近年の日本の特徴は、少子高齢化であり、それに伴い、いやそれとは関係ないかも知れないが、経済の停滞状態が続いていることです。高齢化によって起こる社会保障費の大幅な上昇も、日本経済を苦しめています。また、労働力不足が顕著となり、やっと政府もいろいろな社会政策を行わざるを得なくなってきました。自民党政府があたかも社会民主主義政府のような政策を打ち出しているのです。そこで、過ぎ去った20年間(1995年から2015年まで)の人口動態を明らかにすることによって、今後どのような政策が必要かを見てみようと思います。(数値が多くなることをご容赦願います)
1995年の人口は、1億2543万人で2015年には、1億2520万人です。意外に、減少はほとんどありません(23万人の減少)2005年が人口のピークです。この中で最も経済的に重要な、主に労働に従事する15歳~64歳までの人口を、生産年齢人口と呼んでいますが、1995年から2015年の生産年齢人口は、総人口が減少していないにもかかわらず、8704万人から7773万人へと、なんと、931万人も減少しているのです。年平均でいうと、47万人、約50万人も毎年平均的に減っているのです。生産年齢人口が急激に減少しているのに、近年になるまで人手不足感がなかったのは不思議です。その理由は、次の通りです。
1995年から2015年までの生産年齢人口の大幅減にもかかわらず、労働力人口(働いている人たちと、働きたいが失業している人の合計)は、あまり減少していません。6455万人から6376万人と80万人程度の減少に留まっているのです。減少を食い止めたのは、女性と高齢者です。この間で、生産年齢の労働力率(人口のうちどの程度仕事についているかの比率)は、約70%なので、生産年齢人口の減少からは、651万人もの労働力減少が生じているはずだったのです。確かに、この期間で、男性の労働力は300万人以上減少していますが(図1)、女性の労働力はほとんど変わっていません(図1)。つまり、女性の場合は人口が減少しても、労働力率(人口のうちどの程度仕事についているかの比率)が高まったため、変化がなかったのです。また、同時に高齢者の労働力が300万人増加して男性の不足の穴を埋めているのです(図1)。図2のグラフで見るように、女性のこの間の労働力率(人口のうちどの程度仕事についているかの比率)は、57%から64%へと大幅に上昇し、20年間の労働力不足を埋めたのです。結論から言えば、図3の様に、女性と高齢者が生産年齢人口の減少から生じる労働力を補っていることが、よく分かります。
図1;総務省統計局資料 男性の労働者数は300万人減少、女性は変わらず、高齢者が300万人足らず増加
図2;総務省統計局資料 男性の労働力率は変わらず、女性の労働力率が56%から64%へと上昇
図3;総務省統計局資料 生産年齢人口減少から推察される労働力減少は650万人、男性の寄与はないが、女性の寄与と、高齢者の寄与はそれぞれ300万人足らず
今後もさらに生産年齢人口が減少していくにつれて、男性の労働力人口の減少は続くでしょう。しかし、それを埋めるだけの女性の労働力率(人口のうちどの程度仕事についているかの比率)の上昇には限度があります。日本は先進国の中での女性の労働力率が低かったために、女性の労働力率の上昇で、生産年齢人口の減少を補充してきたのですが、他の国での女性の労働力率は、アメリカ67%、カナダ74%、イギリス72%、ドイツ73%、フランス67%なので、現在(2017年)日本での65%程度の労働力率は、すでに先進国の低位に追いついているのです。さらに、労働力率(人口のうちどの程度仕事に就いているかの比率)の上昇があるかどうかは不明ですが、1995年~2015年のような上昇は実現できないでしょう。また、高齢者の労働参加についての評価は次のようになります。
図4;総務省統計局資料 65歳以上の高齢者の労働力増加は、高齢者数の増加によるものであり、労働力率はかえって低下している
図4の様に、高齢者の労働力率(人口のうちどの程度仕事に就いているかの比率)は、むしろ減少しています。一般に言われるような、高齢者の働く比率が高くなっているのではなく、高齢者数が増加しているために、高齢者の労働力人口が増えているのです。そこで、今後の高齢者数の推移を見ると次のようになります。
図5;人口問題研究所資料 1995年から2015年までの高齢者数の急速な増加、2015年から2025年までの高齢者数の増加、2025年以降は高齢者数の増加は少ない
2015年までは、高齢者の数が急速に増加しています。これが「急速に進む高齢化」ですが、2025年までは、減速しながらも、高齢者数の増加は続きますが、それ以降は、停滞あるいは逆に減少するのです。高齢者の労働力率の増加が余り見られない過去の状態から見ると、今後の高齢者の労働力人口の増加は限定的になるでしょう。従って、今後は以前に増して、労働力人口の不足が明らかになっていく可能性が強いと思われます。
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