「神は細部に宿る」この言葉は、ドイツのモダニズム建築家ミース・ファンデル・ローエによって広まった。その意味は、細かくて小さい所にこそ、大切な美しいものがあるので、小さい箇所をおろそかにしてはいけないというものである。同様に、竹中平蔵氏は、「戦略は細部に宿る」という言葉をしばしば使っている。意味は、大きな戦略でも細かいところから成立するのだ。先に大きなところから考えると、戦略が成立しないし、実行できない、ことを表している。
新しいことを行ったり、現状を改善するなどの場合、その始まりは、どこから始めるのが適切だろうか。一般的に言われていることをそのまま戦略にすると、例えば、IT化が必要だ、女性の登用をどうするか、ROE(Return On Equity-自己資本利益率)の改善はどの様にするか、などが述べられるとする。しかし組織全体についての改善策は、多分失敗するだろう。同様に、業績が悪いので、全体的な業績改善が組織全体に必要であることから、支出の縮小をめざし、経費の節約を徹底することなどの改善策を立てることも失敗するだろう。
実は、「神は細部に宿る」ので、改善策は細部からの発想を必要とし、改善の種は細部にあることを理解すべきである。戦略の種は、小さな現実にあるのだ。小さいけれども現実に行われていることか、あるいは、行うことが出来ることを基礎としなければならない。生産性の向上が必要であることは収益の改善に対して誰でも同意する事だが、具体的方法には思い至らない。せいぜい事務作業の効率化を一生懸命考えて、わずかに作業時間が短縮する程度の事だろう。思い付くままに色々な提案がなされるが、多くの場合現実に行われていることを基礎としない限り、失敗に終わるはずである。
例えば、介護時間の短縮を考える場合、ITの導入によってこれを行うと考えることは、細部からの発想ではない。神は細部に宿るとすれば、介護時間の中で大きな比重を占める排せつ介助の効率化を考えなければならない。その場合、現実に行われている介護において「排泄介助」はどの程度の時間が必要か?についての疑問を考え、まず、現実にそれぞれの人の「排泄介助」はどの様に行われているかを詳細に見ることが必要である。
これと反対の考えは、「排泄介助」は「この様にすべきである」との考えだ。「すべき」は一般的な考えであり、必ずしもそれがある個人にとって適切であるとの確証はないのである。現実を観察することによって、「ある人」はどの程度の排泄介助時間が必要なのかを現象的に見極める必要がある。さらに、別の「ある人」は、どの程度の排泄介助時間が必要か、さらに・・・・と続いていくのである。10人ぐらいの人について、現象的に排泄介助時間を観察すれば、その観察から「一般的」排泄介助時間は・・・であるとの認識が生まれるのだ。この手順を自分で考え、個別に変更するともっと良くなる、と考えていくと、小さな改善を行うことが出来る。小さな改善は、それが集まると大きな戦略の変更となるのである。この場合、二つの要素があることを理解しなければならない。一つは、現実に行われていることについての現象的知見、もう一つは普遍的(一般的な問題として)に考えることである。どちらが欠けても、戦略は成り立たない。
多くの場合、「建て前と本音の食い違い」は、現実に行われていることを無視し、一般的な思考を目指すことから始まる。反対に現実で行われていることのみを考えると、一般化が出来ず、大きな改善を行うことが出来ない。より良い業務を行い、常に改善を目指す場合、このヒントは細部(のみ)にあり、細部に対して、現実に行われていることを十分観察し、さらにそれを改善するために、知識や経験を生かすことが必要となるのである。これらの細部にわたる改善体験を積み重ねると、「一般的」見識が生まれる。「一般的」見識は、細部の現実から発しているので、簡単に崩すことが出来ない。反対に、一度「一般的」見識を持ったからといって、それらは所詮、自分自身の経験からのみ生まれたものであるとの認識を持ち、それを否定し、さらに良い行動を目指す必要もあるのだ。
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