ながら世界のあちこちで差別や偏見は存在します。最近は、メディアで差別や偏見に関するニュースを目にすることも多くなり、身近に考える機会は増えているのではないでしょうか。
障害者にとって、バリアフリーな場、支援器具も増え、制度やサービスも整備され、ずっと昔に比べると暮らしやすくなっているようにも感じますが、実際にそうでしょうか?障害がある人とそうでない人が、同じ社会に生きているという実感はあるでしょうか?
例えば学校へ行くことを考えてみます。現在、なんらかの障害があると、特別支援学校、特別支援学級、通級へ通う子どもは増えています。
文部科学省 新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議(第8回)配布資料
【参考資料3-1】日本の特別支援教育の状況について 資料抜粋
就職については、障害者雇用率制度を見ても一般の企業に就職している人は少数だということがわかります。
障害者についての考え方も制度も経緯的に見れば改善されていると思います。しかし、社会の在り様を考えると、「障害者を含む社会」ではなく、「障害者にとって優しいと思われる別の新しい社会」を整えているように感じるのです。
これらは必ずしも悪意ではありません。「仲間がいたほうが安心して過ごせるのはないか」「専門の支援を受けるほうがよいのではないか」といった思いやり・配慮も含んでいます。例えば、障害者自身が普通学校へ行きたい、地域で一人暮らしをしたいと願う場合、「学習をみんなの中で上手くやるのは難しいだろう」「バリアフリーでないし、不自由なのが気の毒だ」といった本人の為を思った理由から、周囲も本人も断念することがあると思います。しかし、これは差別に該当する可能性があります。
障害者権利条約の第2条に以下が記されています。
「障害に基づく差別」とは、障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のあらゆる分野において、他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を認識し、享有し、又は行使することを害し、又は妨げる目的又は効果を有するものをいう。障害に基づく差別には、あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定を含む。)を含む。
平成29年度の障害者に関する世論調査に、合理的な配慮と差別についての結果報告があります。障害のある人とない人が同じように生活するためには、例えば、受付窓口で耳の不自由な方に筆談で対応したり、商店で高い棚にある商品を店員が代わりに取ってあげたりするなど、さまざまな配慮や工夫が必要になることがあるが、こうした配慮や工夫が行われなかったとしたら、それが「障害を理由とする差別」にあたる場合があると思うか聞いたところ、「差別に当たる場合があると思う」とする者の割合は53.5%、「差別に当たる場合があるとは思わない」とする者の割合が34.4%でした。
この結果からもわかるように、合理的配慮が行われないことは差別であるという社会の認識は出来上がりつつありますし、合理的配慮のための手段は身近に多くあります。サポートの知識をもつ人も増えてきています。しかし、同じ社会に存在するには見えない壁があるのです。
障害者の施設はいまでも街の中心部にはほとんどありません。実際に、新たな施設を建設しようとすると、地域の反対にあい、断念した、というニュースを耳にすることがあります。推測ですが、反対する人の中には「よくわからないものは避けたい」という感情があるのではないでしょうか。障害者は、避けられ、「見えない」存在とされ続けているのです。
「よくわからないものを避ける」を遥かに超えた言動や行動については、アメリカのハーバード大学が、Facebookで不適切なやりとりをした学生の入学許可を取り消したことは記憶に新しいと思います。極端に差別的な言葉や行動は、社会で話題になり、認識を改めることは進められています。社会とは、誰かが作ってくれるものではありません。各個人が自分の中で形成していったものが表明され、作り上げられていくものではないかと思うのです。「配慮の先の排除」「見えない存在」について、改めて考えてみてください。ある特定の人たちを社会の外側へ追いやってはいないでしょうか?
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