医療介護関係者の間では、「地域包括ケア」に関する講演会は盛んであるが、一般庶民にとって、「地域包括ケアシステム」とは何かと問われても答えることが出来ないだろう。「地域包括ケアシステム」について厚労省が出している解説は以下のようなもの(図1)であるが、この中での要点は、「重度の要介護状態になっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることが出来るようにすること」である。しかし、この考えは、1980年代から厚労省が打ち出した、各種の政策(ゴールドプラン=高齢者保健福祉推進10ヵ年戦略など)とどこが違うのかと訊かれると困ってしまう。高齢者ケアの目標として、「重度の要介護状態になっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることが出来るようにすること」は当然すぎることであろうし、医療と介護が相互に連携することも、今までと同じとすれば、単なる言葉の違いなのだろうか。
そんなことはなく、「地域包括ケアシステム」と大きく打ち出すからには、今までと異なる考えがあるはずだ。しかし、内容を見ると一般国民には、違いは分からない。その理由は、介護施設が相変わらずこの中に含まれるからである。
最初に示された、地域包括ケアシステムの概念図(現在でも使われている)は、以下のようなものだ。住まいが中心に描かれているが、その右側には介護施設も存在し、その為に、老人ホームを含めた「地域包括ケアシステム」と見られるのだ。
(図1)
次いで打ち出された考え方は、次のようなものである。
この図は、先のものよりもずっと分かりやすい。つまり「本人・家族の選択と心構え」から導かれた「すまいとすまい方」によって、どこに住むかを決定し、その上で生活支援サービス(介護や医療)を受けるのだ。この考えでは、介護施設は地域包括ケアシステムから排除されるだろう。つまり、「地域包括ケアシステムの失敗」が施設への入居につながるとの考えを打つ出す必要があるのだ。
地域とは施設ではないことが重要だ。施設の定義は、アービング・ゴッフマン氏(米国 社会学者/1922~1982)が述べているように、第一に、生活の全ての局面が、同じ場所で同じ権威のもとに行われること。第二に、全員が同じように扱われ、一緒に同じことをするように求められること。第三に、日常生活の全ての行動が厳しくスケジュール管理されていること。最後に、正式な公式の目標を達成するためにと称された単一のプランのために、種々の活動が盛り込まれていること等である。この基準によると、介護福祉施設、介護保険施設、介護付き有料老人ホーム、グループホーム、サービス付き高齢者向け住宅のほとんどが該当する。
従って、「地域包括ケア」とは、この様な施設に高齢者を送らずに、あくまでも自宅で生活することを目指すものでなければならない。しかし、これは施設をすべて否定するものではないことに注意をして頂きたい。どの様なシステムにも不完全性はあるので、その不完全性(失敗)を補うようなバックアップする仕組みは必要なのである。
この様に述べると、そうは言っても「自宅で介護することはストレスだ」との声が聞こえてくる。つまり、ストレスの内容を明らかにする必要があるのだ。人間が経験する「ストレス」は、すべての行動に伴うので(ゲームやテレビには無いかも知れない)何がストレスかが問題だ。単に夫と自宅でずっと暮らすことがストレスなら、介護にはあまり関係が無いだろうし、介護行為自体がストレスなら、公的に作業を援助する仕組みが必要だ。夜間寝られないことがストレスなのであれば、例えば20時からのコールは、すべて介護事業所で受けることも必要である。しかし、多くの場合は、この様な分析(タスク分析と言う)を行わないで、「自宅で介護することはストレスだ」との訴えをそのまま採用し、施設へ高齢者を移動させるか、あるいは、家族に大きな「ストレス」を負わせるという二極分化になっている。
では、誰がこの様なタスク分析を行うのか? 当然それはケアマネジャーの仕事になるのだ。
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