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地域医療構想に正義はあるのか?

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1.はじめに


現在、地域医療構想は殆ど進捗していない。広島県においても例外ではない。決まっているのは厚労省が示した「病床機能別分類の境界点1)」による必要病床数だけである。厚労省は、新たな指標に基づく機能分類の策定に入っているようであるが、遅きに失している。何故、地域医療構想は進捗しないのか。それは各都道府県が制度(霞ガ関の役人策定の指標)のguardian (守護者)となり、みずから地域に即した病床機能区分についての指標を立案し示さなかったゆえである。各都道府県は、単に厚労省が策定した指標に従い、「急性期病床が多すぎる」と、公表したに過ぎない。各病院の運営責任者(院長)は、「地域における病院の現在と未来の立ち位置」と「地域住民の診療需要」を下に、職員数を規定し、病床機能を決定する。国の機能分類における必要病床数は、「実数」としての明確な根拠を欠いている。十分な説明もなく、「計算上の病床数に一方的に合致させろ」と言うのでは、納得できるはずもない。病院の『責任者』としての立場と、制度のguardian (守護者)とならざるを得ない『都道府県』の立ち位置を考えれば、協議する前から、地域医療構想の帰趨は『破綻する』と決定していたと言える。

1)各医療機能(高度急性期・急性期・回復期・慢性期)毎の医療需要を算出するために厚労省が定めた医療資源投入量の境界となる点数。

2.地域医療構想における病床機能分類の問題点


2025年の医療需要および必要病床数は、患者に対する「一日当たりの医療資源投入量」の多寡によって分類されているが、これは「基本料を除いた日当点平均の分布」でしかない。どのような治療を必要としたかの「疾患の特性」は全く考慮されていない。「一日当たりの医療資源投入量(マクロ分析)」は、二次医療圏2)の医療需要の未来予測という点では分かりやすい指標ではある。問題は、マクロ分析のための指標を、病院単位(ミクロ分析)の設定に適用することにある。これは、明らかな誤りであるが、厚労省が新たな機能分類の策定に入っている現在においても、この誤った適用が踏襲されている。本来の診療機能に関係なく、医療資源投入量により病床の殆どを高度急性期として登録する病院があり、問題視されたことは記憶に新しい。つまり、各病院が設定する具体的な病床機能の区分(手法)については、何一つ提示されていないのである。

2)入院ベッドが地域ごとにどれだけ必要かを考慮して、決められる医療の地域圏。複数の市町村を一つの単位とする。一般的に1次医療圏は市町村、3次医療圏は都道府県全域を指す。

3.DPCデータを利用した病床機能区分の可能性


前記した疾患特性を考えた場合、高度急性期・急性期の病院であればDPC3)14桁分類を用いた係数を設定出来れば、14桁分類別の患者数を入力するだけで事足りる。そもそもDPCは医療資源が平均値化され、2年ごとの見直しを図っており、データが古くなることはない。更に、重症度、医療・看護必要度データ(Hファイル)を付加することにより、更に精度は高くなるものと期待される。その上で、病院の方向性を加味したプラン(公的医療機関等2025プラン等)を作成すれば、各病院の病床機能の比較は、妥当性が担保され、現実味を帯びると考える。

3)日本における医療費の定額支払い制度に使われる評価方法(診断群分類包括評価)。

4.地域医療構想の本当の目的


国の目的は、「回復期病床を作りたい」のではない。「なんちゃって急性期病院」を排除したいのである。厚労省の分析では、現在、「高度急性期・急性期」と届け出ながら、治療実態が伴っていないケースが相当数ある。この原因は、2006年開始の「7対1入院基本料」である。当時の趣旨は、『重症患者を受け入れるためには、それなりの設備と人員が確保』されていることが必要である。しかし、収益が人件費を大幅に上回る診療報酬であったため、改定の趣旨(重症度)に関係なく、看護師を確保した病院は我れ先にと申請を開始し、本来の高度急性期・急性期を担う病院は、規模が大き過ぎるために看護師を確保出来ず、7対1を申請出来ない事態が発生する逆転現象が発生した。つまり、7対1看護体制を必要としない病床でも、看護師を雇って7対1看護体制を維持できれば、見せかけの「急性期病院」として、診療報酬の制度上、莫大な収入を確保出来たのである。国立病院機構病院においても、「なんちゃって急性期病棟」体制を取得し、一時的に経営改善(?)した病院があるが、現在は、却って「仇となっている」事実もある。同政策のために医療費が増大したために、医療費を削減すべく、地域医療構想の名の下に「なんちゃって急性期病院」の排除を計画した、というのが、地域医療構想の本当の目的と考えられる。

5.何故、地域医療構想に拘るのか


国は、「過剰になった急性期病院を減らしたい」のである。施設基準取得の難易度を上げれば、それなりに、相当の批判が予期される。急性期病院の乱立という原因を作ったのは、厚労省自身の施策であることを、自身が一番理解しているからだ。そこで、地域医療構想により都道府県が主体となって各病院が自主的に転換するように仕向けたというのが実態であるが、ほとんど進捗しない。今年の6月、厚労省は「病院・診療所の都道府県届出病床機能報告2017年度データ(高度急性期・急性期病院の21265病棟の、がん・脳卒中・心筋梗塞治療や救急医療等5項目)を分析したが、3014病棟(14.2%)は全項目該当なし、または実績データの報告がなかった。急性期病床は以前から「過剰」と指摘されており、医療費の無駄につながることから、厚労省は手術件数など数値基準を近く定める方針である。基準に当てはまらない病院には病床削減や他の機能への転換を促す」と発表した。正に、『大本営発表』である。制度を作った厚労省の責任を問わず、同制度を採択した病院を悪者に仕立てて、病床削減と転換の責任は、国のguardian (守護者)である都道府県に丸投げした形が、地域医療構想の実態である。かかる意味で、地域医療構想に『正義』は無い。

独立行政法人国立病院機構福山医療センター院長岩垣博己・中島正勝
昭和55年3月岡山大学医学部卒後第一外科入局、同年7月岡山済生会病院出向、同年11月から3ケ月間、タイ国カンボジア難民サケオキャンプに派遣(JICA)。昭和60年8月第一外科に帰局、平成3年11月第一外科助手、同年11月から2ケ月間、スーダン国ハルツーム市イブンシーナ病院に医療技術協力派遣(厚生省)。平成11年4月第一外科医局長、同年7月第一外科専任講師、平成19年3月岡山大学退職、同年4月独立行政法人国立病院機構福山医療センター副院長、平成25年4月院長昇任(現在に至る)。
昭和55年3月岡山大学医学部卒後第一外科入局、同年7月岡山済生会病院出向、同年11月から3ケ月間、タイ国カンボジア難民サケオキャンプに派遣(JICA)。昭和60年8月第一外科に帰局、平成3年11月第一外科助手、同年11月から2ケ月間、スーダン国ハルツーム市イブンシーナ病院に医療技術協力派遣(厚生省)。平成11年4月第一外科医局長、同年7月第一外科専任講師、平成19年3月岡山大学退職、同年4月独立行政法人国立病院機構福山医療センター副院長、平成25年4月院長昇任(現在に至る)。
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