潜入レポ!介護の現場から 第2話「止まないコール -中編-」

介護の現場に潜入したその日から「止まないコール」が気になって仕方がない。そして、いきなり闇の中に足を踏み入れた感じがする。
 入社2日目出勤時間の11時、「あれ~、あなたこの前、面接に来た人でしょ!」と言う声に振り向くと面接の日に面倒くさそうに出てきたあのヘルパーだった。「はい。こちらで働くことになりました、池田と申します。宜しくお願いします」と言うと「あっそう。私は若林。ここでリーダーしているから!今朝はカンファがあったから一応記録を見ておいて。」フレンドリーといえば聞こえは良いが、リーダーというイメージからとはちょっと離れている。

 

 カンファレンス記録を確認しようと思い、ヘルパーステーションに入るとパートの先輩大村が居たので一緒に見ることになった。カンファレンスの参加人数は4人、○○を提出してください、△△の予定があります、などの伝達事項だけが並んでいる。今日のものはケアのカンファレンスではなく、それは別日に開催しているのかと思い、大村に質問すると「えっ!カンファは月に1回の今日だけよ。提出物が遅れると怒られるから気を付けて!」職員人数を聞くとパートも入れて23人とのことだ。23人もいるのに4人だけの会議なのかと聞くと「みんな、仕事があるでしょ。主だった人だけでやるのよ。あとで見ればいいから、特に問題ないでしょ。」

カンファレンスという言葉に大いに違和感を覚えた。少なくともあのコールを鳴らしている人について、みんなの意見を聞き話し合うべきだと強く感じた。

 

それにしても今日もスタッフが走り回っている。
 そこに若林リーダーが来たので思い切って聞いてみた。「202号室の方はコールが頻回にあるようですが何故鳴らすのでしょう?」すると「理由なんかないわよ。大体あの人鳴らしすぎなのよ。認知症でよくわからずに押すのよ。他の人のコールと混ざって困るのよ。大した用じゃないから後回しで良いからね」・・・・・またまた返す言葉に詰まってしまった。
 こうなると矢張り本人の話を聞くしかないと思い、仕事終わりの15時に202号室を訪問してみた。

 

「山田さんこんにちは。昨日からここで働いている池田と申します。少しお話をしていいですか」とお聞きすると、ちょっと驚いた表情で「良いけど・・・今までそんなことを言ってくれた人いないわよ。何のために?」と聞かれたので「何度もコールをされるようですけれど、お困りのことがあるのではないかと思い聞きに来ました。」と言うと一層驚いた表情で「そんなこと聞いてくれた人はあなたが初めて!」と。

 

その表情や言葉遣いには職員が困るほどコールを頻回にしている人という印象は全くない。
 「あらためてお聞きします。私の勉強不足ですみませんが、どのような手助けが必要でコールをされるのかを教えていただけませんか」と聞くと「そんなに何度も押していますか?でも来てくれるのは1日に3~4回よ。それにいつ来てくれるのかを教えてもらったことがないから不安になるのよ」「今日が何日の何曜日で、明日は何の予定があるかくらいは、わかっておきたいわ」・・・少し間があり「来ても何も言わずに怒ってベッドを蹴る人もいて怖いことが時々あるの」「物忘れがひどくなった気がして怖いし・・・それでご迷惑をおかけしているのかしら?あなた聞いてみてくれない?」
大きな責任を感じた。さて、どうしようか!

「潜入レポ!介護の現場から」全体像

*介護施設にパート職員として潜入した池田出水。そこで見聞きしたことから現場の問題を表現していく。職員の様子・入居者や家族の様子・ケアの状況・往診医や時には受診付き添いなどでの病院の様子などレポートは多岐にわたる。

*登場人物
介護の現場体験者:池田出水
施設責任者:渡辺
パートの先輩:大村
常勤ヘルパー(リーダー):若林

常勤職員
往診医
203号入居者
202号入居者:山田
202号入居者家族

ペンネーム池田 出水
「これからの日本には介護サービス業界こそが必要!これぞ社会の根幹!」と考え、それを支えるべくこの業界に飛び込む。
昨今の介護サービスの現状を憂う大和撫子。
「これからの日本には介護サービス業界こそが必要!これぞ社会の根幹!」と考え、それを支えるべくこの業界に飛び込む。
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