「自己」はなぜ生まれるのだろう。人間は脳だけで生きることは出来ない。人間の意識が出来るのは、身体感覚が大きな役割を果たしている。身体感覚が「自己」を生み出しているとも言えるのだ。培養器の中に脳を入れて、血液を送り活動させたとしても(誰も実験していないが)、身体が無いときには、脳は「自己」を感じないだろうと思われる。身体感覚(身体からの刺激)から自己を感じることと同じように、人間は周囲の環境から身体に送られる刺激による身体反応を通して「自己」を確認している。周囲の環境との接触は、「自己」を維持し、発展させることに大きな貢献をする。
人間が狩猟採集生活を送っていた時代では、余暇は非常に少なく、現実生活をどの様に過ごすかについて考えることがすべてだった。自分の意識内部(生きがいや生き方を探ること)よりも、自分の周囲の環境と、どうか関わるかが問題だったのだ。自分の考えが間違っているどうかは、自分の周囲環境との関わりですぐに判明し、その良否を判断することが出来たのだ。考えが間違っていれば死ぬかもしれない。例えば、今日は天気が良いと思って、遠くに狩りに出かけたものの、帰れなくなって野獣に襲われ命を落とすこともある。
生活が予期し得ない事故や災害によってうまくいかないことも多かった。その場合、自分の環境世界との付き合い方を変えることも考えるが、もっと大きな存在が、自分たちの生活を左右しているのではないかとの妄想(神のような存在を考えること)も一部に広がった。これはアニミズム的な自然と人間との関係で出来上がる妄想である。結果的に宗教が作られた。
農耕生活が拡大し、生産が増えるに従って、人間の集団は拡大した。そして自然に対して自分の生存を賭けることは少なくなったが、その代わり、集団の内部での生き残りを考えることが多くなった。自然ではなく、他の人間から指示を受け、支配されることが多くなったのだ。人間はもはや自然とのつながりよりも、人間同士の関係を重視し、他者からの指示や手助けによって生活を送るようになる。人間関係が重視される世界では、自分の行動の結果を見る際に、自然を通して直接判断する機会は少なくなり、人々から発せられる情報や、伝聞の世界が幅を利かせるようになる。
現代では、現実の環境世界を軽視するとともに、他者から与えられた注意書きを重視して、自分の行動をそれに合わせる傾向が強くなっている。それに加えて、科学的知見を称するものがそれに加わる。結果的に、マスメディアによって流される「一般的」な注意が横行する。究極はAIを使って、人間の身体感覚よりも、遥かに「優れている」方法が作られると言われる。
しかし、人間は身体から発せられるサインを感じることが出来る。狩猟採集時代は、この様な身体からのサインに敏感だったし、それが生き残るための重要な要素でもあった。他者からの注意書きやAIから発せられる指示に従うと、人間は自分自身の情動(外部からの刺激や身体の求めに応じた欲求)からのサインに鈍感になるだろう。それは、人間が生物としての能力を低下させることになるのだ。
自分自身の感覚を信じて行動することは、一般常識と称するものからの働きかけに対して抵抗する大きな原動力となる。しかし、自分自身の感覚を持つには、自分自身が自立して考える習慣を持つ必要がある。それはおそらく幼少期からの習慣によるところが大きい。すべての事を国あるいは学校が判断し、子供にはそれを教えるだけの教育は、あらぬ方向に考えを進めることを禁止し、自分では何も考えることが出来ない、他人に考えを委ねる子供を作ることになる。そして、成人後に周囲からの働きかけや、周囲への反応を過度に重視し、自分本来の欲求を忘れることにもつながる。
身体が感じる刺激を重視し、かつ自分がその刺激に対してどう感じたかを観察することを「如実知見」と呼ぶ。「如実知見」の考え方を採用すると、暑さ寒さを素直に感じて、それに対しての自分自身の反応も微細に観察しなければならない。このような観察を他者からの注釈よりも先行させることが大切だ。従って、「高齢者は暑さ寒さを感じにくいので周囲の人が調節してください」などのコメントは、高齢者の自立心あるいは自尊心を引き下げ、「如実知見」の考えを否定するものである。高齢者のみならず、一般人も自分の感じた感覚で行動する習慣を忘れないようにしなければならないのである。
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