現地に根付いて仕事をするということ

慎泰俊です。前回はお仕事の話とトレーニングについて書きましたが、今回は現地に根付いて仕事をすることについて書きたいと思います。

 

私の仕事は現地の普通の人々に対して、金融サービスを提供することです。私自身、お客様から頂く利息や手数料で生活をしているわけですから、可能な限り現地の人々と同じように暮らしたいと思っています。

 

今もスリランカでは現地法人社長の家にホームステイをしています。最近はセキュリティ上の理由で難しくなってしまったのですが、事業開始当初は、カンボジアでも外国人がいないエリアのアパートに寝泊まりし、ミャンマーでは事務所の上にある小屋で宿泊をしていました。現地の言葉は300単語まで覚えることや、宴会芸として現地の誰もが知っている歌を覚えるようにしています。また、ある国で仕事をする最初の時期には、マイクロファイナンスのお客様の家に泊めて頂くようにもしていました。これらは全て非常に忘れがたい経験です。

 

 

 

 

こうやって暮らしていると、様々なことを地に足をつけて理解できるようになります。現地の人たちの金銭感覚や流行っていること(お菓子から人気の歌なども含め)がよく分かるのです。これは、従業員の心を掴むためにも、お客様に合ったサービスを提供するためにも重要なことなのだと思っています。B2Cの仕事をするのに現地首都や経済首都の外国人エリアにしか居ないのは、広尾・六本木・西麻布の三角地帯の中だけで生活をして、日本で商売をするようなもののように思います。

 

また、現地では日本人にはまず接しません。日本に行けば日本人と会えるのですから、わざわざ海外に行ってまで日本人に会う理由が思いつかないのです。数人の例外を除いて、会う人は現地の人や現地で働いている外国人たちです。そうすると、また手に入る情報の質が変わってきます。各国の政治経済の状況がかなり高い解像度で見えるようになってくるので、今後どういった手を打つべきかが見えてきます。英語ができないために、日本人コミュニティで生活をしている人々が多く居ますが、非常にもったいないと個人的には思います。また、単純に友人が世界中に出来ることは、人生をより豊かなものにしてくれます。

 


そういった現世ご利益的なことだけではなく、途上国にせっかく住むのですし、人生一度きりなのですから、二度とできないような現地の生活を楽しむのが良いのではないかと私は思うのです。髪をシャンプーしていると突然に水が止まったり、夜中にPCを開いて作業をしていたら周りが虫だらけになったり、夜に電気コンロでラーメンを作っていたら停電になったり、ひったくりに遭ったり‥。
このように現地に根付いた生活をしていたら色々なことに直面しますが、それでも私は現地での生活を楽しみたいと思っています。日本はあまりにも清潔で、全ての物に恵まれてしまっていますが、人間が住んでいる所であれば、同じ人間として暮らすことはできるはずなのです。

五常・アンド・カンパニー株式会社 代表取締役社長慎 泰俊
1981年東京生まれ。 朝鮮大学校政治経済学部法律学科卒業。早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。モルガン・スタンレー・キャピタル、ユニゾン・キャピタルを経て、2014年7月に五常・アンド・カンパニー設立。仕事の傍ら、2007年にNPO法人Living in Peaceを設立し、代表理事を務める。著書に「働きながら、社会を変える。~ビジネスパーソン『子どもの貧困』に 挑む」(英治出版)、「ソーシャルファイナンス革命 ~世界を変えるお金の集め方」(技術評論社)など。
1981年東京生まれ。 朝鮮大学校政治経済学部法律学科卒業。早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。モルガン・スタンレー・キャピタル、ユニゾン・キャピタルを経て、2014年7月に五常・アンド・カンパニー設立。仕事の傍ら、2007年にNPO法人Living in Peaceを設立し、代表理事を務める。著書に「働きながら、社会を変える。~ビジネスパーソン『子どもの貧困』に 挑む」(英治出版)、「ソーシャルファイナンス革命 ~世界を変えるお金の集め方」(技術評論社)など。
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