• 記事一覧
  • ゲストライター記事一覧
  • 緊急特集:新型コロナウイルス感染症を考える-医療・福祉の専門家の視点から-Vol.15「新しい生活様式における子どもの体験活動の可能性 ~岡山市子どもセンターの会員アンケート調査結果から~」

緊急特集:新型コロナウイルス感染症を考える-医療・福祉の専門家の視点から-Vol.15「新しい生活様式における子どもの体験活動の可能性 ~岡山市子どもセンターの会員アンケート調査結果から~」

緊急事態宣言が解除されたものの、新型コロナウィルス前のような生活に元通りというわけにはいかない日々が続いています。子どもたちは家庭で過ごす時間が増え、それが長期間続くと、子どものみならず大人のからだと心の健康にも影響を及ぼすことが懸念されます。この状況の中、当法人で何かできることはないかとリモートでの話し合いが行われました。そこで、「劇団等の作品の動画や情報、当法人がこれまでに行ってきた体験活動をSNSで届け、自宅で体験してもらうのはどうか。」という提案が上がりました。体験活動を得意分野としてきた私たちにとっては初めての試みでもあり、まずは会員の親子世帯を対象にネット環境やSNS上でのニーズを調査してみることから始めてみました。今回はこの調査から見えたコロナ禍での日常をお伝えします。


「ご家庭などで動画を見ることができるネット環境はありますか。」という質問に対して、回答者すべてが「ある」という結果でした(図1)。このことから、当法人側から会員の方向けに動画配信等を行う場合は、親子家庭の26世帯には動画を見ることが可能な環境であることが分かりました。

次に、「子どもセンターからの動画配信等を利用したいと思いますか。」という質問の結果、「はい」が84.6%(22人)、「いいえ」が15.4%(4人)でした(図2)。過半数以上の方が当法人からの動画配信等を利用したいということが分かりました。その一方で利用を希望しないという方もいるということも分かり、ニーズに合った対応を考えていくことが課題であることも見えてきました。

また、動画配信等を有料にした場合、会員はどのくらいの料金だと利用したいと思うのか率直な疑問についても質問をしてみました。図3が示すように、「500円」11.5%(3人)、「1000円程度」3.8%(1人)、「無料なら利用する」53.8%(14人)、「内容による」42.3%(11人)という回答が得られました。「無料なら利用する」の次に回答が多かった項目は「内容による」だったことから、動画配信等を行う場合は、どのような内容のものに対して、「有料」とするのかも含め考えていくことが大切であることが分かりました。

以上の質問の他に、2つの記述式の質問も行いました。1つ目は、「動画配信等を利用する上で心配なことがあればご記入ください。」という質問です。回答件数は9件でした。セキュリティの問題や子どもの視力低下への影響、本物に触れるという体験離れへの心配など広範囲にわたる意見がみられました(図4)。

2つ目は、「動画配信等で見てみたい、知りたい 体験活動は何かありますか。あればご記入ください。」という質問です。回答件数は、14件でした。家でできる遊び、劇・音楽鑑賞、工作といった様々な体験活動を希望していることが分かりました(図5)。

運営スタッフの方々とこの結果を見て、「やっぱり体験活動は大事だよな~。」と改めて「生の体験活動」の大切さを知る機会にもなりました。また、このアンケートの最後に自由記述を設けたところ、多くの会員が、自粛期間中の過ごし方を記述していました(図6)。大変な状況の中でも、楽しいことを見つけながら過ごしていることが分かりました。

コロナの影響により、私たちが大事にしてきた体験活動が中止・延期となり、会員の方々に会えない日々が続いています。そんな中でも、アンケートを通じて、親子会員の生の声を聞くことで会員の方々と繋がることができ、ほっとした気持ちになった自分がいました。会うことはできない状況下でも、メールや会員通信等で言葉のキャッチボールをすることで、会員の方と繋がっていられるということが、自分自身の幸福感、安心感につながっています。このやりとりは、生の体験活動で味わう感動や喜びを補えるのではないかと気付かされました。今の状況を「生の舞台芸術鑑賞、体験活動は超えられない。」と悲観的に捉えるのではなく、「それに近いものを生み出すチャンスかも。」と楽観的な気持ちでいる方が心の健康にも良いだろうし、日常生活の中で心が動かされた瞬間を何個見つけられたか、書き留めたり、誰かに話してみたり、身近なものを様々な角度から見てみると何だかわくわくするかもしれません。

現在、当法人のプレーリーダーやプレーパークの運営委員が中心となり、親子や子どもを対象にした遊びの動画づくりに初めて挑戦しています。私は引き続き会員通信等を介して、会員とことばのキャッチボールを通して「今の声」を拾っていきたいと思っています。あらゆる楽しみが先延ばしになっていますが、会員アンケートから得られたことを活かし、各々ができることから取り組んでいます。

しかしながら、コロナの影響で体験活動が十分にできない環境下の親子を支援するには、当法人だけで抱えきれないほどの様々な課題が浮き彫りになっています。今こそ、子どもや親子支援を行う民間組織(NPO/サークル/企業など)が手を取り合うことが急務であると考え、当法人も呼びかけ人となり、「おかやま親子応援プロジェクト」が発足しました。

現在、期間を限定して、クラウドファンディングで支えてくださる方を募集しています。みなさまのお力を貸していただきますようよろしくお願いいたします。

#だれもひとりではない | おかやま親子応援プロジェクト クラウドファンディングページ  
URL: https://readyfor.jp/projects/okayamaoyako

対象:岡山市子どもセンタ-の会員(親子世帯60名)
回答者数:26名
実施期間:2020年5月1日(金)~ 5月10日(日)
調査方法:メールにてアンケート内容(WEB上で回答ができるもの)を送付、回答を収集

NPO法人岡山市子どもセンター 事務局久川 春菜
広島県広島市生まれ。岡山理科大学卒業、日本体育大学大学院修了。大学院時代は、子どものからだと心に関する研究室に所属。修了後、大学勤務を経て2018年、住み心地がよかった岡山へJターン。音楽と刺繍をこよなく愛している。

<NPO法人岡山市子どもセンターの概要>
2001 年4月に発足したNPO法人です。発足以来、舞台芸術鑑賞・プレーパーク・子育て支援など様々な活動をしています。それらの活動は、子どもや大人の居場所づくりにもつながっています。行政・多くの団体・個人などとネットワークを拡げ、子どもの社会参画を進めるとともに、子どもが豊かに育つ環境づくりを目指しています。
広島県広島市生まれ。岡山理科大学卒業、日本体育大学大学院修了。大学院時代は、子どものからだと心に関する研究室に所属。修了後、大学勤務を経て2018年、住み心地がよかった岡山へJターン。音楽と刺繍をこよなく愛している。

<NPO法人岡山市子どもセンターの概要>
2001 年4月に発足したNPO法人です。発足以来、舞台芸術鑑賞・プレーパーク・子育て支援など様々な活動をしています。それらの活動は、子どもや大人の居場所づくりにもつながっています。行政・多くの団体・個人などとネットワークを拡げ、子どもの社会参画を進めるとともに、子どもが豊かに育つ環境づくりを目指しています。
  • 社会福祉法人敬友会 理事長、医学博士 橋本 俊明の記事一覧
  • ゲストライターの記事一覧
  • インタビューの記事一覧

Recently Popular最近よく読まれている記事

もっと記事を見る

Writer ライター