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緊急特集:新型コロナウイルス感染症を考える-医療・福祉の専門家の視点から-Vol.6 新型コロナウイルスをきっかけに多様性を認める社会へ 「普通って何?」

新型コロナウイルスのパンデミックが起こりつつあります。過去を振り返ると、世界恐慌の10年後に世界大戦が始まった歴史が存在します。最近、時代の変化は早くなっています。同じ事を繰り返さないために世界大戦へと繋がった原因を考えると、過去は、変わった人や考え方を排除し、同じ考え方、病気や障害がない普通の人が優先される社会でした。健常者から障害者を見る場合、障害者は普通には見えませんね。そもそも、普通って何でしょうか?

 

辞書で引くと[名・形動]特に変わっていないこと。ごくありふれたものであること。それがあたりまえであること。

 

障害者の私からすれば、辞書の意味通りとらえると、誰もが独り独り違うので、普通の人はいないと感じます。みんな普通の人を求めてますね。ごくありふれた人・特に変わっていない人=「普通の人」であるならば、障害の有無は別にして、私は、「普通の人」にはなりたくないです。

戦時下は真面目な人や健康的な人が優秀な人でした。人には感情や個性があり、「普通の人」は存在しないのに、有事の時ほど「普通の人」を求めてしまいます。障害者に障害を克服・治療して「普通の人」になる事を要求してしまう考え方が日本の社会には根強く残っています。

 

大昔ペストが流行った時代、魔女の仕業とされ、魔女狩りが行われた時代と比べると、医学も進歩し、原因もわかり対処法もありますが、人の心の中はさほど変わっていません。人の本質に自分と違うものは排除する本能があるのではないでしょうか?この本能のおかげで繁栄も戦争もあり、進歩した今の時代があります。

 

私は障害を持って生まれました。病気と障害は治る・治らないの違いはありますが、考え方は同じであり、どんな人でも受け入れる社会の考え方が大事です。「頑張れば克服できる」とか「リハビリを頑張れ」とか言われますが、治すことができるなら頑張ることができます。新型コロナウイルスは、誰しも感染するリスクがあります。現在、新型コロナウイルスの治療に関わった医療関係者、その家族に対しても差別がみられます。感染した人、さらには、完治した人に対しても様々な差別が続くのではないでしょうか。差別される社会ではなく、どんな人でも受け入れる多様性がある社会が人を幸福へと導くのではないのでしょうか?

世界の中でなんらかの障害を持っている人の割合は約15%と言われています。日本は、障害の定義が世界水準より厳しく、障害をもっている人の割合は、身体・知的・精神を合わせ、7,4%です。性同一性障害(LGBT)の人は13人に1人、パニック障害を持つ人の割合は約2%、ADHDの人の割合は、幼児期では8%、成人では4%と言われています。日本では障害を克服、治療するものだという考え方が根強く残っており、差別や偏見のため公表できない障害者もかなりいます。すべて合わせると日本の場合でも障害を持っている人の割合は、15%は超えるでしょう。

 

私は施設で色んな障害者と出会い、見慣れているため普通に接します。しかし、社会の中ではまだまだ障害者と出会う機会が少なく見慣れてないため、普通に接する事が難しいのではないでしょうか。そのため、障害を克服、治療し、普通の人になる事を要求してしまう社会の考え方が今でも存在してしまうのでしょう。

 

様々な障害・様々な考え・様々な人種の人を見慣れる事が重要です。障害者の視線から社会を見ると、社会はかなり変わって来ました。、最近では多様性の社会やユニバーサルデザインという社会の考え方があります。ユニバーサルデザインは、文化・言語・国籍の違い、老若男女といった差異、障害・能力の差に関係なく、できるだけ全ての人が利用しやすい施設・製品・情報の設計をつくるという考え方です。英語では「Universal Design」と書き、頭文字をとって「UD」と呼ばれる事もあります。、ユニバーサル(Universal)には、「すべての」という意味があり、デザイン(Design)には「計画」という意味があります。

私が幼いころの1980年代にバリアフリー社会という社会の考え方が出て来ました。車椅子でも動きやすいように段差をなくし、車椅子でも入れるような車椅子用トイレがつくられるようになりました。特定の障害が対象でしたが、社会の力で障害をカバーして行こうという考え方が生まれ、今世紀に入り、ユニバーサルデザインという社会の考え方が出て来てました。最近の車椅子用トイレは名前も変わり、「多目的トイレ」や、「みんなのトイレ」と言い、性同一性障害(LGBT)の人、妊婦さん・赤ちゃん・お年寄りなど配慮を必要とするすべての人が使いやすいトイレができており、様々な障害をカバーする用具や制度がつくられました。電動車椅子も昔からありましたが、最近の電動車椅子は視線・まばたき・呼吸などで操作ができます。どんなに障害が重くとも用具や制度を使えば、ごくありふれた、あたりまえで普通の事のように社会の一員として活躍できます。そのような時代が少しずつ近づいてきています。

 

すべての人が普通に暮らせる社会づくりが始まり、私もヘルパーさんと普通に買い物に行き、駅員さんに助けてもらって普通に電車に乗り、特殊なパソコンを呼吸で操作して普通にこの文章を書いています。日本では、すべての人が普通に暮らせる社会づくりが始まったところです。しかし、未だ差別や偏見のため、完治した感染症や障害者であることを多くの人が公表できない社会です。新型コロナウイルスをきっかけに本当の多様性を認める社会をつくるチャンスだと思います。独り独りが様々な見方をし、考える事が大切です。そのことが平和で幸福な社会を築くと考えます。

「夢を叶える145」ライター宮村孝博
1974年10月22日 誕生
1980年 城山養護学校小学部(現在城山特別支援学校)に入学(丁度その前年に、障害者の義務教育が開始)
1992年 城山養護学校高等部商業科卒業。と同時に、父が運営する関金型に就職。母の手を借りながら、部品加工のプログラムを作成。
2003年 父が亡くなり失業。母も足の難病に罹り、障害者二人暮らしが始まる。
2006年 「伝の心」と出会う。
2017年 「夢を叶える145」ライターデビュー 「チャレンジド145」プロデュース
趣味、囲碁、高校野球観戦
春と夏の甲子園の時期はテレビ観戦のため部屋に引き篭もる
1974年10月22日 誕生
1980年 城山養護学校小学部(現在城山特別支援学校)に入学(丁度その前年に、障害者の義務教育が開始)
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2003年 父が亡くなり失業。母も足の難病に罹り、障害者二人暮らしが始まる。
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