Opinions第2回エッセイ募集「台湾有事で日本はどう動く?」受賞作品①

フリーライター 范沙織里(38歳)  

中国と台湾の関係が緊張の度を増すなか、「台湾有事」が現実味を帯びて語られるようになってきた。米中の対立が深まるなかで、仮に中国が武力による台湾統一に踏み切った場合、日本がその事態にどう関与すべきかは、単なる外交問題を超えた、国の在り方そのものを問う深い問いである。

私の考えは明快だ。日本は「関与しない」ことを前提にしつつ、「巻き込まれる可能性を最小限に抑える戦略的備え」を取るべきだ。感情論や歴史観ではなく、冷静な現実主義が求められる。

まず、台湾有事は日本の「隣国の紛争」であり、直接的な当事者ではない。もちろん、日本には台湾と深い経済的・人的つながりがあり、台湾海峡が封鎖されれば、エネルギーや物資の輸送に重大な影響が出る。しかし、それでも軍事的に介入すれば、日本自身が戦争当事国となるリスクが生じ、国民の生命と日常が危機にさらされる。

日米同盟を理由に、自動的に米軍とともに行動するべきだという声もあるが、これは慎重でなければならない。日米安保条約第5条の「日本の施政下にある領域の防衛」は、台湾にそのまま適用されない。また、米国の意図が台湾防衛にどれほど真剣かは、過去の曖昧戦略(Strategic Ambiguity)を見ても一枚岩とは言い難い。

むしろ、日本が優先すべきは「自国の防衛」だ。具体的には、沖縄・南西諸島の防衛体制を強化し、難民・避難民受け入れの準備を進め、情報戦やサイバー攻撃に備える体制を早急に整えるべきである。武力行使は最後の最後の選択肢であり、日本はその前にあらゆる外交的手段を尽くし、対話の場を維持し続ける役割を担うべきだ。

また、こうした危機においてこそ、国内の民主主義の強さが問われる。政府がどのような方針をとるにしても、国民に対する説明責任を果たし、開かれた議論を避けてはならない。緊急時に権限が集中することは避けがたいが、それが独裁的な方向に向かう危うさにも目を向けなければならない。

戦争は始めるのは簡単だが、終わらせるのは難しい。だからこそ、日本は「戦争を始めない」ための最前線に立つべきなのだ。声高に中国を非難したり、台湾を美化することではなく、誰の味方でもなく、誰の敵にもならないためにどう振る舞うかを、真剣に考える時期が来ている。

台湾有事に日本がどう動くか──それは、日本がどんな国でありたいか、そのビジョンの表れであるべきだ。私は、冷静で、知的で、平和を創るために働く国であってほしいと願う。

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