北欧諸国は高福祉高負担であるが、教育水準も高くそれでいて経済成長も高い。国民の満足度も高く格差も少ない。言わば理想的な国として見られている。しかし、30年前には、高負担のために経済が崩壊直前であった。その当時流行だった新自由主義(アメリカやイギリス、レーガンやサッチャー)の前には、古臭い国家と見なされ、やり方を変えなければ立ち行かないとさえ思われていた。
現在では、立場が逆転して格差が世界的な問題となる中で、北欧の国々は(スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランドなど)、成長と福祉の双方を達成し、優等生的な位置を占めている。何故この様に大きく変わったのだろうか? そこに現在の日本が、北欧の典型的な国家であるスウェーデンとの比較を行うことに意味があると考えられる。
確かに、スウェーデンを初めとする北欧の国々は、人口が最大のスウェーデンでも約1000万人(日本の十分の一以下)、その他の国は500万人程度しかいない(日本の一つの県と同程度だ)。従って、比較をするなら日本の人口に近い、フランスやドイツ(7000万人~8000万人)の方が良いという考えもある。しかし、あえて国の大きさの違いを考慮に入れた上で、スウェーデンと日本との比較を行い、今後の日本が取るべき道を考えたい。
スウェーデンは、2018年時点で、国土面積約45万平方キロメートル(日本の約1.2倍)、人口約1,022万人(2018年11月,スウェーデン統計庁)、一人あたりのGDPは日本の39,394ドルに対して、53,873ドル(2018年,IMF)(1クローナ=約11.15円(2019年9月現在))と高い、ここ5年間の経済成長率は平均2.5%、インフレ率は1.5%と優良だ(日本は同時期に、経済成長率1.1%、インフレ率0.6%)。外国人比率は2000 年に11.3%であったが、2016 年には18.0%に急上昇、2016年には16万人余り(その半数はシリア難民)の外国人流入があった。
また、国連が発表している「世界幸福度ランキング」では、スウェーデンが7.343で第7位に対して、日本は5.886で、58位になっている。
かつて高福祉高負担は、経済成長を阻害し、国の活力を低下させると思われていた考えは、もはや通用しないようだ。その他の北欧諸国もスウェーデンと同様の傾向を示している。一連の充実した社会保障が消費意欲と起業意欲とを高めていることは事実だろう。
日本とスウェーデンの比較で、福祉の基準はスウェーデンの方が大幅に高いと言われる。そして、福祉に関する予算も大きい。もっとも、福祉に使う金は天から降ってくるのでなく、国民一人ひとりの税や社会保障費から拠出される。その基盤として、経済の好調さが必要である。つまり、スウェーデンのような福祉を達成するためには、経済の好調さも重要となる。経済の好調さは、何らかの恩恵によるのでなく、自分たちの努力によるものだ。問題は、どの様に努力を行えばよいのか? その点で、日本の努力した方向は少し間違っていると言える。間違いは以下のように幾つかある。その基本は、社会保障の充実⇔経済成長をセットで実現することにある。まず経済成長がありその後に社会保障が充実するのではない。
その為には、4つの視点が挙げられる。
第一に、日本では過去30年間に中途半端な経済刺激策を小出しに何回も行った結果、膨大な財政赤字が生じたことを認識し、「経済刺激策」を封印することである。
ただし、災害などの不可抗力での救済策は必要だろう。つまり、国民の救済は必要であるが、経済の刺激は不必要なのだ。膨大な財政赤字の影響で、積極的投資(特に研究投資)や社会保障に大きな影響が生じている。
第二に、不況対策として、救うべきは企業ではないことを明確にすることだ。
例え中小企業であっても、企業は救済の対象とはならず、企業に勤めている人間のみが救済の対象となる。これは競争政策と言えるが、このような政策によって、生産性の高い企業のみが生き残る。
例えば、不況の場合の支援策でも、日本では、企業に対して雇用を維持するように(雇用調整助成金)給付を支給するが、スウェーデンでは企業を経由しないで、個人に直接給付を行う。
第三に、障害者や高齢者のケアでは、最終責任は国家(コミュニティ)に有り、家庭には無いことを明確にする。
国やコミュニティは、子供の教育、障害者の生活、社会的弱者の支援を家族任せにしないで、積極的支援すべきである。
第四に、終身雇用と年功給に頼らずに失業補償の改善と解雇規制の緩和、さらには再教育を推進し、労働市場を活性化し、転職でのキャリア形成を促進すれば良いのだ。同一労働同一賃金の原則も更に徹底すべき事業である。
スウェーデンの政策との比較で、日本において有効なものは以上の項目である。十分な検討を要するものである。
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