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緊急特集:新型コロナウイルス感染症を考える-医療・福祉の専門家の視点から-Vol.10「障がい児の保護者に対するアンケート調査から見えてきたもの」

私たちペアレント・サポートすてっぷは、倉敷市で活動する、障がい児の保護者支援の認定NPO法人です。運営スタッフはほぼ全員、障がい者の親であり、自分たちが子育てで苦労した経験から、若い世代の子育ての負担を少しでも軽減しようと考え活動を始めて、現在9年目になります。

2020年3月2日、全国で一斉に学校が休校になった時に、私たちが一番に心配したのは、変化に弱い障がいのある子どもたちの混乱と、そのことで親たちがどれだけ困るだろうかということでした。障がいのある子どもたちは、災害などの突発的な非常事態下では、障がい特性が強く出るなど、様々な反応が出ると言われています。それは真備での災害時にも、現地の保護者から聞いていたことでした。ウイルスは天災とはまた違いますが、災害の一種と言えます。

真備の時にも思いましたが、災害時にデータを取ることは今後の対策を考える上で、とても重要です。そこで4月に入ってから2週間、障がい児の保護者を対象に、「【教えてください】新型コロナウイルス感染拡大防止に関する障がい児の保護者への影響について」と題したアンケート調査を行いました。集まった回答数は187件。その調査でわかったことは大体以下のようなことでした。

「障がいのある子の様子は普段に比べてどうですか」という質問の答えの1位は「ゲームばかりしている」37%、2位は「やたら甘えてくる」28%、3位は「明らかにイライラしている、ちょっとしたことですぐイライラする」26%、以下も「家族間のトラブルが増えた」「何度も繰り返し同じことを質問してくる」「体重の増加」「睡眠の乱れ」等続きます。多動やこだわり等、障がい特性の強化については11~15%程度の人が該当すると答えました。
「このような子どもの様子について保護者であるあなたはどのような影響を受けていますか」という問いには、1位の「事態がいつまで続くのかわからず不安」という回答以外には、「イライラし子どもに感情的にあたってしまう」が30%、「子どもに怒鳴り散らしてしまう」が17%、「気が変になりそうだと感じる」が16%、「子どもに暴力をふるってしまう」が8%という結果でした。

結果を見る限り、私たちが当初予想したよりも、子どもたちの「障がい特性の強化」という影響はさほどでもなく、むしろ、障がいのあるなしに関わらない共通した子どもの反応の方が多くみられるという印象でした。一方で親の反応は予想通り、精神的な負荷が非常に高まっており、いら立ちを子どもにぶつけてしまっているようでした。その2つの事実を合わせて見えてくるのは、子どもの障害云々よりもむしろ親自身が、今、社会に起きている事態の先行きが見えないことで不安を強く感じており、そのストレスの矛先が、ずっと家にいてきょうだいげんかを繰り返したり、何度も同じことを聞いてくる子どもに向かってしまっているのではないかということです。感染の恐れがあるため子どもの預け先も確保しにくく、人とも交流が禁止されているのでストレス発散のためにおしゃべりするわけにもいかず、親たちのストレスはどんどん蓄積されていっているのでしょう。

それを裏付けるように、今、欲しい支援は何かという問いに対して「子どもを(感染の不安なく)預かってくれること」が1位、続いて「金銭的支援」と「誰かと話がしたい」が同率2位で続きました。私たちはこの結果をふまえて、LINE・電話・オンライン相談や、感染予防に十分配慮した「個別相談」を実施することで、苦しい状況にいる保護者の皆さんに安心してお話していただける場を、なんとか工夫して作っていくつもりです。


※本原稿の内容についての責任は著者にあり、編集局の意向を示すものではありません。

認定NPO法人ペアレント・サポートすてっぷ理事長安藤希代子
1970年(昭和45年)生まれ、名古屋市出身、一男一女の母。愛知大学経営学部卒業。夫の転勤により宮城県仙台市で4年間を過ごした後、1999年に岡山県倉敷市に転居し、現在に至る。2004年より7年間倉敷市特殊学級親の会(現在の倉敷市特別支援学級親の会)で7年間役員として活動したのちに2012年、任意団体「ペアレント・サポートすてっぷ」を設立。2014年にNPO法人化し、2019年に倉敷市初の認定NPO法人となる。倉敷市粒浦の「保護者の居場所うさぎカフェ」で年に 1,200 人超の来所者を受け入れながら「倉敷子育てハンドブックひとりじゃないよ」の発行やアウトリーチ型支援「出前茶話会」、相談支援ファイル「かがやき手帳」をツールとした支援者育成事業や西日本豪雨災害の被災地真備町での復興支援活動など、障がい児の保護者の支援に特化した活動を様々に展開している。
1970年(昭和45年)生まれ、名古屋市出身、一男一女の母。愛知大学経営学部卒業。夫の転勤により宮城県仙台市で4年間を過ごした後、1999年に岡山県倉敷市に転居し、現在に至る。2004年より7年間倉敷市特殊学級親の会(現在の倉敷市特別支援学級親の会)で7年間役員として活動したのちに2012年、任意団体「ペアレント・サポートすてっぷ」を設立。2014年にNPO法人化し、2019年に倉敷市初の認定NPO法人となる。倉敷市粒浦の「保護者の居場所うさぎカフェ」で年に 1,200 人超の来所者を受け入れながら「倉敷子育てハンドブックひとりじゃないよ」の発行やアウトリーチ型支援「出前茶話会」、相談支援ファイル「かがやき手帳」をツールとした支援者育成事業や西日本豪雨災害の被災地真備町での復興支援活動など、障がい児の保護者の支援に特化した活動を様々に展開している。
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