同一労働同一賃金の考え方

「働き方改革」の一環として、同一労働同一賃金の考え方が打ち出された。考えてみると労働法規上当然のことである。だが日本においては、そうはなっていない。端的な例として、介護職員の間でも、いわゆる「正規雇用」の職員と、「非正規雇用」の職員間では時給に大きな差異がある。日本での給与比較は、従来「月給」の比較が一般的だった。その為に、働き方が違う労働者間では、給与の比較が出来にくい状態だった。例えば、月給20万円のフルタイム労働の職員と、時給1000円のパートタイム労働の職員とでは、給与の比較が難しい。つまり、同一労働同一賃金を叫んでも、給与をどれ位変えればよいのかも分からない。フルタイム職員は月給20万円に加えて、賞与もあるかもしれない。そうするとなおさら比較が困難となる。

 

 

一般に言われている同一労働同一賃金では、処遇を同じにすることが主にされている。その方法はパートタイム職員に賞与を出すことや、各種の手当てなどを充分に補うことであろうか。いや、それは違うと思う。その様な小手先の改善は、経営側の都合によるものである。そうではなく、基本の給与がお互いに比較できないと、改善自体が難しいのだ。月給20万円の人が、賞与を2か月分もらうとすれば、年俸は20万円×14ヶ月=280万円となる。日本の平均的な年間労働時間は2000時間なので、この人は時間給が1400円になる(各種手当てを加えるともっと高くなるが、時間給職員も同様に手当てはあるので、この際無視する)。この時間給与は、パートタイム職員の平均的な時間給与よりも高いことが日本の問題である(賞与とかその他の処遇はあまり問題ではない)。

 

 

では、同一労働同一賃金は、どの様に考えれば良いのか? 同じ能力であり、同じ時間に働き、同じ地域なら、「時間給換算」で同じ給与になるべきということだ。上記の例で言えば、同じ能力で(同じ介護福祉士であり、勤続年数が同じようであるなど)、同じ時間帯で、同じ職場で働いている場合、同じ時間給であるべき、と言いたい。能力が違えば、給与は異なるが、パートタイム職員とフルタイム職員との違いの最も大きなものは、働く時間帯だろう。多くの人が働きやすい時間、例えば、9時から17時までと、多くの人が働くことを嫌がる22時から翌朝6時の時間帯では、時間給が異なることは当然だ。従って、能力と勤務場所が一緒であれば、1日の時間帯ごとに給与が異なると考えられる。それをグラフにしたものは下記に示すものである。

 

 

このグラフは、縦軸を時間給(単位円)、横軸を0時から24時までの時間帯を表している。グラフ上、10時から17時までを時間給1100円、22時から翌朝6時までを1800円として、その中間を1100円~1800円の間で区分している。この区分の単純平均の時給は、1496円だ。しかし、通常施設での勤務は、昼間が多く、夜間勤務は全体の半分程度だろう。その割合に応じての平均賃金を算出し、それが、1400円となれば、前述のフルタイム勤務者の時間当たりの賃金の基礎となる。

日本での、いわゆる「正規雇用」労働者の賃金が、「非正規雇用」労働者の賃金の時間給比較で2倍程度の差がついている理由は、「正規雇用」労働者は、勤務時間、勤務形態、勤務場所を使用者側が「自由」に決めることが出来るという理由によると思われる。その結果、新卒一括採用、あるいは、単身赴任、その他無理な幹部職への登用などの弊害が起こっていると考えられる。

同一労働同一賃金の法則を、日本の労働慣行の改善に役立てるような方策は、まず、給与を「時間給」のレベルで統一し、それを相互に比較することから始めるべきである。そうしないと、不必要な処遇の細かい問題に議論が流れてしまい、肝心な点が忘れられる恐れがあるのだ。

公益財団法人橋本財団 理事長、医学博士橋本 俊明
1973年岡山大学医学部卒業。公益財団法人橋本財団 理事長。社会福祉法人敬友会 理事長。特定医療法人自由会 理事長。専門は、高齢者の住まい、高齢者ケア、老年医療問題など。その他、独自の視点で幅広く社会問題を探る。
1973年岡山大学医学部卒業。公益財団法人橋本財団 理事長。社会福祉法人敬友会 理事長。特定医療法人自由会 理事長。専門は、高齢者の住まい、高齢者ケア、老年医療問題など。その他、独自の視点で幅広く社会問題を探る。

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