COWSPIRACYという映画がある。Netflix(ネットフリックス)配給の2014年制作のドキュメンタリー映画だ。監督、主演は、キップ・アンデルセンである。一般の映画館では上映されないので、見た人は少ないかも知れない。COWSPIRACYとは、COW=牛 CONSPIRACY=陰謀の造語である。映画では、畜産業が、地球温暖化の大きな原因となっているのに、それを環境保護団体は問題にしていない、あるいは、隠していることを問題としている。また、これから先、今までにように、食肉中心の生活を続けると、地球温暖化、食料の枯渇、水不足、熱帯雨林の消失などの被害をもたらすとも言う。
牛など畜産業界が、圧倒的に環境破壊の原因NO.1なのに、環境保護団体は、エネルギーを転換しようとか、エコ生活とか、一見妥当な、でも実は非効率的なアプローチしか提唱していない。しかも、畜産業界がいかに環境を破壊しているかを誰もが「隠そうとしている」ようだ。根拠となるのは、2009年、ワールドウォッチ研究所(WWI)が発表した調査報告書である。その中では、地球温暖化の51%は畜産業が引き起こしているというという驚くべきことが述べられている。しかし、この報告に対しては、多くの反論がなされていることも事実だ。結果的に、国連その他の機関が考える、畜産業の地球温暖化への影響は10数%から30%台との報告が妥当だろう。それでもかなり高いことに注目すべきだ。車、汽車、船、飛行機などすべての交通手段からの地球温暖化全体に与える影響は13%にすぎないのに、地球温暖化に与える影響の10数%から30%台を畜産業が占めていることには驚きを隠せない。
それに加えて、現在発展途上国で問題となっている食料の枯渇、水不足、熱帯雨林の消失が、いかに肉の消費と関係するかを示している。その上で食肉の消費には次のような問題があることを指摘している。まず、世界の食料提供において、牛肉1kgを作るには、飼料として穀物10kgが必要で、豚肉1kgを作るには穀物7kg、鶏肉1kgには穀物4kgが必要になる。つまり、食肉を食べると無駄なエネルギーを大量に消費するわけだ。
水についても同様だ。食肉に頼れば、1kgあたり21,000リットルの水、1kgの卵生産に、3,993リットルの水が必要となる。水資源が枯渇している多くの国の現状では、多大な負荷を環境に与える。また、熱帯雨林の破壊に対して、畜産を含む工業型食料システムは80%の影響を及ぼしている。さらには、抗生剤の使用量の80%は、人間に対してではなく、畜産業で使われている。
人間の食料になる穀物を、最新の工業型農場で肉に変えるという試みは、基本的に非効率的な方法である。肉、牛乳、卵の形で生産されるカロリーよりも、それを得るために家畜に投入されるカロリーのほうがはるかに多いからだ。人間が初めて牛や羊を家畜として飼うようになった頃、牛や羊は人間には食べられない草を食べて、人間が食べられる肉に変えてくれていた。食料をめぐって人間と競い合うわけではないので、エネルギー転換効率は問題ではなかった。同様に、豚と家禽(かきん)は、残飯や飼葉を与えられていた。それらもまた、人間には食べられないものを食べて、人間の役に立ってくれていた。だが現在の工業型農場では、肉や卵を生産するために、人間の食料にもなる穀物が、大量に家畜に与えられている。
肉の需要が急速に拡大すれば、穀物をいくら増産しても家畜にどんどん食いつくされ、食料価格は高騰し、貧困層への食料供給はいっそう細っていく。そして、いずれ工業型農場を持続させていくことが不可能となり、世界の食料供給システムが崩壊してしまうだろう。2050年までに、世界の人口はさらに20億人増えると見込まれ、国際連合はそれまでに食料供給量を、現状からさらに70~100パーセント増やす必要があると予測している。
現在の工業型農場が、一見効率的に見えても、今後大幅に増加する食料の必要量を満たすことは難しい。その意味で、現状の牛肉、豚肉、鶏肉などの摂取を低下させ、穀物の摂取を増やすこと(それはエネルギーの効率的使用になる)を促進しなければならないだろう。みんながベジタリアン(※1)やヴィーガン(※2)になる必要はないが、一度地球の食料について考える必要はあるのではないだろうか。
(※1)ベジタリアン;菜食主義。動物性食品の一部または全部を避ける食生活を行うこと
(※2)ヴィーガン;動物性食品を食べない、もしくは追加して動物製品を使わない。食生活においてはほかの菜食主義(ベジタリアン)の食生活とは異なり卵や乳製品も避ける。
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