社会保障人口問題研究所の予測では、2070年まで年間の外国人人口増加を毎年16.4万人と設定している。しかし、現状での日本の外国人人口の増加は年間30万人から40万人に達している(図1)(図2)。
(図1)
(図2)
筆者作成
このペースで行くと、社会保障人口問題研究所の予測より早く、20年後、2045年頃に、日本の外国人人口は、現在の300万人あまりから1000万人に達する。この場合、日本での外国人の増加は、難民などの外国からの圧力によって引き起こされたものではなく、日本企業の要請によるものであることを理解する必要がある。従って、現在無策(現場単位での工夫しかない)の外国人労働者受け入れ体制を改め、国が調整すれば訪日外国人労働者の数はコントロールすることが可能なのである。
多くの外国人が日本社会に参加した場合、最も問題となるのは、来日外国人の周辺化の問題だ。外国人が同化または統合されて、日本社会に溶け込む場合には問題は少ないが(個人的な問題は残るが社会全体の問題は少ない)、周辺化、つまり外国人が日本社会に馴染めない状態は大きな社会問題が生じる。ドイツを始めヨーロッパ諸国での移民問題は、外国人の周辺化によるものである。しかし、大きく異なるのは、日本の場合は内からの要請によるものであり、ドイツなどヨーロッパの場合にはその多くはシリアなどからの難民の受け入れなど、外部からの圧力によって半強制されたものである。
周辺化が起きると、公的支援が乏しい状態では、エスニックコミュニティ、つまり同じ国の人たち同士のコミュニティが生まれる。健全な形態でのエスニックコミュニティは歓迎されるが、閉鎖的な周辺化によるものは問題となる。つまり、外国人労働者は言語が不自由な状態であり、習慣も違う日本に来た場合、労働や生活に大きな問題を抱える。その解決の場としてのエスニックコミュニティを作るのである。同じ言語で、ビザの更新、住宅を探すこと、各種の手続き、子どもの教育、病気や保健衛生の難しい問題を同じ国の同胞が解決してくれるのであれば、それは大いに歓迎される。つまり、日本政府あるいは地方政府が外国人労働者に対する支援を出し惜しみすればするほど、外国人労働者が日本に同化や統合されず、周辺化され、エスニックコミュニティの拡大を招くのである。
民族が異なるために、地域との交流が少なく、労働やサービスだけのために存在するエスニックコミュニティの状態は不健全であり、仕事以外でも日本人と交流することが多いのが望ましい。そのためには、日本が外国人労働者を引き続き必要とするなら、政府が率先して交流する意思を見せる必要がある。そのためには、まず政府の「移民施策は取らない」という態度を改め、積極的な移民統合政策に変換する必要がある。そして、移民の各種政策を一元的に管理すべく、「移民庁」あるいは「移民省」設置が望まれる。なぜなら、現在問題となっている厚生年金保険や医療保険の問題、労働環境の問題、子どもの教育問題、言語教育の問題などは、複数の官庁にまたがっていて、効果的な政策を早期に打ち出すことが難しいからである。
外国人労働者の数が、日本企業の要請で加速度的に増加している状態では、早期に公的サービスを充実させ、外国人労働者が狭い範囲での交流や物事の解決を図ることが無いように、公的支援を大きく増やすことが求められる。
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