伝統的社会では、その構成員それぞれに一定の役割が振り分けられていた。夫の役割、妻の役割、小児の役割、高齢者の役割、また、武士の役割、百姓の役割などである。社会が変わると、役割も変化する。例えば、狩猟採集社会では、男女の労働には一定の区別はあるが、小集団のため、共同で行う作業も多い。しかし、農耕社会に入り、集団が大きくなると階級差が生まれ、職業による役割の分担、そして、男女の労働にも変化が生じる。
社会での個々の役割がさらに大きく変化したのは、伝統的社会から、人権が重視される近代社会に移ってからである。個人の人権が尊重されるとともに、個人の社会での役割は変化する。伝統社会とは異なり、社会が個人の役割を決めるのでなく、個人が各々の役割を、「自由に自主的」に決める事が出来るという考えだ。子供は親から与えられる役割に甘んじる必要は無くなり、若者は若者としての役割を拒否し大人に反抗するし、女性は今までの役割を無視し始め、高齢者も日陰の存在から抜け出そうとしたのだ。特に第二次世界大戦後の世界の流れは、個人が今までの伝統的な役割を放棄する傾向を強めていった。
社会的役割分担が崩壊し、個人が自由に活動することを自覚し、社会からも自由な役割が容認されると、社会は流動性を増し活発になる。例えば、世界で注目される台湾のデジタル担当大臣オードリー・タン氏は、小中学校では転校を繰り返し中学は中退した。しかし、19歳のときに、シリコンバレーでソフトウェア会社を起業した。自身がトランスジェンダーであると言明し、ブログ上において「私の脳は私が女性であると認識しているのに、社会的にはそうでないことが要求されるので、私は長年に渡って現実世界を遮断し、ネット上で生活をしてきました。」と述べている。
しかし、オードリー・タン氏と違って、今までの社会的役割は多くの人に染み付いているので、役割の変更に伴う痛みは、変更する側、変更を受け入れる側、双方に生じる。男女の役割分担の変更は、セクハラ問題を引き起こす。上下の役割分担の変更はパワハラ問題を引き起こす。個人の人権が尊重される時代において、役割の変化が乏しい社会は、世界の中で存在することが難しいだろう。しかし、日本では、依然として男性は男らしさを社会から求められ、女性は女らしさを求められる。家庭でも妻の役割と夫の役割は、心理的前提として根強く存在する。現在でも、報道を見ると、「女性の視点から・・・」作り上げた製品がよく売れた、などの報告が数多くなされている。そうであれば、世の中の大半は男性が作ったもので、女性はそのお手伝い程度の役割なのか?つまり「男性の視点から・・・」がないのはなぜだろうか。あるいは「女性ならではの役割」が求められるというが、「男性ならではの役割」とはなんだろう。
成人式は「若者らしさ」が求められる。成人式で「死」について語ることや、政治について批判することは控えられる。18歳からの選挙権が与えられても、高校で政治が議論されることは少ない。選挙権が与えられると、政党の政策に対する批判ではなく、なんと投票の方法を練習するなどの笑えない場面が、さも真面目に放送されている。高校生の果たすべき社会的役割は、18歳になっても社会の仕組みを理解することであり、自分自身の考えを表明することではないようだ。
学生紛争が盛んな時代は、若者が一時的に社会的役割を放棄した。しかし、その若者たちも多くは、社会に絡め取られ、従順に役割をこなしている。最近では自由な社会とは思えないような、硬直した役割を演じている人が多くなった。役割を逸脱すると批判を受けることが多くなったからかもしれない。なぜ、小学生は全員ランドセルを背負っているのか?高校球児の大部分はなぜ丸刈りなのか?制服がある学校が多いのは?卒業式に出席する女子はなぜ同じような格好をしているのか?
役割を放棄する人に対する批判は強い。しかし、自由とは、社会が個人に対して制約した役割に従わなくてもよいということだ。役割期待から抜け出すとは、現実の人間関係から、何をすべきかを考え、今までの慣習に囚われないで、新しい役割を作り出すことなのである。
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