

ジョン・メイナード・ケインズの代表的著書である、『雇用・利子および貨幣の一般理論』には、次のような文章がある。「投機による不安定性のほかにも、・・・・・・おのずと湧きあがる楽観に左右されるという事実に起因する不安定がある。・・・その決意のおそらく大部分は、「アニマルスピリッツ」と呼ばれる不活動よりは活動に駆り立てる人間本来の衝動の結果として行われる行動であって、数量化された利益に、数量化された確率を掛けた加重平均の結果として行われるものではない。・・・企業活動が将来利益の正確な計算に基づくものでないのは、南極探検の場合と大差ない。こうして、もし血気が衰え、人間本来の楽観が萎えしぼんで、数学的期待に頼るほか、われわれに途がないとしたら、企業活動は色あせ、やがて死滅してしまうだろう。」
「南極探検の場合と大差ない」といえば、1914年南極探検のエンデュアランス号船長、アーネスト・シャクルトンの広告からも、「アニマルスピリッツ」の一端が見て取れる。広告は以下のようだ。
MEN WANTED for Hazardous Journey.
Small wages, bitter cold, long months of complete darkness, constant danger,
safe return doubtful.Honor and recognition in case of success.
「危険な航海に従事する男を募集する。
賃金はわずか。極寒。長期間の暗闇。
危険は常に伴い、生還は保証されない。
成功した場合のみ、名誉と称賛が与えられる。」
この広告がロンドンの新聞に掲載されたとき、数千人規模の応募があったと伝えられている。実際に選ばれたのはわずか 27名。まさしく「アニマルスピリッツ」である。
日本でも、この「アニマルスピリッツ」は見られる。「ソニー」「ホンダ」から「ユニクロ」「ソフトバンク」など、多くの企業は、その原動力の中心が、客観的な指標(つまりデータで示される優位性)だけではなく、湧き上がるような楽観性を伴った「アニマルスピリッツ」によってなされてきた。近年この傾向が廃れてきている可能性がある。世の中の高齢化、リスクを取らない態度などによって「アニマルスピリッツ」の低下傾向は強くなっているようだ。シャクルトンのような広告が出た場合、日本で応募する人はどの程度だろうか。
しかし、そうは言っても、現代の若者にアニマルスピリッツを芽生えさせる環境も必要だ。それは、幼少時の教育にも大いに影響されるが、実際に事業を起こし、それを発展させ努力して大きくすること、そして、失敗しても非難されずに再び挑戦できる環境も必要だ。日本でのこのようなベンチャー企業への支援は、単にお金を配るだけでもダメなのだ。具体的な起業支援と、再起の支援とが制度化されている必要がある。日本では、起業に失敗すると破産し、再び立ち上がることが出来ない場合も多い。そして、倒産は悪いもので、政府が倒産を回避するべく支援するとの考えが多い。しかし、「起業」は、もともとチャレンジングなものであり、失敗、成功を繰り返すことに意義がある。起業代謝率(*1)を見ると日本の特徴を見ることが出来る。企業代謝率は、労働生産性、イノベーション、賃金上昇、スタートアップ成長と大きな関係がある。企業代謝率の国別の大きさは次の通りだ。
企業代謝率は、欧米の先進国に比べ、半数以下となっている。また企業の5年後生存率は、日本では80%以上であるが、欧米では半数以上が姿を消すと言う。まさに、失敗は問題ではないのだ。
(*1)企業代謝率







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