高齢者の交通事故についての報道を頻回に耳にする。目立つのは、高齢者の運転する車がコンビニやスーパーに突っ込んだ事故(アクセルとブレーキを踏み間違えたこと)、高速道路を逆走しての事故、運転中に意識が無くなって衝突した事故などが報道されている。
注意すべきは、報道と現実の乖離である。昔から言われているが、「犬が人間を噛んでも話題にはならないが、人間が犬を噛むとニュースになる」傾向だ。希少性と話題性がニュースの要素である。多くの人が漠然と問題であると感じている集団が、何らかの事件を起こすと、ニュースになる。話題性が高いからだ。例えば、外国人に対する関心や警戒心が高い時に、外国人の犯罪は大きなニュースになるし、精神障害者に対する警戒心が高い時に、精神障害者の犯罪が発生すると大きなニュースになる。この様な場合、成熟した社会では冷静に理性的な選択を行い、感情的ニュースに対して反論を行わなければならない。従って、高齢者の交通事故についても、統計上高齢者の事故は一体どうなっているのかについて見ていく必要があるのだ。以下、e-Statに掲載されている交通事故統計(警察庁担当)から見ていきたい。
まず、事故全体のイメージを掴んでいこう。
このグラフは、1948年から2018年までの、交通事故発生件数(左目盛り青色グラフ)と死亡者数(右目盛り赤色グラフ)とを表したものである。発生件数(左目盛り青色グラフ)は1970年の72万件をピークとして、一旦は低下したが、2000年から2004年にかけ再び上昇し95万件まで増え、その後低下している。一方で死亡者数(右目盛り赤色グラフ)が件数と比例しているわけではなく、1970年の17000人足らずをピークとして、途中再び増加する時期もあるが、概ね低下傾向にあり、2018年では3500人余りとピークの21%にまで減少している。
次のグラフは、2018年の年齢別の事故割合(免許取得者10万人あたり)である。果たして高齢者の事故件数はどの程度なのだろう。
これは、常識的感覚と一致していると考えられる。免許取り立ての初心者は事故割合が多く、50歳代で最少となり、高齢者になるとやや事故割合は上昇する。ただし、高齢層で事故割合の高い85歳以上でも、最も低い50歳代の1.56倍、60歳代の1.51倍である。これに対して、15歳~19歳は、最も低い50歳代3.58倍、20歳~24歳は同じく2.12倍である。
次は、2008年からこの11年間に、年齢別の事故件数(免許取得者10万人あたり)を表したものである。代表的な年齢(16歳~19歳、50歳から55歳、75歳~79歳、85歳以上)を抽出している。
最も件数の多い16歳~19歳の事故が低下しているが、75歳~79歳と85歳以上の事故件数も、最も安定していると思われる50歳~54歳の事故数の減少と同等あるいはそれ以上の減少が見られる。
近年交通事故の減少、とりわけ死亡者数の減少が著しいのは、関係者の努力と国民の意識向上によるものであり、非常に好ましい現象だ。この様な状態の中、高齢者による事故が最近増加しているという報道や、高齢者のみが事故の減少から取り残されているかのような報道は、事実を歪めるものだ。グラフで示したように、すべての年齢層で交通事故は減少しているのだから、現在の努力を継続すべきである。
一方で、過剰な規制は、高齢者の生活を脅かす。特に免許の自主返納に関する「運動」は、事実証明の無いままに、あたかも高齢者の運転は絶対的に危険であることが如く行われている。これらは、まさに「エイジズム(老人差別)」である。免許を持つ権利は、どの年齢にもあり、それを中止するのは社会ではなく、個人の自由意思によるものだ。都市部の高齢者はその他の都市住民と同じように、車を使う必要のない環境に暮らしているので運転免許は必要ないかもしれない。しかし、中山間地域に暮らす住民は、車が必須の移動手段となっている。一律に免許の返納運動を起こすと、この地域に暮らす住民は、移動手段を奪われ生活に支障を来すのだ。代替えの移動手段は、いずれも自家用車に比べて大きく劣ることは間違いない。
規制が必要であるとの意見に対しての妥協点は、次のようになるだろう。①都市部の区域を限定しての運転規制、②あるいは一定以上の危険除去性能を持つ車に限って運転を認めるなどの対策である。
現在のように、統計的視点でなく感覚的見地から、高齢者の運転をいかにも「空気に流されて」断念させることは、甚だ不適当といえる(なお認知症の高齢者の運転をどの様に考えるかについては、別の機会に論じるつもりである)。
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