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緊急特集:新型コロナウイルス感染症を考える-医療・福祉の専門家の視点から-Vol.14「アンケート調査から見える学生生活の変化」

ソーシャルディスタンスの確保やオンラインツールの普及など、皆さんそれぞれが感じられているように、新型コロナウイルスの感染拡大によって、私たちの生活様式に変化が訪れています。

大学生など若者と関わることが多い私自身、彼らの生活にも大きな変化があることを感じ、そうした学生の声を把握すべく、有志メンバーで岡山の学生250名に調査を実施しました(調査期間は4月24日(金)~ 5月8日(金)。その他調査概要は末尾に記載)。

なお、今回の調査の目的は、学生の声を集め、そのニーズの輪郭を把握することでした。回答数の多い大学や学年があるなど、調査結果の代表性を明らかにすることはできません。

アルバイトの減収

まず、大学生のアルバイト状況の変化についての調査結果です。

回答者のうち70%が新型コロナウイルスの影響でアルバイトによる収入が減っていることが分かりました。うち40%は「バイト先が完全休業で収入がなくなった」と回答しています。

アンケート自由記述部分への回答も一部ご紹介します。

<学生の声>
● バイトによる収入もなくなり、この状況が続くと思うと、不安で仕方ありません。
● 生活できなくなるわけではないが、アルバイトが全てなくなってしまい、就活にかかる費用等が貯蓄できず困っている。

授業料を支払えるかどうか分からない

また、授業料を支払うことが難しいと回答した学生も25%いました。アルバイト減収や親の収入減少がその要因として考えられます。当然、そうした収入減にともなう不安の増大も見られました。

<学生の声>
● アルバイトに入れなくなり、生活にすごく困っている。
● 収入がないので生活が不安。
● 家全体の収入が減少した。
● 奨学金を借りていると言っても、家賃や公共料金などに消えてしまい、今月末に支払いだが授業料が払える見込みがない。

学費を支払うことが困難になったと回答した25%(63名)のうち、「収入が減った」もしくは「無くなった」と回答している学生は87%(55名)でした。

調査結果に見られるように、アルバイト代の減収が学生の生活面や精神面に様々な影響を与えています。加えて、今まではアルバイトをしていた時間が丸々無くなるという事態が起こることで、「空いた時間をどのように使うか」を考えることが生まれ、学生の時間の使い方もこれまでのルーティン通りではなくなっているように思えます。次に述べる大学のWEB授業についても、事前に録画・編集された動画を視聴するオンデマンド型の講義の場合、普段の時間割ではなく、いつでも視聴可能なため、学生は時間の使い方の裁量を従来よりも多くもっている状況にあると思います。

大学講義のWEB移行

アンケートの自由記述欄には、WEB授業に対する不安の声も一部に見られました。WEB授業でどこまで学習の質が担保されるのかという懸念や、これまでと同様の学費を支払うことへの疑念などを感じている学生もいるようでした。

<学生の声>
● 収入が減るなかでの授業料の支払いや、通常の授業と例えばオンライン授業が行われたとして、それも全ての授業がオンラインでされるという保証もないなかで、同等の価値あるものと判断して授業料の値段が変化しない、となっていいのかという問題意識があります。まだオンライン授業を受けてないのでわかりませんが。
● 通常授業からレポート提出のオンライン授業に変わっているのに、一切手当等の支援がなく、授業料を無駄に支払っている感じがする。

アンケート調査をした時点から日が経つにつれて、学生への支援策は拡充されていきました。現在では、国からの学生支援緊急給付金や独自に支援金を給付する大学も増えています。

他方、大学のWEB授業の内容面については、大学や教員も初めての取り組みであることも多く、全国の大学教員が試行錯誤しています。そんな中、岡山県内の大学のWEB授業は現状どうなっているのか、岡山大学4年の末永光さんが県内17大学を対象に学生の声を集め、以下のように述べています。


「学習機会の損失」「格差の拡大」などという強い言葉が使われ、問題にされているオンライン教育ですが、実際に岡山県内の大学生に生の声を聞いてみると意外なポジティブな声が聞こえてきました。

