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外国人患者受け入れの最大の問題は『言葉』ーJIHs福山医療センターの事例からー

●福山医療センターは、広島県で初めて JIHsの推奨を受けた病院である

2018年の訪日外国人の数は3千万人を超え、政府によるインバウンド促進施策とも相俟って今後も増加する見込みにある。さらに、2018年12月、外国人労働者の受け入れを拡大する改正入管法が国会で成立し、単純労働者を対象とする新入国資格が設けられた。今後、日本において外国人患者が大幅に増加するのは必至であり、対応に迫られることとなる。 

既に、日本の医療現場では外国人患者の受入れに当たり、様々な問題が起こっている。Medical Excellence JAPAN(MEJ)は、政府・医療界・医療産業界等の相互協力の下、国際医療協力を推進する団体として設立された。外国人患者の受け入れのためのプラットフォーム提供等、外国人患者が日本の医療機関で先進医療を受けるための支援(インバウンド事業)、及び、日本の優れた医療を世界に展開するアウトバウンド事業をも展開している。MEJは、病院の渡航受診者の受入意欲、受入体制、実績等を評価・査定する。その結果、要件を満たせば、当該病院をJapan International Hospitals(JIHs)として推奨し、MEJのプラットフォーム上で、世界に向けて、多言語で情報が発信される。平成31年1月現在、全国で45病院がJIHsの推奨を受けている。

渡航受診者はJIH Webサイトを閲覧し、適切な医療サービスを享受できる病院を選択し、事前予約や通訳付添い等、安心して受診できる体制を整えることができる。福山医療センターは、平成29年12月、広島県で初めてJIHsの推奨を受けた。外国人患者受入れについての問題点について触れる。

●外国人患者受け入れの最大の問題は『言葉』である

現在、福山・府中二次医療圏に居住する外国人は、ベトナム人が最も多く、約3000人を数える。なので、当院の表記は、【日本語・英語・中国語・ベトナム語】としている。現状、外来患者のみならず、ベトナム・中国人の入院患者も少なからずいる。多くは、技能実習生とその家族、そして、日本語学校の学生である。外国人患者受け入れの最大の問題は「言葉」である。外国人患者に対し、安心・安全な医療を提供するためには、言葉の壁を超えることが必須である。

厚労省にて、通訳認定制度の創設に向けた取り組みが進められているが、医療通訳を常勤職員として雇用し得る医療機関は、初診外国人患者が1ヶ月に数十人に及ぶ病院に限定される。これでは通常のJIH推奨病院においても、経営上、措置できない。そこで、「電話医療通訳(Mediphone)」という形式の外部依頼の方法がある。医療従事者が患者に伝えたい内容を通訳者に電話で伝え、医療従事者と患者との間の意思疎通を図るものである。基本、24時間対応での利用が可能である。Mediphoneは、希少言語にも対応可能である。その数は17言語(英語・中国語・韓国語・ポルトガル語・スペイン語・ベトナム語・タイ語・ロシア語・タガログ語・フランス語・ヒンディー語・モンゴル語・ネパール語・インドネシア語・ペルシャ語・ミャンマー語・広東語)に及ぶ。

2017年度、厚労省はMediphoneサービスに対し補助金を交付し、同サービスの活用を推進している。2018年度、日本病院会・全日本病院協会・石川県医師会・東京都医師会の4団体が同サービスの団体契約を締結するなど、電話医療通訳サービスは普及しつつある。当院も、厚労省の補助事業を活用し、昨年1月よりMediphoneサービスを導入している。

 

●一般人による通訳はトラブルの原因である

外国人患者を多数受け入れている国際医療センターの院内規程は、「知人および家族による通訳を禁止し、原則として病院側が認めた医療通訳者(対面、電話)のみが通訳できる」と定めている。これは、知人や家族等の一般人による通訳では、トラブルの原因になる場合が多々生じたことによる。

一般人による通訳は、①医療に関する知識が不足していて、専門用語を正しく伝えられず誤訳が発生する。②守秘義務の意識が低く、患者本人の病名等を漏洩する。③余命等、厳しい内容を患者本人に伝え得ない。④会社が用意した通訳が、労災隠蔽目途に患者に正しい情報を伝えない等々の問題が発生する危険性があるとのことである。患者自身が日本語を話せたとしても、日常会話レベルであり、医療の専門用語を理解できない場合が常である。その結果、誤解の下に不適切な医療が実施される危険性を排除できない。さらに、医療従事者側が正しくインフオームド・コンセント(IC)を行ったつもりでも、外国人患者がその内容を十分に理解できていない場合もある。トラブルが発生した場合、「そんなリスクなんて聞いてない!」としてICが成立していないことを主張されるなど、言葉の壁に起因する問題が訴訟に発展する可能性もある。

医療通訳等について、「何ゆえ、外国人を特別扱いするのだ!」という意見もあるが、これは決して特別扱いではない。医療通訳は、日本語を理解できない外国人患者であっても、日本人と同様に安全・安心な医療を受ける権利を保障するためのものであるとして、理解すべきである。

●外国人患者受け入れの次なる問題は『未収金』である

外国人患者受け入れの次なる問題は『未収金』であるが、これは、主として旅行中に受診した外国人患者に生じる問題である。まずは「クレジットカード」の提示を受診前に求めている。在留外国人患者は、健康保険証を所持しているため、特別な対応が求められるわけではない。いずれにしても、現金やクレジットカード等の支払い手段を準備できていない外国人患者に対する対策は必要である。また、外国人患者に対しては、「在留カード」や、「パスポート」等の健康保険証以外の身分証明書の提示を求めている。これは、未収金対策ではなく、外国人患者の国籍別統計データ収集のためである。

●最後に

日本は少子高齢化社会にある。高齢者人口4割の社会は100%やってくる。となると、小児・成人の患者は、病院の奪い合いとなるとは必至である。外国人労働者が大幅に増加する日本社会において、外国人患者受入体制を整備するインバウンド事業は、病院にとって経営基盤強化につながることは議論の余地が無い。病院の国際化の必要性は高まっていると判断している。

独立行政法人国立病院機構福山医療センター院長岩垣博己・堀井城一朗・矢野 平
昭和55年3月岡山大学医学部卒後第一外科入局、同年7月岡山済生会病院出向、同年11月から3ケ月間、タイ国カンボジア難民サケオキャンプに派遣(JICA)。昭和60年8月第一外科に帰局、平成3年11月第一外科助手、同年11月から2ケ月間、スーダン国ハルツーム市イブンシーナ病院に医療技術協力派遣(厚生省)。平成11年4月第一外科医局長、同年7月第一外科専任講師、平成19年3月岡山大学退職、同年4月独立行政法人国立病院機構福山医療センター副院長、平成25年4月院長昇任(現在に至る)。
昭和55年3月岡山大学医学部卒後第一外科入局、同年7月岡山済生会病院出向、同年11月から3ケ月間、タイ国カンボジア難民サケオキャンプに派遣(JICA)。昭和60年8月第一外科に帰局、平成3年11月第一外科助手、同年11月から2ケ月間、スーダン国ハルツーム市イブンシーナ病院に医療技術協力派遣(厚生省)。平成11年4月第一外科医局長、同年7月第一外科専任講師、平成19年3月岡山大学退職、同年4月独立行政法人国立病院機構福山医療センター副院長、平成25年4月院長昇任(現在に至る)。

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