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ケアマネジメントをもとにした介護は成立するのか

「事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ!」
どこかで聞いたことがあるフレーズです。

 

介護サービスにおいても、このような言葉の裏側にある同じような思いを、介護職員が訴えてくることがあります。「介護計画と実態は違う、介護計画と実態が違うことは普通のこと、人間だから計画通りにはいかない、障害を持った高齢者だから予測は立たない、高齢者の能力は皆同じ、誰が観察しても大きな差は無い、援助は一律で充分」という本音が聞こえてきます。これこそがケアプラン(介護計画)が建前的になっている理由でしょう。アセスメント(評価)無しの一律援助の原因でしょう。では、ケアマネジメントをもとにした個別援助は成立するのでしょうか。

 

ケアマネジメントとは、一言でいうと「調整」ではないかと考えます。
介護サービスを利用するご本人の身体状況や生活の様子を把握し、ご本人が望む生活を送れるように様々な介護サービスを組み合わせてケアプランを作成します。そのプランに従ってサービスが提供できるよう「事業者とご本人との調整」を行い、実際にサービスが提供された後の状況を確認し、再調整をするという一連の業務を一般的には指すのです。

しかしながら、ケアマネジメントは利用者本人の生活全般に関わるため、その範囲は広大であり、また調整が必要な要素が多岐にわたるため、ケアマネジャーの能力によって(または倫理感によって)介護計画が大幅に変わってきます。

 

今まで介護の現場で行われたのは、一律援助と呼ばれる方法です。一律援助とは、おむつ交換を施設の端の部屋から一定時間内に順番に行うような援助方法です。時間通り行われると良いとされます。これと異なり個別援助とは、おむつ交換、移動介助、食事介助など援助の種類と関係なく、その人がその時間に必要と思われる援助を「個別」に行う方法です。一律援助では、あらかじめ援助方法が決まっているので、調整の必要はありません。従って、会議室で作られたケアプランは意味が無くなるのです。

 

また、一律援助での弊害は、「介護者が、ご本人の望む生活の邪魔をしている」という事実です。また、「ご本人の意思を尊重しない」と言う弊害もあります。

 

例えば次のような事例があります。

A様 85歳男性 要介護2 パーキンソン病 日常生活自立度(寝たきり度)A2
介護計画:起床援助:6時 一部援助
A様への起床援助に訪室。
A様「手足がうまく動かないから着替えに1時間かかる。なので5時に起きて1時間かけて着替えるの。自分で着替えたいから」・・・・・・・・

当初介護者は、A様はうまく着替えが出来ないので、6時ごろに訪室し、着替えを手伝うプランを作りました。A様は、この訪室を非常に嫌がられたのです。プランは変更され、ケアマネジメントをもとにした介護=個別援助では、5時30分ごろ(着替えを行っているだろうと思われる時間)に、訪室して様子を見ることになりました。A様がこの様な訪室も嫌がられる場合は、着替えが終わったと思われる時間に(6時ごろ)着替えを確認する事も選択肢に入ります。

 

ケアマネジメントに必要となることは、本人の情報=アセスメント(評価)その情報をもとに実行=ケアプラン(介護計画)継続的な対応=モニタリングを行う必要があるのですが、その場合、ケアマネジメントに大切なことは、A様の言動をもとに「本人に決定してもらうこと」を優先します。これがなければケアマネジメントが実行されていない一律援助と変わりはありません。従って、ご本人が出来ると言われた場合は、手を出さず、実行した状態によって、どの様なケアを行うか(援助するかどうか)を決めることになります。

イギリスの意思決定能力法は、意思決定能力が喪失しているという確固たる証拠がない限り、意思決定能力があると推定し「意思決定能力存在の推定の原則」を重んじています。
本人の現有能力を可能な限り引き出し、本人をよく知る周囲の努力によって、本人が自己決定できる状態を最大限引き出し、判断能力が有るという結論が導き出せるように支援を行う考え方です。

 

ケアマネジメントをもとにした介護を成立させるための条件としては、<本人に決定してもらうこと>を大切にし、個別援助が実行できる環境整備が必要ということです。単なる感情に任せたやり方や、原因を探らない対応などの一律介助から脱出し、意識的に覚悟を持って継続的にケアマネジメントを行う必要があります。その条件が揃えばケアマネジメントをもとにした介護は成立するのです。

ケアマネ-ジャー・社会福祉士かえる ちから
特定施設介護職員から在宅サービスエリア責任者、介護法人執行役員等などを歴任。
介護現場のリアルな現状とその考え方を発信するため、「かえる ちから」のペンネームで本WEBマガジンに寄稿。
特定施設介護職員から在宅サービスエリア責任者、介護法人執行役員等などを歴任。
介護現場のリアルな現状とその考え方を発信するため、「かえる ちから」のペンネームで本WEBマガジンに寄稿。

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