14世紀にヨーロッパを襲ったペスト(法定伝染病、ペスト菌によって起こる急性伝染病で死亡率が高い。ネズミが媒介する)によって、人口の三分の一(2000万人)が死亡した。その結果、賃金は2倍になり、需要の落ち込みで物価は反対に低下した。結果的に格差は大幅に解消された(ウォルター・シャイデル暴力と不平等の人類史)。
労働人口が低下すると、賃金は当然のことながら上昇する。生産高に占める労務費用は上昇する。ただし、この現象が起こるのは、短期間に大幅な労働力減少が起こる場合である。労働力減少が徐々に起こると代替措置が登場する。
ペストによって人口全体が低下した場合は、代替え装置が働かなかったが、現代の日本のように少しずつ生産年齢人口の低下が起こった場合は、今まで労働市場に参加していなかった女性や、高齢者を労働市場に参加させる動きが現れ、労働力の減少を補填した。その結果、賃金はさほど上昇しない。それでも労働力が不足すれば、その時初めて賃金の上昇が起こるのに、外国人労働者の導入はそれを阻止するのである。外国人労働者は日本人と異なり、供給がほぼ無限である。外国人人口比率が現在の1%台から5%に上昇すると、労働力は400万人近く供給される。そして賃金の上昇は抑えられる。
よく考えると、このシナリオは企業にとって有効なシナリオだ。労働生産性が低い企業は大企業にも存在するし、中小の零細企業にもあるが、これらの企業にとって賃上げは、利益を減少させる極めて避けるべき方策だ。つまり、外国人労働者の恩恵は労働生産性の低い企業を保存するマイナスの効果になってしまう。
現在日本に求められているのは、生産性の高い企業を育成することだ。その為には、企業は市場での競争によって強くなる必要がある。賃上げはそのためのフィルターとなる。賃上げによって利益が無くなる場合は、2つの選択肢がある。
1つは企業構造を変えて、生産性を高めること、もう1つは、雇用者から被雇用者になることである。全国的に賃上げが進めば、苦労して経営するよりも雇われたほうが楽になるのだ。この様な過程を経て企業は淘汰されると、経済は強くなる。当然ながら、職を失った人たちに対しては、緻密な援助を行わなければならない。守るべきは企業ではなく、人間なのである。
この様な考えは新自由主義的でもあるが、社会民主主義的でもある。企業は法人と呼ばれ、あたかも人と同じ様な扱いを受けているが、所詮そこには守るべきものはない。単なるシステムなのである。企業が存続することによってそこに働く労働者が守られている構造は、労働力が過剰な場合は通用しただろう。しかし、現代のように労働力自体が減少している場合は、企業によって労働者を守る必要はなく、企業は選別されるべきである。
日本での政策の特徴は生産性の低い企業の温存にあり、日本の問題点もそこにある。デジタル革命によって生産性を高めようとする場合、あるいは、構造を変えることによって少ない労力で生産できるようにしようとする場合は、それを行わない企業や団体を温存するかどうかが、日本全体の生産性の決め手となる。その結果労働者は転職を容易にできるようになり、もっと生産性の高い企業への就職が可能になる。今までの日本政府は、その支持基盤である中小事業者に対して、あまりにも優遇をしすぎている。日本は中小企業によって支えられているというが、それは生産性の高い中小企業によってであり、すべての中小企業ではない(伝統産業を継承する企業は除く)。労働力の減少が起こっている現在こそが、日本にとって、産業構造を改革する絶好のチャンスなのである。
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