女性は感覚が細やかである。
優しさや、生活感があるなどの特徴は、女性が生来持って生まれたものであると思われている。例えば製品を作る場合やデザインを決める場合、「女性ならではの感覚」が生かされていると評価される。しかし、シモーヌ・ド・ボーヴォワールは、そうは思わなかった。「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」と考えるべきであると言ったのだ。女性らしさは、女性として生まれたからではなく、出生後に女性になるように育てられた結果に過ぎないのである。固定的に多くの人が持っている常識が必ずしも正しいとは限らず、常に常識に対して疑問を持つことが重要なのだ。
同様に考えると「人間は年を取り高齢になるのではなく、高齢者になるのだ」と言えそうだ。「高齢者」は年齢による衰えよりも、「高齢者」として社会が作り出した面も多い。若い男女は、高齢の男女よりも見栄えが良いと感じられるのは、生物的に遺伝子によって組み込まれた感覚だろうか。あるいは歴史的習慣によって作られたものか、それとも、人々が生まれた後に社会的慣習によって作られたものだろうか。
若さは古代から常に老いよりも好ましいと考えられた。このことに対して疑問を持たなければならない。人間が持っている素直な感覚をそのまま表現することは、芸術では問題とならない。しかし、近代の倫理的な社会では、素直な感覚をそのまま出すことではなく、人間の内部で消化しなければならない。自由、平等、人権等の多様性を認めることは、人間が抱く素直な感情を倫理観で見直し、表現することである。
エイジズムを公に指摘したのは、アードマン・B. パルモアの「エイジズム―優遇と偏見・差別 1995」からだろう。エイジズムは、先に「エイジズムと高齢者の免許返納」で示したように、運転免許証の「自主」返納において、高齢者に対する差別、偏見として典型的に見られるが、エイジズムは高齢者に対する差別だけではない。高齢者を優遇することによるエイジズムもあることにも目を向けなければならない。
例えば、映画館や名所での年齢による料金割引、免許証自主返納後の公共交通機関での運賃割引などである。なぜ、高齢者優遇がエイジズムと言われるのだろうか? 社会は何事においても、対象者を社会に包摂する場合は差をつけず、社会から排除しようとする場合は差をつける。高齢者を優遇することは、高齢者以外の人達とは異なることを明らかにして、その区別を助長するものだ。
男女の区別によって女性が男性と分かれることと同じ様に、高齢者を色々な場面で区別すると、高齢者自身、あるいは社会が高齢者を区別するようになる。高齢を理由にした優遇や差別を禁ずるとすれば、どの様な方法を取るべきだろうか。平均寿命が長くなるに従って、今までと同じ年齢でも比較的元気な人が増えていることは確かである。そうすると、年齢による区別を廃止し、能力によって差を付けざるを得ない。いわゆるハンディキャップの考え方だ。
エイジズムを起こさないためには、年齢要素をすべて排除しなければならない。それは、国籍や肌の色、さらに男女の性別による差別を排除することと同じなのである。身体的な力は年齢と共に変化することは、生物として人間が持っている特徴であるが、それは、民族での差異や、男女での違いを生物的な違いと位置づけないことと同じなのである。この様な区別(差別)を取り除くとすれば、その廃止リストは次のようになるだろう。
1, 年金は、年齢によって一律に支給しないで、仕事が無くなり収入が少なくなる場合にのみ支給されること。
2, 高齢者医療保険は廃止され、年齢に関係なく所得や資産に応じて一部負担金(自己負担金)が変わること。これを実現するためには、マイナンバーの強化が必要。
3, 介護保険は高齢者のみでなく、全年齢の障害を持つ人に適応されること。
4, 定年退職制度は廃止するが、それに伴い、能力による給与制度は、入社時から適応し、年功給制度は自然に消滅する。
5, 認知機能検査と高齢者講習は廃止し、免許適正審査は高齢者だけでなく、すべての人に行うこと。免許の自主返納キャンペーンは行わないこと。
6, 高齢者向けでなく、障害者向けの運転装備を早急に開発すること(衝突予防装置など)。
7, 各種の民間の高齢者優遇制度(映画の入場料、公園などの入園料など)を禁止すること。その代わりに、障害者に対する優遇のみとすること。
8, その他統計も、従来の65歳は継続性重視のために残すにしても、10歳刻みの統計に改めること。
男女の差別が、男女の区別を行うような慣習を廃止することによって無くなるように、高齢者の差別は、高齢者の区別を行う慣習を廃止して、初めて無くなることを理解すべきだろう。
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