発達障害の報道が数多くなされ、その理解も進んでいる。有名人が自身の発達障害を告白する場合もある。これらを聞くと、発達障害とは能力の一部が障害されているものの、全般的には人並み(あるいはそれ以上)に能力を持つことが前提であるように思われるだろう。
しかし、発達障害者支援法(平成17年度施行)での発達障害の定義は、ICD(International Classification of Diseases)の分類に基づき、「自閉症、アスペルガー症候群、その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能障害であり、その症状が通常低年齢で発現するもの」となっている。
また、アメリカのDSM-5(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)による発達障害の分類では、神経発達障害として、これらに加え、知的障害、運動障害を含んでいる。従って発達障害は、能力の一部が障害を受ける場合もあるが、能力全般が障害を受ける場合もあるのだ。
これらの障害(疾患)に対して、治療が可能かと聴かれると、甚だ疑問である。今のところ障害によって発生する「症状」を取り除くような薬剤はあるが、障害(疾患)を治療するような物理的方法(薬剤など)は無い。むしろ、その障害に対して、周囲の環境が許容性を増し、社会がその人たちを包み込む(統合する)努力をすることによって、発達障害を抱えていても、健常者と同じような社会生活を送ることが出来る方法を取っている。
一方で、障害(疾患)と認定された場合、健常者とは異なる環境を用意し、そこで発達の程度に合わせて教育を行い、生活することが適切であるとの考えもある。その考えに沿って、支援学級や支援学校が作られているのだ。これらを支持する人は、発達障害を持っている子供を普通の学級に入れると授業についていけない。さらに、いじめを受けたりすることもあり、発達障害の子供のみの集団で授業を受けさせた方が良いと考えている。また、健常者側の立場からは、発達障害の子供は、その他の健常な子供の授業を妨げ、学習の進行を妨害する可能性があるため、発達障害の子供に対して隔離された支援学級や支援学校での学習を希望する。これらの考えは、社会が障害を持つ人たちに対して、隔離された環境での生活を送り、健常者と一緒に生活すべきではないことを幼少期から意味づけているのだ。
企業での障害者雇用と支援学級や支援学校制度とは、全く異なる方向に向いている。企業での障害者雇用は、従来の障害者に対する作業所とは異なり、また、現在の就労支援事業所からさらに発展させ、障害を持つ人の社会的統合を目指している。つまり、障害者が特別な場所(家庭に閉じこもることや施設に入ること)で暮らすのではなく、一般社会で暮らすことを目指している。しかし、この様な障害者雇用が不十分である現状は、障害者に接していない人たちが障害者の扱いに戸惑っていることを示しているに他ならない。幼少期から障害者とは全く別の環境で育っている人たちに、急に障害者を理解しなさいと言ってもそれは無理である。企業の障害者雇用の要点は、一般の健常者と障害者とが一緒に仕事を行うことを目指しているが、それは、障害者の障害の程度や種類に従って、仕事の内容を柔軟に変える必要があるので、大人になってから障害者を改めて理解したうえで、仕事の配分を行わなければならない。この過程は、作業のタスク分析(作業を分割したうえで、どの過程が障害者に合っているかどうかを判定すること)と、障害者の能力との組み合わせから行われるが、日本の現状では、この過程は甚だ難しい。
ヨーロッパで普及した「ノーマライゼーション」運動は、健常者と障害者との社会的統合を目標としている。その前提として、健常者と障害者が幼少期から同じ環境で育つことを支援し、促進しようとしているのだ。その為には、3歳児から統合的な教育環境を整える必要がある。その目的は、障害者に対する対策というより、健常者の認識を健全に育成することを重要視している。当然、教員数も通常の2倍、3倍は必要だ。障害児の数や程度によってきめ細かい教師の配置が求められる。この様な「ノーマライゼーション」の考え方に基づいた教育を幼少時から行わない限り、障害者の社会参加は単なる掛け声だけに終わるだろう。
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