社会があらゆる生まれの子どもを認めることが、人口減を食い止める。

乳児死亡率が低下した後に、出生率が下がるのは、20世紀初期の先進諸国に限らず、その後の発展途上国にも出現する一般的なパターンである。そこで、人口減に悩む諸国にとっての解決策は、どのようなものになるだろうか? 
多くの場合、育児を公的に支援する政策が一般的で、保育所を増設して保育料金を公費で賄い、育児休暇を男女に拘わらず拡充することが普通である。しかし、この様な政策を行ってもなお、合計特殊出生率が人口を維持する2.07に達することは難しいのである。

 

先進諸国において人口を維持するための方法は、極めて少ないけど2つある。1つは移民の導入を大幅に増やすこと。2つ目は婚外子の割合を上げることだ。この2つの政策は簡単に出来るものではない。社会の慣習や考え方の変更を伴う必要がある。婚外子の割合は、イギリスでは50%に上るが、日本では2%程度である。

 

日本では2013年の民法改正により、遺産相続での婚外子の差別規定は撤廃されたが、社会的な偏見はまだまだ根強いのが現実だ。法的に婚姻関係にない男女から生まれた子供は、法律上非嫡出子と呼ばれた。「非嫡出」ではマイナスイメージがあるため、1980年代以降、「婚外子」という呼び方が一般化している。婚外子出産のきっかけは、結婚を拒否し、子供だけ欲しくて生んだケース、男性の妻が離婚に同意しないため仕方なく婚外子として出産するケース、夫婦別姓を保つために婚姻届を出さない事実婚で生まれる子供など様々である。
戦前は一夫多妻的慣習が残っていたため、婚外子比率も高くて7〜10%に達していたが、戦後急速に低下し、現在は2%程度にすぎない。

 

世界各国での婚外子の割合は以下の通りである(図1)。1970年の時点では、多くの国で婚外子の割合は10%以下であったが、1995年、2016年と急激に割合が上昇している。また、その次の図で示すように、日米の比較でも、1945年の太平洋戦争終了時点では、婚外子の割合は同じであった(3%程度)。その後アメリカでは徐々に婚外子の割合は増加していったのに対して、日本ではむしろ減少した。その結果、2015年では、アメリカ40%程度、日本は2.3%である。

 

(図1)

以下のグラフは、婚外子の割合と出生率の関係を示したものである。データのばらつきはあるが、婚外子の割合と出生率の2つの指標の間にはプラスの相関関係が見られる(相関係数は+0.5053)。おおむね婚外子の割合が高い国ほど出生率が高い傾向にある。

(図2)

舞田敏彦氏(教育社会学者)作成

先進国において出生率が高い諸国は、いずれも婚外子の割合が高い。女性がシングルマザーになるのは不名誉なこととされる社会通念が、婚外子が非常にまれな原因である。ただし、少子化を止めるために婚外子を奨励するのではなく、婚外子であっても、堂々と子育てが出来る社会が必要なのである。子供は、親が育てると同時に、社会全体で育てる考えを持つ必要があるのだ。

公益財団法人橋本財団 理事長、医学博士橋本 俊明
1973年岡山大学医学部卒業。公益財団法人橋本財団 理事長。社会福祉法人敬友会 理事長。特定医療法人自由会 理事長。専門は、高齢者の住まい、高齢者ケア、老年医療問題など。その他、独自の視点で幅広く社会問題を探る。
1973年岡山大学医学部卒業。公益財団法人橋本財団 理事長。社会福祉法人敬友会 理事長。特定医療法人自由会 理事長。専門は、高齢者の住まい、高齢者ケア、老年医療問題など。その他、独自の視点で幅広く社会問題を探る。
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