

インフレと円安の相互効果によって、国の財政は破綻を免れる。日本の潜在成長率はすでに1%を下回っており、その主因は人口減少とアニマルスピリッツの低下にある。この2つは、どのような政権が改善しようとしても変えることが困難である。人口減少は世界的な問題であり、日本がその先端を行っているし、アニマルスピリッツの低下は、人口の高齢化とともに、内向きの危険を避ける近年の傾向がその拍車をかけている。この30年間の努力にも関わらず、経済の低迷が短期の政策によって改善しないことが明白な以上、国民の生活が、実質賃金の低下(インフレよりも賃金の上昇が少ない状態)によって苦しくなっても、政府がそれを解決できない状態は続く。潜在成長率が低いことをまず認めなければならない。そのうえで、少しでも実質賃金を引き上げる方法を見つけるべきだ。それには、インフレの抑制と、労働分配率の向上とがある。しかし政府はインフレを放置し(あるいは助長し)、形ばかりの補助金を給付して「インフレ対策」と言っている。最近では、財源の目当てがないのに、消費税を軽減し、支持を得ようとしている。なぜこのような、インフレを助長する政策がまかり通るかといえば、現在のインフレ状態が政府にとって心地良いからである。
インフレを解消する正攻法は、政策金利の引き上げである。日本の政策金利は0.75%であり、引き上げる余地が大きい。政策金利を引き上げることによって、円安も是正され、インフレも解消する。ただし、危険なのは、日本経済が非常に弱い場合、政策金利を上げることによって経済が大きく落ち込む危険があることだ。潜在成長率が低い国では、高金利政策を取ると、経済が低迷する危険はある。その点からみると、円安を基礎とする穏やかなインフレ政策は、供給側にも需要側にもさして困難な状態を生じさせずに、時が経過していく可能性が高い。企業業績は持続的に円安のため上昇する。株高も同時に起こるかもしれない(この部分は不透明)。過去の実績から見て政権に都合の良いインフレ率は3%程度となるようだ。この場合、実質給与(給与上昇率からインフレ率を引いたもの)は低下する。円安とインフレはお互いに連動する。また、国債の発行高は増加するが、インフレによって、国債残高の対GDP比(国債残高/名目GDP)は低下する。なぜなら、国債残高が変わらなく、分母の名目GDPは経済成長がない場合でも、インフレに伴って増加する(インフレ率3%なら3%程度増加)ので、国債残高の対GDP比(国債残高/名目GDP)は低下するのである。実際に統計上もこのようなことが起こっている。
図1:債務の対GDP費の推移(国債残高/名目GDP)
財務省統計
インフレ税と言われるように、歴代の支配政権は、国家債務の上昇をいずれもインフレによって解消した。第二次大戦後のアメリカ、イギリス、フランス、そして日本。その被害を被ったのは、すべて国民である。債務の対GDP比を用いる手法は、インフレを利用した見かけ上の改善にすぎず、本質的には国民負担の先送りである。
結局のところ、インフレにかかわらず、成長の成果が労働者に賃金として回らないといけないが、実際はそうなっていない。
図2:過去30年間の実質GDPと実質賃金
世界経済のネタ帳より筆者作成
30年で実質GDPの増加は19%と僅かだが、普通は、増加した実質GDPが、労働者の賃金として回ってくるはずだ。しかし、労働者に賃金は回らず、企業の蓄えや海外投資、そして国家の無駄遣いに回っている。インフレによる名目GDPの増加を企業や政府が都合よく使っているのだ。







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