今回の総選挙の結果について、一言で言えば「つまらない」結果だった。民主主義において大切な要素はいくつかあるが、その一つに政権交代がある。いくら政治家が官僚と癒着しても、当の政府が変わる可能性があれば、官僚は政治家との間に距離を置く。あとから交代した政権によって、その関係が暴かれる可能性があるからだ。政治家と官僚の関係は、政権交代があって初めて正常に運営されるのだ。従来、自民党内での交代が擬似政権交代と言われる時期もあったが、同じ政党内では、官僚との関係は改まらない。
また、それ以上に「変化」は日本全体に対して、ある種の活力や緊張感を与える。このような活力や緊張感を伴う、政治の透明化に政権交代は寄与するのだ。別に野党が政権を取ることを希望しているわけではないが、政権交代を促すという現在の小選挙区制度でも、あるいはコロナ対策への批判が強い状況にも関わらず、自民党があまり議席を減らさないで、「現状維持」に近い形になり、現状の政治勢力が続くことになった結果は、日本国民が「変化」を望まない、あるいは、「変化」を恐れていることがよくわかる。
今までの選挙と同じ様に、自民党に失政や不満があれば、野党に票が流れるが、不満が少し収まると、現状維持を期待するようだ。現状維持の力は、仕事や活動などすべてに対して、同じようなことを繰り返すことになる。多くの人は、同じ会社に継続して勤めることを希望する。そして政府もそれを支援している(雇用調整助成金など)。転職は、制度的に不利となる場合があることは分かるが、それでも、基本的には大きな不満がない限り、転職には後ろ向きだ。
各党の選挙公約も問題がある。どの党も、選挙目当ての公約はするが(多くの人が得になるような政策)、日本の将来のこと、そして議論を呼ぶことには後ろ向きである。具体的には、①国家の収入を確保するための税制をどのようにするかについて、また、②人口減少に伴い、外国人労働者(移民)の受け入れをどの程度するのか、あるいは、③エネルギー政策(原子力発電も含め)、地球温暖化に対して、どの範囲で行うのかについて、口を閉ざしている。これらは、社会の大きな「変化」を伴い、促すからだ。
税制について、バラマキ政策は行うが、財政健全化政策、つまり、入りの部分を増やすような政策は全く打ち出していない。バラマキに都合の良いMMT理論などに悪乗りしているだけだ。ただし、どの政策が正しいかは、今の所わからない。それならば、本来は各種の異なった政策が、異なる党によって語られるべきである。バラマキに対して批判的な日本人が多いのなら(ある程度の数は存在すると思われる)、財政赤字を放置するべきではない考えに沿った政策を進める党がいてもよい。しかし、この意見を代表するような党がないことは、バラマキをすれば、選挙に勝てる、つまり、大多数の国民が喜ぶと望んでいるからだろう。それほど国民は利益で釣ることができる、つまり舐められているのだ。
注意すべきは、経済対策と困窮者対策とは元々異なることである。経済対策は金利を下げ、量的緩和を行い、あるいは、補助金など財政支出によって、国民の需要を喚起することにより、「一時的」に経済を上向かせることが目的である。しかし、過去20年間以上、このような経済対策では日本経済は根本的好転をしていない。もはや経済対策は長期的な対策とはならないのだ。日本経済の「構造-変化を許容すること」が改善しない限り、「一時的」対策では効果が少ないのである。したがって、経済対策は過去のバラマキ型であってもいっときの景気回復にはなるが、長期の景気回復にはつながらない。むしろ泥沼に入る可能性が大きい。
一方で困窮者対策は政府の責任である。しかし、だれが本当に困っていて、生活に支障をきたしているのかわからないから、すべての人に給付をおこなう、という経済対策と困窮者対策とを混同したような考えは困ったものだ。少数者をどの様にふるい分けるかについて、問題が生じているのだ。一定の線を引くとその線は不連続になるので、時には対象でない人が給付を受けたり、対象の人が給付を受けとれなくなったりする。その区別を迅速に行うのが、デジタル化の推進だ。現在の役割を担っているのが、マイナンバー(社会保障給付番号制度)である。どの国も行っている給付のデジタル化に対して多くの政党は積極的ではない。
選挙では、これら経済対策以外についても、もろもろのことが問題となるべきであるが、今回の総選挙では問題が単に先送りされたに過ぎないのだ。
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