規制緩和は、現在のところ、「規制改革」推進会議の名前で行われている。規制改革であれば、規制を強める改革、規制を緩和する改革、双方が含まれるが、実質的に、「規制改革」推進会議は、規制緩和を主として目指すものと考えられているので、規制緩和の限界について述べてみる。
第二次大戦後、多くの国は、経験した戦争の悲惨さから「福祉国家」建設に邁進した。第二次大戦後暫くして到来した空前の好景気の期間(約30年間)と並行して行われた「福祉国家」の成功後、1970年代後半になり、いろいろの意味で、社会が停滞し、経済が低迷した。この様な時代に、「新自由主義」の考えに基づき、イギリスで、サッチャー政権が登場し、「規制緩和」が推進され、経済を活性化させたのだ。ついで、アメリカでは、レーガン政権が同様の考え方で誕生した。当時の経済的停滞を解決するために、「変化」が必要だったのだ。
「変化」は常に人間社会では必要である。それは、ヘーゲル流の「進歩」に基づくものでなく、「無常」(万物は常に一定ではない)の法則に基づくものである。定常化された社会は、本来変化すべきものが強引に「固定化」されるために、いろいろの不都合を生じる。これらの不都合に対して、それまでとは別のルールが必要となる。万物が一定でないとすれば、「変化」は常に必要である。この法則に反して、人間は「固定化」された関係を望むので、一定期間「固定化」が行われると、「変化」はその分大きくならざるを得ない。
1970年代に起こった新自由主義的な考えは、それまでの30年間の定常状態から「変化」を促す効果があった。「規制緩和」に代表される考えは、それ以前の「変化」と同じように、「変化」しない社会を急に変えることになった。
しかし、資本主義がその根拠としている「市場」は、自然に発生するものではなく、人間が作り上げたものである。作り上げることは、何らかのルールを設定することだ。市場のルールは、社会情勢によって、変えていく必要がある。これは、市場の規制を取り外すことでなく、時には規制を廃止し、時には規制を強くする変化であるべきだ。
トマスホッブスの考えた人間社会は、「万人の万人に対する絶え間ない闘争」である。この様な社会では、適者生存が行われる。つまり、能力の高い人間が、能力の低い人間を支配するのだ。人間社会は、この様な「万人の万人に対する絶え間ない闘争」を是としているわけではない。現生人類が存在してこの20万年の間に、「人権」思想、つまり、自分以外の存在を認め、尊重する考えが人類には備わってきた。これは人間の脳が大きくなるにしたがって必然的に作られたものだ。他者を尊重し、その存在を認めることは、「適者生存」以上に、資本市場でのルールを必要とし、また、資本主義社会で適応性が低い集団に対しては、社会保障制度を必要とした。
特に、この250年間、科学技術が発達し、それに伴った経済成長がもたらされたのは、人類が他の動物と異なり、自己の存在を強く意識すると共に他者の存在をも意識して、その存在を尊重するようになったためだ。客観性を基にする科学は、その要請に応えたのである。その意味でも、発達する科学技術は、自己の利益のみでなく、他者の尊重のため、使われなければならない。
現在の状態は、規制が強い時代⇒規制緩和が流行した時代⇒両者の調整を行う時代に進んでいる。従って、「規制緩和」を行うのではなく、「規制改善」を行う時代に達している。すでに過去のものとなった「規制緩和」を、未だに考えの中心に置くことは、社会の状態が常に変化していることを前提とすべき政策にはそぐわない。
医療保険や介護保険は、社会保障政策の大きな成果である。この様な社会保障政策が必要ないと考える人は現代では皆無だろう。従って、これらの社会政策を今後どのように展開していくかどうかは、「規制緩和」ではなく、規制の在り方を見直す必要(時には緩和、時には規制強化)がある。
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