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進化論は生物界のみならず社会の変化を解き明かす鍵である

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進化論は1859年、ダーウィンによる「種の起源」が発表されて以降、自然界の現象を読み解く大きな理論として登場した。進化論は、19世紀当時の天地創造論(神が宇宙を初めとしてすべての生き物を創造したこと。特に神による人間の創造)を打ち破るべく著されたのである。その為に、宗教界からの大きな反発を招くことになった。しかし、現代において進化論は生物界のみならず、社会の変化を解き明かす理論として注目を浴びている。

社会の変化を起こすために、一定の知的デザインによる経済、文化のよりよい姿を求めて考えられた社会改革は、マルクス共産主義理論を待つまでもなく、それを政策として実施すると失敗に終わる場合が多い。また、マルクスの共産主義理論とは正反対に位置づけられる新自由主義政策も、現状から見る限り失敗に終わりつつあることは周知の事だろう。

知的デザインを基にした設計とは異なり、進化は目標なしの自然淘汰、適者生存の法則に沿って行われる。進化がどの様な方向に向かうのかは誰にも分からない。一つの種は、子供の数において、指数関数的な増加を示すはずだが(生まれる子供の数は親よりもはるかに多い)外的要因によって、一定量に留まるか、増加するか、減少するかを決められるのである。外的要因とは、自然環境のみを意味するのでなく、種同士の競合や相互の干渉を意味している。現状では、それぞれの種は相互の微妙な関係のもとに、一定数の個体を維持する(数が増えもせず減りもせず)ことを保っているが、種によると減少の経過をたどるものもあり、増加しているものもある。例えば、近年の日本近海での漁獲量の減少は、日本漁船の乱獲、及び、近隣諸国(韓国や中国)の漁獲量増加と違法操業などが原因と考えられるが、魚の増加量よりも少しだけ漁獲量が上回っただけで、大幅な魚資源の減少につながる結果が明らかになり、反対に、漁獲量の規制を一定程度行うだけで、魚資源の回復が見られることも明らかとなっている。これらは自然環境ではなくて、種同士(人間と魚)の競合や相互干渉の一種である。

進化論によると、種の進化はその種の些細な違い(DNAの些細な違い)に端を発して、少しずつ形態を変化させていくのである。自然淘汰が起こるためには、形態の「わずかな」違いが年月を経るごとに、大きな相違へと変化することが基本となっていて、一定の時期に、突然変異的な大きな変化が起こり、その結果、種が変化するのではないことも強調されている。

従って、進化論を社会に応用させるためには、「保守的」な立場を取る必要がある。「保守的」な立場とは、理論を絶対視せず、誰に対しても(自分に対しても)懐疑的な立場を取り、慎重に事を進める態度を指している。同時に、進化論を応用した保守的態度とは、制度を守ることではなく、小さな変化を「常に」起こし、失敗であれば素早く訂正する態度を指している。特に国単位の制度では尚更だ。つまり、現在と過去の状態が未来を規定するのであって、ある設計図が未来を規定するのではないことなのである。

ダーウィンが「種の起源」の中で最も強調したのは、斬進的な変化である。突然変異というような変化でなく、ごくわずかな変化が次第に拡大して生物の変化を促すのと同様に、社会も一定の変化が常に発生するが、その変化は生息環境が良くなるような変化になるとは限らない。ある場合には、生息環境はかえって悪くなり、その社会は「絶滅」を経験するかもしれないのだ。進化はつねにその種に対して良いように働くわけではなく、中立的に働くことになるが、その結果として他の種から受ける干渉に対して、変化が優位であれば、その変化は残り、当該種にとっては大きな力となる。反対に、変化が他の種からの干渉によって弱点となれば、絶滅への階段を下ることになるのだ。社会においても同様である。

驚くべきことに、ある調査によるとアメリカでは現在でも進化論を採用せず、世界は神が創造したことを信じている人が、47%もいることが分かっている。一定のデザインで誰かが世界を作ったか、あるいは、進化論的に世界は作られたのか、その考えの相違はいろいろな場面で現れてくる。世界を神が創造したことを信じている場合は、超保守的な考えがはびこり、世界を変えるとすれば、一定の知的デザインのもとに大きく変えるべきであると考えるだろう。あるいは、そのデザインに基づく変化は超越的な考えを持っている人が行うべきであるとの考えに至るかもしれない。そして遂には、独裁者的な人物の登場を願うようになるかもしれないのだ。
その反対に進化論的に考える場合は、変化は少しずつ行われるべきであり、急激な変化を望まない。しかし、変化は常に起こるべきであること。そして、その変化は常に検証され、絶えず修正されるべきであるとの考えに至るだろう。

歴史的にみると、大きな変化や、逆に変化を拒否する考えは、大衆受けするのであるが、失敗する例が非常に多いことは確かだ。その反対に、進化論的な考えは、着実であるが世界の発展に貢献するだろう。国民全体が進化論的な考えを理解し、それによって、民主主義を発展させることが必要なのではないか。 

社会福祉法人敬友会 理事長、医学博士橋本 俊明
1973年岡山大学医学部卒業。社会福祉法人敬友会 理事長(高齢者住宅研究所 理事長)、特定医療法人自由会 理事長。一般財団法人橋本財団 理事長。2016年6月まで㈱メッセージ(現 ㈱SOMPOケア)代表取締役。
専門は、高齢者の住まい、高齢者ケア、老年医療問題など。その他、独自の視点で幅広く社会問題を探る。
1973年岡山大学医学部卒業。社会福祉法人敬友会 理事長(高齢者住宅研究所 理事長)、特定医療法人自由会 理事長。一般財団法人橋本財団 理事長。2016年6月まで㈱メッセージ(現 ㈱SOMPOケア)代表取締役。
専門は、高齢者の住まい、高齢者ケア、老年医療問題など。その他、独自の視点で幅広く社会問題を探る。
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