日本と欧米との間で就労者の能力評価を行った場合、日本の一般労働者の質の高さと同時に、管理層のマネジメント能力の薄さが際立つ。例えば、日本の警察官、消防士、公務員(時々汚職が話題になるが、その数は極めて少ない)の質の高さと勤勉さは特徴的である。さらに一般企業においても少し前までは、残業をいとわず自分の責任範囲になる仕事を「自主的」に行っていた。介護分野でもその傾向は同様であり、介護職員の質の高さは諸外国と比べ際立っている(後述する介護職員の質の高さと介護の質の高さは異なることに注意)。
一般労働者の質の高さは、日本が先進工業国になる最も重要な要素だった。下図は、日本の分断;吉川 徹著から引用しているが、一般労働者の知的水準の高さは諸外国に比べ驚くべき水準であり、OECD(先進国)の国々の中でも際立っている。図に示されているように、典型的な基礎学力として、読解力と数的思考力を取り出し、15歳から65歳の労働者で、日本において、そのどちらも低い労働者(つまり、読み書きそろばんが十分に出来ない労働者)は、OECDの平均(約23%)よりもはるかに少ない。そしてオランダ、スウェーデンなど(10%~15%)よりもさらに低く、わずか全体の8.5%に過ぎない。これは、労働者の一般学力(読み書き、そろばんの能力)の高さを表し、その結果として労働の質の高さを示している。海外の一般労働者の質の低さと対照的である。
(日本の分断;吉川 徹著から引用)
この様に、日本においては一般労働者の質の高さが際立っているが、それは、管理層あるいは管理方法の質の高さを必ずしも反映しているとは言えない。日本の経済成長は今まで、一般労働者の質の高さに依存していた実態がある。製造現場においての現場力の強さを誇る報道(物づくりに対する賞賛)はその典型であるが、産業がAI化することと歩調を合わせ、現場力よりも遂行理念と、企画力や管理能力などのマネジメントが重要になる。
平社員(技術系社員も同様)と管理職ではそもそも仕事の質が異なるし、違った能力が求められる。優秀な平社員が管理職に必ずしも適しているとは言えないのだ。管理層にとっての大切な資質は、読み書きそろばんの能力に加えて、マネジメント能力だ。マネジメント能力は一般の人が自然に身に付くものではなく、学習して獲得するものである。日本においては、管理層が身に付けるマネジメント能力のうちで、平等性、真面目さ、熱意などは必要とされる。しかし実際のマネジメントのやりかた、つまり、経営においてどの様なことを目標としているのか、職員を平等に扱うには何を重視したらよいのか、自分の管理している集団に対して、どの様な管理方法が適切なのか、命令の伝達はどの様に行えばよいのか、通常の情報は誰とどの様に共有すべきなのか、さらに言えば最も大切な「対話」能力などについての知識が不足している。現状では管理職としての適性を見ることなく、また、管理職に不可欠なマネジメント教育を行わず管理職に登用する場合が多い。
一般社員の現場能力とは別であるマネジメント教育は、少なくとも1~3年は必要であろう。その期間に、管理職の適性を見ることをしなければ、社員にとっても組織にとっても不都合なことが生じるだろう。そして、給与体系は、現場に徹する人、管理者として活動する人を選別し、それぞれに合った給与体系と仕事を提供すべきだと思う。
管理職として最も必要な事は、「対話」能力だ。他のマネジメント能力は研修によって高めることが出来るが、最も重要な「対話」能力は、幼少時からの環境や訓練によって作られるので、1~2年の研修で育成することは難しい。従って、管理職の対話能力は、管理職に登用するための必要条件になるか、あるいは、管理職の研修によって身に付けることが出来る能力かを見極める必要がある。言わなくても理解してくれるだろう、ではなく、言わなければ理解できないだろうと考え、積極的に対話を行う必要がある。その場合、対話とは自分の考えと相手の考えを摺り合わせ、選択し、交渉し、妥協することである。自分の考え無しに、対話は成立しないことも認識しなければならない。
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