『毎月勤労統計調査』のデータ不正問題が表面化して以来、賃金のデータに対する信頼性が揺らいでいる。もともと賃金の比較は、フルタイム社員とパートタイム社員が混在し、さらには、月ごとの給与と、年俸制が混在するので、実態が分かりにくい。この問題を明らかにするためには、諸外国で行われているように「時間給」に換算して給与を比較することが必要ではないだろうか。東洋経済オンライン(2018年11月29日)に、「時給が高い会社」ランキングトップ166社が掲載されている。これらは、各社の平均給与と平均労働時間数から割り出したものだ。労働時間数が、実際の労働時間を正確に反映しているかどうかは、なお疑問が残るが、少なくとも、給与を時間給与で比較しているのは秀逸である。これによると時間給が最も高いのは、三菱商事で7968円になる。160位の四国電力は4020円だ。上場している大企業間でもこの様な大きな差があることは驚きだ。しかし、これは、現在のパート給与1000円程度と比べるとかなり高い。
この様な比較を行うと、医師や弁護士の時間当たりの給与も比較することが出来る。労働者は、自分の時間給を認識することが大切だ。それには、自分自身の年俸と、労働時間の把握が必要となる。賞与が変動する場合も、年俸最低額と標準額が認識できれば、自分自身の労働時間を計算すると(大まかには、年間の労働日数と1日当たりの平均労働時間を概算すると分かるはず。ちなみに日本企業の大まかな労働時間は約2000時間)、自分自身の時間給与が導き出される。賞与は純粋な成果給ではなく、一部の企業(例えば証券業界)を除くと、通常の給与の一部だろう。そうであれば、時間給与を提示することは十分可能である。
給与の比較を行う際に、この様な時間給与での比較が一般的になることが望ましい。そうすれば、政府が進める同一労働同一賃金の原則が明確になる。賃金の時間当たりの給与比較で重要な点は、勤務地が自由に選べるかどうか(正規社員は選べないことを前提としている場合が多い。その結果単身赴任者が多くなる。)、働く時間に労働者の意向が反映できるか(夜間勤務の義務を決めている職場も多い)、職種が会社の意向にすべて沿わないといけないのかどうか、などである。フルタイム勤務者(通常正規社員と呼ばれる)と、パートタイム勤務者(非正規社員と呼ばれる)の差異は、勤務時間、場所、内容を決めたうえで働くことが出来るものを非正規社員、それらが決まっていない状態で、会社の意向によって左右されるのが正規社員と考えられている。この様な不自由さがどの程度時間給与に反映されるかによって、賃金の比較が可能となるのである。
各種の賃金統計は、賞与を含む、賞与は除く、あるいは正規社員と非正規社員の違いなど、複雑なのでそう簡単に比較することは出来ない。また、例年話題になる春闘の賃上げ基準や、賃金統計での時間給与と毎月の給与、あるいは年俸の差異が、日常的話題に成りにくいのである。統計をすべて「時間当たりの給与」とすれば、比較が容易に可能となる。この様な「時間当たりの給与」での比較を行わないのは、比較することを嫌っているとしか思えない。
上記の三菱商事時給が7968円に対して、コンビニ店員の時給が1000円の比較は、どの様な感想を持つのだろうか。また、160位の四国電力の時給が4020円と同じく介護職員の900円の時給との比較はどの様な認識を引き起こすのだろうか。さらに、フルタイム介護職員の一般的な年俸が300万円とすれば、時給は2000労働時間として、時給は1500円となる。この様に時給の比較は、三菱商事、四国電力と介護職員との比較も容易にさせるのだ。
時給での表記が一般的になると、同一賃金同一労働の推進にも役立つ。一般的な認識として、同じような労働をしている際に、フルタイム職員の「時間当たりの給与」が1500円に対して自分の給与が900円ということが納得できるかどうかなのである。フルタイム職員とパートタイム職員との時間当たりの給与を比較する場合、フルタイム職員の勤務時(日中の勤務か夜間勤務か)に沿った、時間給与を決めていくことが必要だ。例えば、昼間12時付近の給与は、時間当たり900円だが、真夜中の時間当たりの給与は1600円などの変化である。
「時間あたりの給与」表記は、時間を売り物にしている職業での価格算定根拠ともなる。弁護士や会計士は、労働時間によって価格を決める場合が多い。仮に弁護士の時給が5000円であれば、その前後の手間を考えると、それ以上の相談料金が妥当であると思われる。会計士も同様であり、「時間当たりの給与」が明確であれば、100時間を要する仕事は、「時間当たりの給与」×100を根拠にできるのだ。「時間当たりの給与」の普及は、単に表示の問題だけでなく、現在社会に現れている色々な疑問を解消するためにも、非常に有効な方法である。
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