

移民労働者が数十万人の単位で来日するに従って、「日本文化を守れ」という声が当然ながら上がっている。少子化の状態が続けば、日本人の労働力は少なくなり、近い将来移民の比率は10%を上回る。現在の日本の他文化に対する受け入れ態勢は、頼りないものだ。「同化主義」=「日本に来たのだから日本の習慣に倣え」、という考えがある一方で、「多文化主義」=「それぞれの出身国文化を尊重するべきだ」、との考えもある。ただし、「多文化主義」の中にも、日本文化の中でのマイノリティとして、それぞれの国の文化は尊重するが、日本文化の変容は認めないと考える人も多い。しかし、移民比率が10%を超えると、もはやマイノリティとして無視するような位置づけは出来なくなり、日本文化への影響を考えないといけない。
そこで、日本と同じような古い文化を持ちながら、2000年以降、移民を積極的に受け入れてきたスペインでは、どのような政策を取っているかが興味を引く。スペインでは、2000年時点で外国人出生者は約3%(現在の日本とほぼ同じ)だったが、25年後の現在は15%を超え、欧州でも急激な増加を経験した国の一つである。
スペインは、地域ごとの強いアイデンティティ(カタルーニャ、バスク、アンダルシアなど)や、カトリック文化、家族中心主義など、伝統文化の根強い社会がある。一方で、2000年代以降の急速な移民流入により、多文化化が急速に進行した。文化的摩擦は存在するが、フランスやドイツに比べると文化の衝突度合いは少ない。理由は次の通りだ。
まずスペインは、8世紀にアラブのウマイヤ朝の支配を受け、800年間にわたりイスラムの影響が続いた。その結果、他の国に比べ宗教的寛容性が強い。これは日本も同様だ。また、高齢化に伴う人口減少への危機感が強くある。そのために、労働力補填として移民が必要とされ、「社会の担い手」として一定の受容が進んでいる。近年、日本も労働力不足の解消としての外国人労働者の存在は容認されつつある。スペインでは、特に介護、農業、観光業において、移民なしでは成り立たなくなっている。
しかし、文化的衝突がまったくないわけではない。不動産取得の問題、移民が社会保険にタダ乗りしていること、治安の悪化を政治問題とすることなど、日本と全く同じことが起きている。犯罪に関しては、実際の犯罪率との関係は限定的だが、極右政党(VOX)が「治安悪化=移民の増加」と関連づけて政治的争点化している。さらには、文化的な習慣として、ムスリム系移民との生活習慣の違い、ラテンアメリカ系移民との家族像や教育観の差異などが議論されることがある。ただし、これらは欧州全体の傾向と比べて比較的穏やかだ。
また、その他の大きな要因として、 言語の共通性(ラテンアメリカ移民が多い)、南米からの移民について、ラテン文化の類似性、地域共同体意識が強く、自治体レベルでの統合政策が成功している点などである。例えば、バルセロナやマドリードでは「多文化共生」を自治体が積極的に制度化している。言語の問題は、多くの国で移民の受け入れに対して大きな障害となっている。その点でスペインは優位性を持つ。
結果的に、スペインは文化的な衝突があるものの、他国より抑制されている。その理由は、言語・文化的親和性や移民受容の社会構造のおかげで、欧州内では比較的安定した多文化社会の形成に成功している国の一つと言えるだろう。言語の習得は、日本がスペインから学ぶべきことのうちで大きな問題となる。少なくとも日本政府は、言語の習得に対して予算を含め、大きな役割を果たすべきだろう。







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