特にオンライン授業の内容が録画されてあれば、授業終了後に見直せるというのは多く見られた感想。さらに対面での授業では、恥ずかしがって質問ができない人がチャットでの質問を行うため、授業中の質問の数が増えているという印象があるといいます。効果的なオンライン授業のポイントは、資料や授業の進め方が事前共有されていることや、質問がしやすい環境が整えられているかどうかが大きいようです。これらが出来ている授業は対面授業に無い強みを活かしていると言えるのではないでしょうか。

一方で、オンラインの教育環境に大きな不安を抱いている学生も多く見受けられました。
不安を感じている声は、特に一年生に多く見られます。それは苦労して入った大学の学びが失われてしまうのではないかというもの。対面の授業に比べて教授とのやり取りの回数は減ってしまっています。授業の中で教授とインタラクションをとりながら学びを深めるのも、生徒が大学の授業に求めていることです。更にオンラインではどうしても実習や実験は行えません。私立のスポーツ系学科では実習を期待して入学した一年生も多く、現在の状況には不満を抱いているようです。

生徒によって現在の状況を不安視する度合いは異なっていることも見えてきました。経済状況や本人の生活リズム、自宅のインターネット環境によって、感想の内容が大きく変わっているという印象を受けます。

この2ヶ月間のオンライン教育を経て、大学側も生徒側も改めて授業と大学のあり方について考え直す機会になったのではないでしょうか。これをコロナウイルスによる特例とみなして忘れ去るのでは何も学びがありません。オンラインと対面のそれぞれの良い部分を取り入れつつより良い大学教育が増えていくことを、学生の身分ではありますが、期待しています。

 

さいごに

新型コロナウイルスの影響で経営が厳しくなったお店は岡山でも少なくなく、緊急事態宣言が解除されたからと言って、以前の世界に完全に戻るということもできないでしょう。大学生活では、「アルバイト」「大学講義」「就職活動」このあたりが以前と大きく変わりました。変化に伴う不安の程度は学生によって様々ですが、「事例としてこのような声が挙がっている」ということを知っていただければ幸いです。

また、今回の変化をより良い方向に導いていくことで不安が解消されていく部分も多く、その動きは各地で生まれ始めています。その1つとして、岡山の中で複数の団体が呼びかけ人となり、「おかやま親子応援プロジェクト」を発足。私が所属するNPOも連携団体となり、支援の呼びかけを募っています。現在、期間を限定してクラウドファンディングで支えてくれる人を募集しています。みなさまのお力を貸していただけますと幸いです。


#だれもひとりではない | おかやま親子応援プロジェクト
クラウドファンディングページ : https://readyfor.jp/projects/okayamaoyako

調査対象 岡山県に在住する大学生・大学院生(一部県外学生を含む)
回答数  250名(2020年5月8日現在)
実施期間 2020年4月24日(金)~ 5月8日(金)
調査手法 インターネット調査
調査結果URL https://peraichi.com/landing_pages/view/gakuseisien

ユースワーカー(Youth Woker)森分 志学
1990年、岡山県倉敷市生まれ。岡山大学大学院教育学研究科卒業。
大学3年生の頃、自分が受けてきた高校の進路指導に違和感をもつ。それをきっかけに、高校が大人と出会い、将来を考える対話の場を高校生とともにつくる。卒業後は、教育系の広告代理店に勤務。2017年、NPO法人だっぴの理事・事務局長として岡山にUターン。岡山の中高生・大学生を対象に、キャリア教育プログラム「中学生・高校生だっぴ」(中高生・大学生・大人の対話の場)を県内14市町村で展開。岡山の若者と大人をつなぐ活動に従事している。岡山大学非常勤講師。
1990年、岡山県倉敷市生まれ。岡山大学大学院教育学研究科卒業。
大学3年生の頃、自分が受けてきた高校の進路指導に違和感をもつ。それをきっかけに、高校が大人と出会い、将来を考える対話の場を高校生とともにつくる。卒業後は、教育系の広告代理店に勤務。2017年、NPO法人だっぴの理事・事務局長として岡山にUターン。岡山の中高生・大学生を対象に、キャリア教育プログラム「中学生・高校生だっぴ」(中高生・大学生・大人の対話の場)を県内14市町村で展開。岡山の若者と大人をつなぐ活動に従事している。岡山大学非常勤講師。
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